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この話は一生曖昧な記憶のままでいい。
いまさら思い出したことがあるので書いてみる。
本当に起こったことなのか、もはや覚えてもいないけど。
季節は秋。だったかと思う。
夏というには涼しいし、秋というには暖かかった。そんな時期。
ある流星群を見ようと近所の川まで行こうとしていた。
そのことをTwitterで呟くと、その人からメッセージが来た。
「わたしも一緒に見に行ってもいい?」
その人との関係性がその当時どのようなものだったのか本当に思い出せない。
けれどとても親しいとか、何度か遊びに行ったことがあるというようなこともなかったと思う。
なのでとても驚きはしたが、たぶん喜んだような気がする。
それが「その人」から発された言葉だったからなのか、単純に深夜の河川敷で星を観るという小さな非日常を共有できるということへの喜びだったのかはわからない。
いま思えば、きっとその両方なのだろう。
大学の近くのコンビニで待ち合わせをして河川敷を目指す。
ぼくは流星群を写真に収めるつもりだったので、一眼レフと三脚を持っていた。
普段夜になってから歩いていると真っ暗に思えた河川敷も、星空の写真を撮るにはいささか明るい場所だということに降りてみるまで気づかなかった。
「天気はいいけど少し明るいね」
その通りだ。
写真はそこそこに、秋めいた風を感じる河川敷でポツポツと話をした。
話をしたことだけは思い出せるが、どんな話をしたのかがほとんど思い出せない。
日付を跨いでしばらくがたった頃だったか、川の向こう側にあるコンビニまでお酒とアイスを買いに行った。
実は、以前から「お酒を片手に深夜の散歩とかしてみたいね」という話をしていたのだ。
その人は缶チューハイのロング缶を、炭酸の飲めなかったぼくはカップの梅酒を片手に河川敷まで戻る。
本当に憧れだったようで、とても嬉しそうだった。
この部分に関しては嬉しそうだったらいいなというぼくの願望かもしれないけど。
あとから気づいたことだが、ぼくはこのときまだ知らない歌の再現をしていたらしい。
いろんな話をしたように思うが、そんなに深い話はしなかったはずだ。それでも、空が明るくなるまで土手の階段に腰掛けていた。
その日間違いなく写真を撮ったはずだが、不思議なことに1枚も残っていない。
だからということではないだろうが、この記憶はとても曖昧だし、曖昧なままでいい。
完全に朝と呼べる時間まで過ごして別れたその日は、たぶん学校には行かなかった。
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