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#105 組織の生産性向上のためのドキュメント戦略

生産性向上といった時に、業務の属人化をなくし平準化・効率化すべき。
と、属人化が悪のように語られることがあります。

私は、どちらかを選択するのでなく、平準化と属人化をミックスすることで、生産性の向上が実現できると考えています。

一定のフローに落とし込める業務は平準化し効率を上げる
正解・事例のない業務は職人レベルの属人性を発揮して突破する

今回は前者の一定のフローに落とし込める業務は平準化し効率を上げるためのドキュメントの活用・運用方法について考えます。

〇ステップ1 ドキュメントを書き始める

まずはドキュメントが必要であることに気づく

私の職場では、近年ドキュメントを書くことが良いという価値観が生まれてきました。
が、10年程前はほとんどドキュメントを書いていませんでした。
というのもドキュメントを書いても読む人がいなかったからです。

営業・エンジニア合わせて2,3人の少人数のチームで一つの業務を対応するという組織だったため、ドキュメントを介さずともチームで確認する方が圧倒的に早かったからです。

しかし、成長中のベンチャー企業ということもあり、次第に一つのチームで提供する役割と共にメンバーが増え、人事異動や退職・入社などでメンバーの入れ替わりの頻度が上がっていき、人に聞いてもわからない状態なりました。

エンジニアはソースコードを読めば、システムがどういう振る舞いをしているのかはわかります。しかし、なぜその振る舞いをすべきなのかの仕様はわかりません。過去の顧客とのやり取りを漁ってもわからず、「おそらく○○だろう」と判断するしかなくなります。

わからないのも困りますし、調べるコストが膨大というのも大きな問題です。
そのような痛みを伴うことで、ドキュメントって大事だねという共通認識が生まれてきました。

ドキュメントの書き始めのハードルを越える

では、いざドキュメントを書こうとするとなかなか書けません。これまで書いていないので、何をどう書けばよいのか。。。という状態です。

いきなり完璧なドキュメントは書けないと開き直り、とにかく書くハードルを下げるために、二つのルールを用意しました。

書いて欲しい項目、フォーマットを用意する
キレイに書くよりまずは書く、整理は後でと繰り返し伝える

書き始めで手が止まるのを防ぐために、書いて欲しい項目(システム構成図、各種資料の場所、障害対応、データ仕様など)をざっくりと用意し、ドキュメントもフォーマットも簡単に用意しておきます。

そして、まずは書いて後から修正、整理していけばよい。まずは書こう。という共通認識を作ることで、ドキュメントが全くない状況から、決してキレイではないがドキュメントがある状況を作ります

〇ステップ2 ドキュメントを整理する

ドキュメントを書く習慣がついてきたら、ドキュメントを活用できるように整理が必要です。

まずは書こう。と言ってきているので、タイトルだけのドキュメントや文脈を知らない人には全く理解できないようなモノも存在します。
一方で良いドキュメントも存在します。

複雑な仕様をまとめたもの、定型的な運用業務の手順書などは業務の平準化・効率化に繋がるとてもよいドキュメントです。
これらのドキュメントは存在を知られないと、存在しないのと同じです。

そのため、良いドキュメントを必要な時に見つけられるようにドキュメントのディレクトリ構造を整理します。

  • 運用

  • 設計

  • MTG

  • 開発プロジェクト

例えばこのように、必要なシーンに分けてディレクトリを切り、さらにツリー上に整理していきます。
各ドキュメントへのエントリーポイントを用意したり、関連ドキュメントを紐づけたり、ドキュメントの存在を知らない人でも知りたい情報にたどり着けるような構造を作ることが重要です。

構造が整理されると、不足している情報に気づけドキュメントの拡充もしやすく、良いドキュメントに自然と出会えるため、それを参考に書くドキュメントの質も向上します。

ドキュメントが増えるに従い、適切なディレクトリ構成は変わってくるので、定期的にメンテナンスするのもお忘れなく

〇ステップ3 ドキュメントを活用させる

せっかくドキュメントがあるのに、ドキュメントが活用されないという問題はあるあるです。
ドキュメントを探して読むよりも人に聞いて教えてもらった方が楽ですし、教える側も頼られることで自己肯定感を得られるので、なおさらドキュメントを活用するインセンティブが働きにくいです。

が、同じ質問を10人から10回されたら?という視点を植え付けることが重要です。
そのためには、丁寧すぎる教育は悪であると考えます。

例えば、教えを請われたら回答を与えるのでなく、ドキュメントに到達できるようにフォローします。

「ドキュメントはなかった?」と問いかけ、関連するドキュメント(自分は存在を知っている)を見つけられなかったのであればドキュメントの探し方を教えたり(最初にもらった問いには答えない)など、ドキュメントを探すことへのフォローをし、次回は自分でドキュメントを探せることにフォーカスします。

また、ドキュメントの記載内容に不足があれば、教えつつドキュメントの更新をお願いします。

そうやって、ドキュメントの活用に慣れてもらいます。ドキュメントを活用し始めると、不足分を追記したりディレクトリの整理をするのが当り前になり、さらにドキュメントの活用が促進されるという好循環が実現できます。

そうやって当り前のレベルをアップデートすることで、平準化・効率化が実現でき、生産性の向上につながります。


ということで、生産性向上につなげるためのドキュメント戦略について紹介しました。
ドキュメントの活用はほんとうに難しく、根気強く、熱量を持ってやっていかないと実現できません。私のチーム・組織でも完全にワークしているわけではなく、実践中ではあります。

ドキュメント戦略を実行するアドバイスなどいただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。




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