✍️①「種苗法改正案」に関する誤解を解いておきたい

すごーく長くなります。
あたしなんかより、はるかにSNSの使い手である、東京で農薬・化学肥料不使用で農家を営む父本人がtweetすればよいと思うのですが、「政治絡みの発言は色々あって難しいから」とのことで、あたしが代わりにUPします。あまりにも長いのでTwitterは諦めてnoteにまとめました。
あたしのtweetにいただいた返信「(農家は)この理解でないのですか(?)」に添付されていたイラストに関して、父に内容を確認してもらいました。
「夏物の苗を定植しまくっているクソ忙しい時期に、めんどくせーなぁ」とブツブツ言いながらも「このまま黙っているのもなんだかなぁー」ということで、回答してくれました。
ただしこれからUPする内容は、あくまでも父個人の反論であり、誰かに強制したいと言う気持ちは一切無いとのことです。一つの見解としてご参考にしていただければとのことです。
また、「このイラストを書いたのが農家だとして、農家に深くかかわる法改正に関して、農家が農家に反論しなければならないことが、こんなにつらいことだとは思わなかった。それが一番の問題だよな…。」と肩を落としていました。

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赤①「種・苗の保管ができなくなり農家の負担増」→自家採取をしている農家は少ない。自家採取率が比較的高いと思われる有機栽培農家仲間の中でも、おそらく10%前後ではないか。だから一般的にはもっと少ないと思う。ちなみに父が栽培している品目・品種のうち「自家採取しているのは品目・品種共に約10%程度」とのこと。ほとんど(約90%)の種は毎年購入している。もともと購入しているのだから、急な負担増にはなりえない。

黄①「コストモデルを示すグラフのようなイラスト」→ミスリード(誤誘導)。数字が入っていないので、見た目の印象だけで判断するとして、こんな比率はありえない。そもそも数字が入っていないグラフほど怪しいものはない。
ちなみに父の種苗費は「年間で総経費の5〜6%にすぎない。新しい品種を試したくて色々多めに購入した年でも、総経費の10%を超えたことはない」と。

赤②「種苗コストが増え離農する農家が増える」→種苗コストが、自力で工夫しても経営上吸収できなくなるほど高くなることは考えにくい。もしそうなるとしたら、それこそ「信じるか信じないかはあなた次第!」という都市伝説レベルの話。人はそこまで馬鹿ではない。
前述の通り、もともと総経費の中で種苗コストの占める割合は高くなく、そのコストが上がったとしても、それに対応できずに離農する農家が増えるとは思えない。

赤③「改正後対象品種が増える」→開発者の権利を守るための法改正なので当たり前。なんの心配もいらない。なぜなら、登録品種でない在来種を含む一般品種は対象外だから。ちなみに「きゅうり」は対象品種であるが、その品種数は500あると言われている。その全部が自家採取禁止になるわけではない。
今「きゅうり」で言った、対象品種と品種数では「品種」の意味が違う。そのことが、話をわかりにくくしている一つの要因かも。対象品種ではなく対象品目(あるいは作物)とするべき。その方がおそらく一般的には、わかりやすい。ざっくり説明すると「きゅうり」は対象品種としては「1」。ただ、実際に「きゅうり」の品種数は「500」。「えっ、何⁉︎」って感じでしょ。わかりやすくする為に「きゅうり」を「1」品目(作物)として、その品種数を「500」とする。「きゅうり」は対象品目(作物)であるが、その品種数は500もあり、その全てが自家採取禁止の対象になるわけではない。だから、ダメな品種の数だけを明示すればよい話。あたかも「きゅうり」は対象品種だから、全ての「きゅうり」の自家採取がダメであると思わせるのは、完全なミスリード(誤誘導)。

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赤④「離農する農家が増え、地方自治体の種苗企業が運営できなくなる」→前述の通り、そもそも離農しなければならなくなる理由がない。
ちなみに、その運営できなくなる地方自治体の種苗企業ってどこ?それってもしかして、万が一困ることになったとしても「ごく一部のお米だけ」に限った話じゃね⁉︎「今時、野菜は地方自治体の担当職員でさえ民間種苗会社の優良品種・売れ筋品種を薦めてくるぞ!」とのことです。
ちなみに、世界の種苗会社ベスト10に日本の民間種苗会社は2社ランクインしている。共にシェア5%。シェア22%のモンサント社が世界を独占するとかありえない(後述:参考資料参照)。
事実、モンサント社製の野菜種子が日本で売られているのを見たことがない。「誰か売っているの見たことがあったら教えて!買って育ててみて食べてみて、育てやすさとか病気になりにくい・なりやすいとか、味とかの報告もきちんとするから!」と。
ちなみに、「とねのめぐみ」というお米は日本モンサント社製。「これって売れてる?普及してるの?」とも。
農家は色々自分で調べて、満足のいく風味があり、自分の土地と栽培方法に見合った種を色々な種苗会社から厳選して購入している(自家採取オンリーで経営している農家もあるので、それは別)。つまり、どこかの民間種苗会社が独り勝ちすることなど考えられない。
ただ、盗み出される可能性が無いとは言えない。その時こそ、この法改正は役立つんじゃね?
「そんなことは絶対にさせないと法律で決めておいたよ!」と、それこそ皆で立ち上がればよいのだから。

