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オールドレンズを買った話・その2(CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4編)

雨で写真を撮りに行けないので日記を書く。
前回、初めてオールドレンズを購入した話を書いた。あれからまだ1ヶ月も経っていないが、2個目のオールドレンズを買ってしまったので、その時のことを書こうと思う。

実家には、数十年にわたり父が買い続けていた写真雑誌『アサヒカメラ』が大量にあった。そこに掲載されている写真には、絵解きとして使用機材が記載されていた。
実家にいた頃の私はそれらの文字を眺めてはいたけれど、あまり興味を持って読んではいなかった。しかし目に焼き付くほどこの字面を見たことは覚えている。
「Carl Zeiss」。
父はNikonのレンズしか持っていなかったと思うが、「カールツァイスはいいレンズなんだぞ」みたいなことをよく言っていた。ビオゴン、ホロゴン、ディスタゴン、プラナー、ゾナーという呪文のような、硬質な異国の響きも同時に覚えた。覚えただけだが。

ところで写真の話を書くとどうしても父が登場するので、「ワタシとカメラと、しょっちゅう、オトン」みたいになってしまう。そういうものだと思って読んでください。

子供の頃に聞いたことは忘れないもので、昨年父を亡くしたことと、あといくつかのきっかけで再燃した今回の写真熱に、これらの記憶が強烈に交錯してくる。
Z fcとセットで既にNIKKOR Z DX 24mm f/1.7を購入していたし、このカジュアルな組み合わせは今の私にとっての最適解だとも思っているが、ツァイスのレンズを試してみたいという想いも次第に大きくなっていった。

少し時間が遡るのだが、数年前に仕事関係で知り合った若い女性がCONTAX Ariaを使っており、何度か作品を見せてもらう機会があった。素晴らしい。彼女のセンスももちろんいいのだが、レンズがそれに合っている。
全体としては光に溢れ、ふわっとしてるのに、ピント面の描写がキレキレで被写体が浮き出て見える。ちょっと目眩が起きそうなほどの立体感を覚える。自分が使ってきたどのレンズとも違うと思った。
一緒にフォトウォーク(私はコンデジ)をした際にレンズを見せてもらった。Planar T* 50mm F1.4だった。
あっ!と思った。
これか、これが父の言ってたプラナーなのか。本当に良い。やばい。

という、「記憶のなかの父のリコメンド」と「それを裏付ける最近の体験」がぎゅーんと私の中で一つになり、このレンズで写真を撮ってみたいという気持ちが生まれた。
まあシンプルに物欲でもあるが。

そしてまたふらふらと2nd BASEに出かけて行き、今日は価格を確認するだけ、買わないよ、と思っていたにもかからわず…

買ってしまいました。

私バカなの!?とさすがに一瞬反省もしたが、購入したからには使い倒す。それがレンズを買ったものの使命というものだ(?)

さて、少しお店での話を。
事前に調べた際にこのレンズにはいくつか種類があることがわかった。ここを読んでいる方はご存知かもしれないが、簡単にまとめるとAEJとMMJ(Jは日本製の意味)である。その他にドイツ製のAEGとMMGがあるようだ。
AEタイプは絞りの形状がギザギザの「手裏剣ボケ」が出ることで知られており、一方のMMタイプは真円に近いきれいな丸型のボケが出る。市場ではMMの方が数も少なく高価である。

悩んだ。
とりあえず解放で撮るしAEでもいいのでは?と思った。
というかそもそもAEは何段階絞った時にあの手裏剣を出すのだろう。店員さんに聞いてみたら「2」だそう。2かあ…。
解放値が1.4だから、たった一段階絞った時、もう手裏剣になっちゃうということ。これがせめてインダスターみたいに5.6くらいからの変形なら、なんとか回避することもできそうなのに。2はけっこう使いがちである。

でも、実際使ってみたら案外手裏剣型が気にならない可能性だってある。現段階では自分の許容範囲がわからないのである。うーん。
そんな苦悩する私に店員さんの「試されますか?」の一言。試します!!!

中央の陳列台に並んでいるレンズに、ちょうどいい感じの光が当たっているので、このレンズたちを被写体にボケを出してみることに。

モデルの皆さん

まずはAEJから。

!!手裏剣だ!!!
もう一枚。

こんなにもまんまの形で出るものなのか。逆に感動した。面白いからこれでいいと思いさえした。背景のふんわりボケはとても美しいし。

次にMMJ。

まんまるだ…

自分のカメラに実際にレンズをつけて試してみると、違いがわかりすぎるほどわかる。
頭を冷やすために一旦店を出て秋葉原の街を彷徨いながら悩みに悩んだ結果、MMJに決めた。AEは面白いけどこのまんまるを見てしまうと、やっぱりこっちだな…という気持ちになってしまった(私はね)。

ちなみに普通に焦点を合わせて撮るとこんな感じ。

きれい。
光源に向けるとフレア、ゴーストも出る

その日店内にあった2個のMMのうち、状態がいい方を選んでもらったが、それでも薄曇りありのB品だった。もともとオールドレンズらしい写りが好みなので多少の曇りは気にならない。曇りのせいで相場より安くてありがたいくらい。
「試せる」ってほんとやばいシステムだよなあ…。

そんなわけで前回スーパータクマーを買った時と同様、ヤシコンマウント→Zマウントのアダプターと一緒に購入。嬉しすぎて帰り道のことは覚えていない。

いくつか作例を上げる。全てRAW撮影、Lightroomで現像している。

ソフト系のプリセットを使用。空気が写ってる、と感じる。
ピント面のカリッと感がすごい
絞ってもすごい
立体感。浮き出る。
猫カフェの窓から外を覗いていた猫。
ガラス一枚隔てているが繊細な描写
玉ボケが楽しすぎてたくさん出してみた
意外と赤の色のりが良い。
赤いものを撮ると「赤っ」と感じる

解放でピント合わせをするのが結構難しく(老眼のせいもあるかもしれない)、初めてZ fcの拡大機能を使った。
それと、例の如くマウントアダプターを付けると長く重くなるけど、この写りには変えられないので、しばらくつけっぱなしにしようと思う。

おわり

iPhone撮影。ながーい。

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