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小林研一郎と神尾真由子 かつての推しに会いに行く

文京シビックホールで、「響きの森クラシック・シリーズVol.81」を聴く。

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ベルリオーズ:幻想交響曲

ヴァイオリン:神尾真由子
指揮:小林研一郎
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

前説

完売公演。

小林研一郎も神尾真由子も、一時期追っかけていた。

コバケンは東京芸術劇場の楽屋口で握手してもらったこともある😅

宇野功芳の本でクラシックの森に入ったクラオタ黎明期の私のスターがコバケンと前橋汀子だった。

二人を別々に聴いてきて、あるとき日本フィルの公演でモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」で共演すると知ったときの嬉しさといったら!😆

残念ながら実演はイマイチでした。まあコバケンのモーツァルトっていうのもね😅

最近はすっかりご無沙汰になっていたコバケン。いま84歳なので、元気なうちにまた聴いておきたいという気持ちになった。

生で聴くなら十八番の「幻想交響曲」かチャイコフスキーの5番と決めていた! 無事に聴けて嬉しい!

神尾真由子はチャイコフスキー国際コンクールで優勝する前から注目していたのがひそかな自慢。

実際はフライヤーの写真がかわいいから気になってただけ😅
優勝数か月前?の東誠三とのデュオ・コンサートに行ったのが始まり。

優勝後にも何度か聴いたが、最近はすっかりご無沙汰だった。

ベートーヴェンの感想。


神尾真由子、東京音楽大学で現在教鞭をとっている。

今日のベートーヴェン、太い楷書体のような演奏。これぞお手本と呼びたくなる正攻法だった。

生徒やお弟子さんも聴きに来ていたのかもしれない。
まさに「先生のお手本」的なスタイルだったが、不思議と格調の高さは感じなかった。

お手本色の強すぎる演奏は私にはやや退屈で、この曲を通して何を伝えたいのだろう?と思ってしまった。

今日は文京シビックホールの名曲コンサートだから、名曲をスタンダードな形で届けたい、という意図なら成功していたとは思う。

しかしそこまで聴き比べをしてない私であっても、生で聴くからには新鮮な発見や驚きがほしい。

小泉和裕のベートーヴェンみたいなオーソドックスさ。「気を衒わず」といえば聞こえはいいが、裏を返せば捻りがない。

「私はここをこういう風に聴かせたい!」という欲求が伝わってこなかった。表現意欲に乏しいというか。

先生が生徒の勉強のために聴かせるにはいいかもしれないが、アーティストが聴衆に届ける音楽としてはどうなのか疑問が残った。

アンコールはなし。

ないのが雰囲気でわかったのに、客電がついてもなお拍手がだらだら続く光景は下品だなと思ってしまった。

ソリストは当たり前にアンコールすると思ってる人いるよね?😅

アンコールねだりのさもしい拍手はやめてほしいものです😓

ちなみにコバケンの棒はソリストにピタリとつける感じで、往年の巨匠風の分厚い伴奏でした。

後半は幻想交響曲。

コバケンの十八番。びっくりしたのは十八番なのに慣れで流してる箇所がひとつもなく、常に新鮮な感情を乗せながら振っていたことである(無論、暗譜ではある)。

第1〜3楽章はかなりテンポがゆったり。フレーズの細部に至るまで歌わせる。色とりどりのメロディラインが咲き誇った。

「よかったよ」というジェスチャーを演奏中しきりに出していた。
楽団員さんは演奏してて不安に感じるものなのかしら。高関健さんも指揮しながら結構グーサイン出してたし。

半身を振り返らせて客席後方を指差す定番のコバケンポーズ(遠くまで音を届けて!ということだろう)も5、6回見れて大満足😁

第4楽章から第5楽章はほぼアタッカ。意外だったのはそれまでは結構テンポを揺らしていたのに、ドラマティックな後半2つの楽章ではアゴーギクはむしろ抑え、インテンポに近い速度で演奏していたことだ。

私の好みでは、テンポ揺らしまくって崩壊寸前のアンサンブルが際どい均衡を保った大植英次の「幻想」がこの曲のらしさを感じさせていいのだが、おそらく世界一この曲を振っているコバケンの王者の風格ある「幻想」も魅力がある。

エルガーの「威風堂々」やワーグナーの歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲のような王道ぶりで、ラストなんかまったくアッチェレランドをかけないからブルックナーの8番みたいな重厚感だった。

演奏中は何かとノイズの多い客席だったが、演奏後のブラボーと拍手のタイミングは絶妙だった。

演奏が始まってしばらくして気づいたのだが、

あれ? 唸ってない??😅

唸らずんばコバケンにあらず、という諺を聞いたような聞いてないような……😅

唸りなんて、ないにこしたことない。美しい音を聴きに来てるのに、唸りも鼻息もただの雑音でしかない。

唸らないコバケンはさらに風格が増したようで、飯守泰次郎に似た雰囲気もあった。

「幻想」の鐘はチューブラーベルでやることも多いようだが、今日は実際の鐘を3個🔔🔔🔔使っていた。

感動的だったのは、1stVnの若い女性が演奏後に泣いていたこと。コバケンとの「幻想」が初めてだったのかもしれない。

「演奏中に涙があふれて譜面が読めなくなった」という話を聞いたことはあるが、実際に見たのは初めて。コンマスの近藤薫さんもやや涙ぐんでるように見えた。

演奏後の恒例のスピーチで、コバケンは「幻想はたくさん振ってますけど、こんな刺激的な演奏はなかなかない」(言意)と言っていた。

久々のコバケンなので「ダニー・ボーイ」を多少は期待したが、「幻想」で完全燃焼だったようでアンコールはなし。まあそうだよね😅

かつて朝比奈隆は、87歳でシカゴ交響楽団の定期演奏会にデビューした。コバケンも日本と東欧の活躍だけではもったいない。

ベルリン・フィルで「幻想」、ウィーン・フィルでチャイ5を振ってくれないだろうか。

朝比奈をシカゴ響に招聘したヘンリー・フォーゲルみたいな人物はいないのか⁉︎😭

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