赤⑤「インドの例。高価なグローバル品種」→何それ?聞いたことがない。そんなのが存在するのなら教えてほしい。その野菜(作物)はインドでシェア100%ということだから。極端な喩え話ではあるが、桜の中で世界一有名なブランドで日本人が大好きな「ソメイヨシノ」でさえ、日本国内でシェア100%にはなっていないのだから、ありえない。人それぞれ、土地それぞれ、好き嫌い、向き不向きはあるということ。
また前述の通り、一社独占は世界的にも日本でも勿論考えられない。
ちなみに、ブランド品種が高いのは当たり前。車や洋服と同じこと。
「みんな、そういうのは好きなのにね!」と。娘ながら、それは余計なお世話だろ(怒)

赤⑤「種苗に合わせて土地改良が必要」→同じ品種を長年作っていても、いや作っていればこそ、毎年土地改良するのは当たり前。美味しい野菜を作ろうとすれば必然的にそうなるし、農家は当たり前のようにやっている。それをしないというのなら、それは農家とは呼べない(ただし、そういう農法もあるので、それは別)。
また、絵にあるような大型重機を入れての大規模な土地改良など必要になるはずがない。簡単に言うと、きゅうりAがきゅうりBになっても、そんな規模での土地改良をする必要は全くない。これもミスリード(誤誘導)。

黄②「イラストの中で『肥料』が『把料』と書かれている」→揚げ足を取るわけではないが、この人が農家だとして、そう書いてしまう農家がいること自体が恥ずかしい。こういうことだけで、全く信用されなくなるリスクがあるということを理解していない。だから、この人は何も考えずに、ただ面白がって発信しているだけなのではないのだろうか?
「残念だし、これをUPした人は本当に農家なのだろうか?疑問」と。

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赤⑥「農家のみ負担増」→サンドイッチマンさん風に言うと「ちょっと何言ってるのかわからない」と。もともと多くの農家は、ほとんどの種を種苗会社から購入している。その開発者の権利を守ることの一体何が悪いのか。この人も「本でいう印税」と書いている。それは払うのに、莫大な費用と時間をかけて開発した種苗会社の権利を守らないって何?前述の通り、ブランド品を作りたい(売りたい・買いたい)のなら、それに見合う対価は当然支払うべき。餅は餅屋。種は種屋。優れた種子の開発まで農家に負担させたら、それこそコストと時間が全くあわない。
「勿論、それでも長年に渡って交配とか頑張ってやっている農家もいるけどね」と。

赤⑦「現在の種苗法で対応できる」→現実問題として対応できていない。「和牛」や「シャインマスカット(ぶどう)」、「とちおとめ(いちご)」などの流出問題で明らかになった通り。だから、より強固に権利を守る必要がある。音楽や電子書籍、テレビ番組などの違法ダウンロードやアップロードが厳しく罰せられるようになったのと同じ。

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まず一言。
「こういうことに消費者を巻き込むんじゃねー!プロだろうが⁉︎ プロならプロらしく振舞え‼︎」とのこと。

赤⑧「野菜価格が上がる」→この法改正で万が一種苗費のコストが上がったとしても、台風などの自然災害の方が圧倒的にに怖い。現に、ちょっとした天候の変化や季節変動で野菜の価格など簡単に上下する。そうならないように、農家は皆備え、工夫している。今回の法改正が天地をひっくり返してしまうような災害と同じであるとは到底思えない。農家の負担は常識的にはそれほど増えず、従って大幅なコスト増にはならない。だから野菜の価格が極端に高値で安定してしまうことなどありえない。

赤⑨「農家の廃業により国産の野菜の入手が困難に」→前述の通り廃業は増えないから、入手困難などにはならない。この法改正が理由で廃業する農家がいるとしたら、それは違法な栽培や販売方法をしていたからとしか思えない。つまり、権利者に対価を支払っていないとか、詐欺的行為による販売をしていた農家。それこそ大問題。そういう農家は世の中の為に、とっとと離農した方がよい。
「だって違法野菜なんて、それこそ普通は誰も買わないでしょ?」と。

