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24. ある編集者のユートピア 小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校 世田谷美術館

6月1日から美術館などが再開され、楽しみにしていた世田谷文学館での安西水丸展にようやく行くことができた。水丸さんが亡くなってからというもの、開催される展覧会には行けるだけ行っている。ギャラリーG8での展示、ちひろ美術館での「村上春樹とイラストレーター」展、実家が愛知県名古屋市のため帰省とともに寄ることができた清須市はるひ美術館での展示。京都での展示は行くことができなかったけれど、世田谷文学館での展示は今までの濃縮版という内容で、既視感がなくもないが、何度みても良いものは良い。水丸さんの展示はこれで終わらずに、定期的に続けばいいと思う。
思えば世田谷文学館にはずいぶんとお世話になっていて、初めて訪れたのは2007年の「植草甚一 マイ・フェイヴァリット・シングス」で、その後覚えている限りだと、2009年の「堀内誠一 旅と絵本とデザインと」、2011年の「和田誠展 書物と映画」、2018年「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」、2019年「原田治展 かわいいの発見」などに行っている。それらの展示は自分の趣味や関心にぴったりと重なっていて、展示内容をみることで、より広く詳しく知りたくなるという良い影響を受けている。それは主に、展示されていた見たことのなかった本や雑誌を知り、いつか手に取りたいと思うことが多いのだけれど。
そうやって展覧会にその時に行けたこと自体は良いことだけれど、過去のあの展覧会に色々と知った今の状態で行ければと思うことはよくある。今の視点で同じ展示を見直すことができれば、その時とは違った捉え方、受け取り方ができるように感じる。また、その時はあまり興味がなかった分野の展覧会や、行きたかったけれど行けなかったりスルーしてしまった展覧会を思い浮かべて悔やむことも多い。世田谷文学館で言えば、平出隆から繋がった澁澤龍彦の「ドラコニアの地平」展に行きたかったなと思ったり、2015年の「岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ」と「植草甚一 スクラップ・ブック」を何故かスルーしてしまったり、また、当時から好きだったのにも関わらず会期中に知ることができなかった2015年の町田市民文学館「常盤新平 遠いアメリカ展」へ行けなかったことを未だに後悔したりしている。
それでも、思い付くままに挙げるだけでも、この約十五年間でこれだけの本にまつわる展覧会が開かれ、他にも数えきれないほどの美術館・博物館・ギャラリーなどでの展示があり、その全てに電車なりバスなりで行くことができる東京の街というのは、やはりすごいものだと思う。開催中の全ての展示を知り、行きたいものに行くことができるようにしたいというのは、贅沢な悩みなのかも知れない。写真の、世田谷美術館での「ある編集者のユートピア 小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校」も、知る人ぞ知ると思っていた小野二郎をメインに据えた展覧会が、世田谷美術館というメジャーな美術館で成り立つということに本当に驚いた。
とはいえ、挙げたような安西水丸、植草甚一、堀内誠一、和田誠、原田治、そんな大好きな人たちの展示は、この後十年二十年先には果たして開催されるのだろうか。東京という街のなかで育んだ自分の知識や経験を、いつかどこかで還元できればと考えるのは傲慢かも知れないけれど、その一部としてこうやって色々と思い出しながら書き綴っている。

#本  #古本 #小野二郎 #安西水丸 #植草甚一 #堀内誠一 #和田誠 #原田治

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