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#62 トヨタ生産方式を越えるDX戦略とは!?(2024/04/02)

木下斉さんのヤバ銀シリーズの対談相手、橋本卓典さんのPodcastsで触れられている、ドイツのIoTを活用して生産性を向上させようとする製造業のDX戦略がすごすぎました。

〇カーボンニュートラル時代、自動車メーカーの決断

カーボンニュートラルに向けた世界的な潮流において、自動車のEV(Electric Vehicle:電気自動車)化などの取り組みが加速しています。
EUでは、ガソリン車など内燃機関車の新車販売を2035年に事実上禁止する方針が打ち出され、メルセデス・ベンツやGMなど世界の自動車メーカー各社もEV化の取り組みを加速化しています。

日本でもEVシフトの進み、2021年12月にはトヨタ自動車が欧州で販売する自動車をゼロエミッション車に限定する準備を2035年までに整える方針を示しています。

〇バリューチェーン全体を革新するドイツのCatena-X

カーボンニュートラルに向けてEV化の動きが加速する中、ドイツのBMWグループとメルセデス・ベンツは2021年3月に、自動車業界において安全な企業間データ交換を目指すアライアンスである、「Catena-X(Catena-X Automotive Network:カテナエックス自動車ネットワーク)」を設立したことを発表しました。

https://www.sbbit.jp/article/cont1/76153

Catena-Xは、自動車産業のサプライチェーン全体を標準化されたデータとして扱うことで自動車のバリューチェーン全体で効率化、最適化、競争力の強化、持続可能なCO2排出量削減などを実現することを目標としています。

Catena-Xは何をしているかというと、すべての機械をインターネットにつないで作業コストなどを数値化してAIで最適化しようというものです。

これは明らかにトヨタ生産方式を意識したものです。
トヨタ生産方式はカンバン方式とも呼ばれます。サプライチェーンのネジを作るところから組み立てまでの全工程で必要な部品を可視化するために、組み立て会社が使った部品の数をカンバンに書き、協力会社にトラックで運んでいくことで、どれだけ部品を作っていいかを伝えていきます。
こうして組み立て会社が生産量を制御することが出来るのが、カンバン方式の優れた点です。

それに対して、Catena-Xはすべての機械と向上をインターネットでつないで数値化してAIでコントロールすれば、カンバンは不要になり、カンバンの運搬コストや人手も削減できるため生産性が向上出来るという考えです。

まさに、トヨタ生産方式を凌駕しようとするDXなのです。

さらにすごいのが、カーボンフットプリントを絡めている点です。
ネジ屋さんから、エンジンから、それらを組み立てる、すべての工程でどれだけのCO2を排出しているかを可視化し、規格化するルールを定め、このルールを国際標準にしようという戦略を描いているのです。

そして、日本にも突き付けています。
トヨタの4次請け、5次請けの協力会社が頑張ってCO2排出量を計算出来たとして、日産やマツダといった他の自動車会社ではどうだ?CO2排出量も可視化出来ないのであれば関税をかけますよ。と。

〇日本のDXとの違い

ドイツはサプライチェーン全体をどうするかの戦略を立てて、カーボンフットプリントを絡めた国際標準を作ろうとしてきました。

同じ10年間で日本は何をしてきたかというと、ものづくり補助金によって、個別の中小企業1社1社の設備の更新という究極の部分最適を進めていました。(これもとても大事なことではあるのですが。。。)

Catena-Xのデータの標準化という考え方は、日本で浸透させるのは難しい事情があります。
中小企業では、まだまだFAXや文字列がコピー出来ないpdfが使われており、請求書や検収書のフォーマットはバラバラで、データの標準化には程遠いです。

また、現場に丸投げの「うまくやっといて」で成り立つメンバーシップ型の組織が多く、DXなどの改革が難しいという背景もあります。

また日本の商習慣なのか、大手企業はシステムに業務を合わせるのでなく、業務にシステムを合わせようとします。
現場を尊重し、それぞれの現場への最適化が行われるため、業界のデータの標準化はやたらとハードルが高くなるのです。

私も大手企業のDX案件で、「現場は変えられないからこの対応も追加してください」という、不要な機能のカスタマイズを幾度となく対応してきました。。。

日本のDXの難しさは木下斉さんの有料放送でも話されており、勉強になります。


ということで、これが本当の「DXによる生産性向上だ!!」というような、ドイツのIndustry4.0の取り組みについて紹介しました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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