見出し画像

安すぎて売れない? 帯広のフリーパス「VISIT TOKACHI PASS」のプライシングを考える

公共交通マーケティング研究会 帯広場所 

2019/10/4-5、公共交通マーケティング研究会の、観光二次交通(飛行機などで来た後の地域内交通)をテーマとしたセミナーを開くため、初めて帯広に降り立った。

2日間のセミナー前後に3回空き時間がある。

(1) 1日目午前:空港 9:30 ~ 13:00 セミナー会場
(2) 2日目午前: ホテル 朝 ~ 13:00 セミナー会場 ※エクスカーション
(3) 2日目夕方: セミナー会場 16:40 ~ 空港 19:18

この3回の空き時間の移動が悩ましい。レンタカーを借りてしまってもよいのだが、今回は「バス体験ツアー」のつもりで、あくまでバスで。

お得すぎるVISIT TOKACHI PASS

画像1

そんな時に地元の北海道拓殖バスの方に教えてもらったのが、「VISIT TOKACHI PASS」という、来訪者向けのお得なフリーパスだ。これには1日パスと2日パスがある。

1日パス(1500円):空港バス(1000円)往復だけでも500円おトク
2日パス(2500円):空港バス往復+500円乗れば元が取れる

今回は2日パスを購入すると決めて、研究会の幹事にも紹介した。

VISIT TOKACHI PASSの買い方・使い方

画像2

空港か帯広駅の案内所で、身分証明書(免許証等)と、十勝に来る乗車券か航空券を示せば、係員さんが販売・説明してくれる。

1日パスなら6枚、2日券パスなら10枚つづりのフリーチケットがついているので、降りる時にちぎって運転手に渡せばOK。

売れていないVISIT TOKACHI PASS

明らかにお得なフリーパスだが、あまり売れていない。空港での販売簿をチラ見すると、前日が1枚、前々日は0枚だった。おそらく、ほとんどの人が知らないのだろう。

帯広駅ついてから気づきました😭」

「空港連絡バス降りてバスターミナルで人に聞いて初めて乗れることを知りショックを受け、レンタカー借りました

との嘆きが、かつて帯広を訪れた人からは聞こえてきた。

空港の券売機の小さな説明には、「空港バスにも乗れます」「日帰りなら往復で元が取れます」などの売り文句は全く書いていない

画像3

画像4

案内所はフリーパスを求める列ができたが全員研究会の幹事である。セミナーでフリーパスを買ったと手を挙げた人も全員研究会の幹事だった。

画像5

空港バスの座席ポケットにチケットの案内チラシが入っていたが、きっぷを普通に買って乗った人は今更な案内にイラっとするだろう。

お得すぎるパスを売る気があるのか?

このようなプロモーション不足になっている理由は、「空港バス往復より安くて売りたくない」からではないかと考えた。

こんなに安い理由について、北海道拓殖バス・十勝バスの幹部の方は「3000円台のレンタカーより、2人往復で安くしたかった」と説明していた。

十勝バスの野村社長は「値段も含めて、フリーパスの現状が正しいとは思っていない。交通事業者の固定観念を打ち破る必要がある。実際にやってみて、問題点を肌で感じることで改善が行われるようになるはず。値決め、どうすれば知って買って使ってもらえるか、今回のセミナーを機に担当者は考えていくことだろう。」と述べていた。(動画

適正価格は?

片道1000円の空港バスを含めることで、売りづらさや不公平感という問題を起こしているのなら、空港バスを含まなくすればよい。ただし帯広空港のバスは他空港よりも割高である。レンタカーへの競争力維持のためには空港バス込みのパターンもほしい。

例えば以下のような値段ではどうだろうか?

1日券・空港バス無:1300円(帯広駅→愛国→幸福→帯広駅で元が取れる)
1日券・空港バス込:2100円(空港バス往復+1回で元が取れる)
2日券・空港バス無:2000円(1日券の倍より安い、糠平温泉往復で元が取れる)
2日券・空港バス込:2800円(空港バス往復+長距離1往復か短距離2往復で元が取れる)

「レンタカーより2人往復で安く」というコンセプトも、免責補償込みのレンタカー代(4180円~)との比較なら概ね維持できる。

空港往復よりは100円以上高くなるので、「+100円で1日フリーパス、+800円で2日OK」と、空港でのプロモーションもしやすい。

どのタイミングで売りだす?

潜在的な利用者に情報を届けて、フリーパス購買により多く確実にお金を落としてもらうには、次のような訴求の仕方があるだろう。

1. 観光情報サイトへの案内掲載
「お得なフリーパスとバスで巡れる」と来訪をダメ押し。

2. 「帯広 レンタカー」などへのリスティング広告
「1日券1300円~、2日券2000円~」と価格を示し競合から直接奪取。

3. 空港の券売機で訴求
「市内でバスに乗るならフリーパスがお得」
「空港往復2000円に+100円で1日、+800円で2日間乗り放題」と、空港往復+αで乗り放題になるなら買ってしまおう、と思わせる。

4. 「日帰り路線バスパック」と併せてバスターミナルやパンフレットで訴求
「往復なら『日帰り路線バス』、何か所も巡るならフリーパスがお得」と使い分け示す。

ネーミングは?

「VISIT TOKACHI PASS」と長い英大文字の商品名も、
「"ビジットトカチ"パス」というカタカナ名も、読みづらい。

「十勝フリーパス」などシンプルな名前の方が売りやすいのではないだろうか。あるいは何か、グッとくる愛称を。

帯広は「出張ついで」でも楽しめる!

と、フリーパスの売り方の課題ばかり書いてしまったが、帯広のフリータイムはとても楽しかった。

六花亭のバラ売りお菓子はいくらでも買ってしまうし、ケーキも昭和の値段。老舗の柳月と食べ比べても楽しい。

肉好きには豚丼にジンギスカン。夜は北の屋台へ。

夜までやっているばんえい競馬で勝ち逃げしてリムジンバスで空港直行。

1泊2日の出張ついでの旅行「ブレジャー」のお供に、「VISIT TOKACHI PASS」はおトクすぎる。

画像6

画像7

画像11

画像12


画像9

画像11

画像11


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?