見出し画像

研究日記6, 7月の報告書

ずいぶん書くのが遅くなった。6月はほとんど何も書けなかった。沈んでいたと思う。6月の中旬に東大の退職を決めて、7月の初旬からヨーロッパに2週間ほど行き、7月末に退職した。

退職のことについてどのように書けばよいのかいささか迷った。

書いて吐き出してしまいたい気持ちと、隠すべき経歴としてなかったことにした方が賢いのではないかという気持ちとの間でゆれた。ただ自分のメモとして言葉を書いてみても何か胸のつかえがとれなかった。抱えているものというのはそういうものだろうか。自分の情けなさを隠すことでより情けなくなるようにも思えたし、赤裸々に書くことにメリットは特にないのだろうということも頭ではよくわかる。ただ自分なりに考えた結論を変な形で隠したままにしておくと、どうも自分が後ろめたいことをした気持ちにもなる。

そういうこともあったので、経緯についてはこのマガジンの中のメモに留めておくことにする。


6月のこと

6月は前々から決まっていた予定の中で、お能の謡をはじめて習いに行ったり(大きな声を出すが難しくて爽快感のようなものはなかった。自分の声で調子を見失う感じがしたのと、ゆっくり読むことによって日本語は一度は租借されるが、謡うときには意味は喪失する感じがした)、いくつかライブや能を見に行ったり、長野に藤森照信さんの建築を見に行ったりした。それらは楽しかったけれど、ほかにほとんど記憶のようなものがない。正直に言えば、7月の頭に6月のnoteを書こうとしたときにも、覚えていることがほとんどなくて困ったのだった。

7月初旬のパリコレへの参加

7月の初旬に人生で初めてパリコレに招待してもらい体験した。そのときのことや記録については、↓のnoteに文章としてまとめたのでぜひ読んでみていただきたい。ヨーロッパに行き色んな経験ができたことで、自分の視点がとても広がった。

パリ、ベルギー、ロンドン

7月初旬には、パリに行った流れで、ベルギー(ブリュッセルとアントワープ)とロンドンにも行った。ロンドンの設計事務所や大学を回った。

UALというロンドンの芸大にいったのだが、これがなかなかすごかった。

Creative computing instituteという機構のディレクターのValiさんに会い案内してもらったのだが、大きなビルの6階に入っていて、十分に広いのだが、「狭いでしょ」と言われて戸惑ったりした。「今度ここから歩いて5分のところのビルに新しい拠点ができるの、あとそのあとには歩いて10分のところにもできるの」と言われて勢いにびっくりした。学生も毎年数倍になるようなレベルで増えていっているとのことだった。

学生の集うラウンジ。とても綺麗。
こんなビルの中にある。
遊ばせてもらったロボ。これは開発したセンサーを載せてみたりソフトウェアをいれてみたりするための開発用プラットフォームとなるロボであるとのことだった。

デモでは3Dプリンティングやロボットをみせてもらったが、そのような多様なバックグランドの人たちがすでに集結してきていて、学生は工房を自由に使うことができ、教えを乞うこともできる。とても素敵な環境だなと思った。

その後互いのプロジェクトをプレゼンしあい、大学内のカフェテリアでお昼ご飯を食べながら話し込んで、気づけば3時間くらいディスカッションし続けていた。とても楽しい時間だったし、ヨーロッパいいなと思った。

海外で仕事をしてみたいということもずっと憧れとしてあったので海外で設計の修行をできたら最高だなと思ったりして、ロンドンの設計事務所や大学をまわる中で、状況を聞いたりジョブの可能性がないか聞いてまわってみたりした。

設計事務所についてはかなり大きなところで、僕のもっていたVR/MR×建築の職能がかなり特殊とのことで、一般には正規ルートしか採用ルートはないしリファラルもほとんどないとのことだったが、デジタル部門で仕事がないか面接に回してくれたりした。大学でもコースのディレクターが仕事の可能性をかなり検討してくれたりもした。

ただ大学でも設計事務所でも、ちょうどジョブオファーが終わったタイミングでもあったらしく、オファーを出せるポジションがないとのことで、すぐに採用とはならなかった。なかなか難しいものだなと思った。

Herwig Bretisのレクチャーの企画

7月末には、オラファー・エリアソンやトマス・サラセノの作品を担当してきたエンジニアであるHerwig Bretisさんをベルリンから迎えてのレクチャーを実施した。Herwigは知人から紹介され、僕も初対面だった。

作品のモックアップを細かく説明してくれ、興味津々の参加者。
少人数で、質問をはさみながらの密なレクチャー。
Hololensを使ったデモ。
参加者の様子。予定時間はかなりオーバーした。

退職のバタバタのなかでかなり大変だったが、とてもモチベーションの高い人たちが集まってくれて、世界的作品の詳細なディテールや検討の仕方をモックアップなど使いつつ聞きまくる豪華な会となった。とてもよかったと思う。レクチャーをしてくれたHerwigにもだが、参加者の皆様には本当に感謝。

サラセノが、自分の目で見たものしか信じられないので、パースが嫌で、敷地模型を製作しつつ、その背後に巨大に引き延ばした風景の写真をはり、その中に模型をおいて、さらには自分を模した人形を置いてその視点から模型を覗き込むことで検討を深めるという話が個人的には面白かった。

北海道のこと

7月末には北海道に行って、大自然の中でSUPをしたりもした。冷たい川に落ちる喜びは素晴らしいなと思ったが、数時間のあいだに何度も落下し続けていると冷えてトイレの我慢が大変となった。

ま、すこしゆったりします。

ここから先は

6,111字

旧「2023年3月に博士論文を書き上げるまで」。博士論文を書き上げるまでの日々を綴っていました。今は延長戦中です。月に1回フランクな研究報…

サポートは研究費に使わせていただきます。