赤⑩「食の安全面での懸念」→何の心配もいらない。日本の土地に適しており、しっかり根付いた在来種及び登録されていない一般品種は自家採取可能だから。また、日本の種苗会社のレベルは高い。安全面の問題など起こるわけがない。起こるとしたら、それこそ作り手である農家サイドの問題。最終的に問題を安全性に結びつけて、人々の恐怖心を煽るのは悪質としか言いようがない。

赤11「海外企業が日本をコントロール」→テレビの見過ぎ(笑)まさに前述した都市伝説そのもの。一体どこで、どうしたらそんな発想が生まれてくるのか、ある意味凄い。
「そう言いたい人達は、自由を叫びながらも実は逆に、より強いものに管理されたいと思っているのではないか?」とも。娘ながら、それは言い過ぎだろ(苦笑)
また、「日本の種苗会社の独立性は高い。興味があるなら、是非調べてみてほしい。わかるし、安心するから」と。

赤12「自給自足困難に」→最終的に全てをこれに結びつけたかったのだとしたら、おぞましい悪意しか感じられない。食糧自給率は全く別次元の問題。
だいたい「国をあげて農家の皆さんを支えなければならない時期」って何?農家は皆赤貧でダメダメなやつ、もしくは清貧でなければならない感覚っておかしくね⁈(苦笑)
ちなみに、これを書いた人が本当にプロ農家だとして、一体どうやって支えてほしいの⁇ 俺はプロとしてのプライドがあるから、種のことや法律のことをきちんと勉強もしていない人に「あーだこーだ」と口を出されるのは正直嫌だし、そんなこと言われなくてもちゃんと経営しているし、できている。お客様に満足していただける野菜を生産し続けてきた自負があるし、そのことはこれからも当然のごとく全く揺るがない。
だから「普通に野菜買ってくれれば十分ですよ!それだけで十分皆さんは農家を支えてくれていますよ!」だそうです。
つまり極論すると「ダルヴィッシュ投手がピンチの時に、ホットドッグ片手にビールを飲んでいた観戦者が『俺が投げる!』って言って、メジャーのマウンドに立っちゃうのと同じじゃね?お金払って観にきてるんだから言いたいだろうし、そうしたい気持ちはわかるけれど、実際に野球をしている多くの選手は、ただ応援してくれるだけでいいのにと思うよね。余計なことはするな!少なくともビール飲んでないで、マウンドに立てるだけの最低限の準備はしてこい!(笑)」と。
ちなみに父は「皆様をディスるつもりは一切ない。勿論、『声をあげるな!』と言っているわけでもない。農業に興味を持ってもらえたのは、本当に嬉しい。ただ、できれば色んな人の意見を聞いて、冷静に議論してほしい。安易に『風が吹けば桶屋が儲かる』的なデマに近い話を拡散しないでほしい。特に、人に恐怖心を与えるようなものについては、現場での火消しが本当に大変だから。」と。
実際に「おたくもいずれモンサントの遺伝子組み換え野菜を育てながら、それでも『無農薬・無化学肥料栽培で頑張ってます』とか言い続けるのですか?(冷笑)」とか最近よく絡まれるんだけど「マジうるせーわ!そんなこと絶対にならんから‼︎」と。
また、「農家の実態とかけ離れている話に大勢の人が惑わされるとか、その人達が結果として悪意ある人に騙されるかもしれないとか、本当に怖い。そのうち高価な壺とか売り付けられないといいんだけど…。」と。娘ながら、それもまた言い過ぎだろ(笑)
あと、「この法改正に関して、農家のホームページやSNSでの発信内容を見ればわかると思うけれど、有機栽培農家も含めてほとんどの農家は反対の声などあげてないよね。むしろ賛成しているよね。その事実こそが、全てを物語っていると思うけれどなぁー。せっかく農業に興味をもってくれたのだから、色んな農家のホームページを見て、それこそ『マイ農家』とか『推し農家』とか作って応援すればいいのに(笑)」とのことでした♪
ちなみに父は、脱サラして新規就農して10年目に入りました♫
蛇足ですが、父も山本太郎さんの支持者です(ここだけの内緒話w)。

参考資料(以下参照)
①きゅうりの品種数は500あると言われている。

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②日本の種苗会社の世界シェア。「サカタのタネ」さんも「タキイ種苗」さんもシェア5%。

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③「サカタのタネ」さんで現在販売されているきゅうりの品種数は24。500×5%=25だから、ほぼあっている(ちなみに「タキイ種苗」さんはやや少なくて14品種)。

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④2017年に開催された「地域に根差した伝統野菜(在来きゅうり)」に集まった品種は21。「まさに世界レベル!世界シェア5%の企業と比べても全く遜色の無い数!」と。

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最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました♬
父に代わって御礼申し上げます。
「あくまでも、皆様のご参考になれば」とのことです。

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音楽とバスケットボールが大好きな医療従事者。政治に興味津々。東京で農薬・化学肥料不使用で農家を営む父をもつ。