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建築界の人こそ「OMO」を学ぼう

こんにちは、こーだいです。
ここ最近、建築家としての設計の仕事以外に、縁あってIT企業でもお仕事をしています。そこで取り組んでいるのが「OMO」と呼ばれる領域の仕事。
このnoteでは、建築界隈でまだ聞き慣れない「OMO」について、建築を切り口にして考えてみようと思います。


OMOって?

「OMO」は「Online Merges with Offline」の略称で、言葉の通り、オンラインとオフラインを切り分けずに、体験や生活やデータについて、考えよう!というマーケティングの概念です。
ネットで検索すると、こんな図↓がたくさん出てくるはず。

OMOの図.001

"オンラインの中にオフラインが統合される"
というこの表現をみると、オフラインの専門家である建築家の方々には、拒否感がある気持ちはわかります、、、。

が!グッと堪えて向き合ってみるのがこのnote。

見てみぬふりができない程、近年のビジネスシーンでよく使われる言葉で、コロナの流行以降は今まで以上に頻出しており、「OMO」についての書かれた本は、ビジネスマンの必読書となっています。

OMOは日常の話

具体的にOMOについて知る為に、モノを買う時の行動を考えてみます。
例えば洋服の買い物をする時「探す」と「買う」という行為があり、それぞれ「オンライン」と「オフライン」どちらかで、という選択肢があります。
つまり、これ↓はどれも成り立つよね。ということ。

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AmazonやZOZOなどECが一般化してきた現代にとって、この4つはどれも当たり前の行動で、現代人は、その時の気分や時間などによって、自然に選択肢を変えています。
この前提のもと、各業界でサービス提供の仕方を考え直さなきゃいけない!ということで「OMO」という概念が注目されているわけです。


どんな変化が起きている?

OMOの最前線は中国です。中でも有名なのがアリババのOMO型のスーパである盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)。
下の動画のスーパーが現実の世の中に実装されています。この凄さの本質はロボットやクレーンではないのですが、このnoteでは割愛。とりあえず、ビジネス的にも高度なことが実現されている。と理解しておけばOK。

で。
このような光景をみると「機械化と効率化の世界で空間が面白くない」「居心地が悪そう」「建築家がやるべきことではない!」と思う人もいるかもしれません。そこで読んで欲しいのがこの記事↓。

一部抜粋します。

『おはようございます』と言われてコーヒーを渡されたら嬉しい気持ちになる。これは自動化しては生み出せない付加価値です。もちろん、自動化していく方向も良いと思いますが、自分はレジ作業や経理作業といった作業を効率化し、接客だけに集中できるカフェにしたら面白いんじゃないかと思っています。(記事から引用)

夢ありません?
つまり、すべてを効率化することではなく、コミュニケーションや+αの体験など、一見すると非効率なことの為に効率化をする。ということが目指されています。これこそ「OMO」で重要なポイントです。


建築や都市の姿が変わりつつある

さて、このOMOが広まっていく中で建築界にはどんなことが起きるか?
思い浮かぶポイントをあげていこうと思います。

1:プログラムの変容が起きる
OMOに連動して、D2CやDNVBと呼ばれるビジネス形態が登場しています。
これらのビジネス形態では、モノを買う為ではなく、体験する為だけの店舗がつくられます。
例えば「洋服を試着する為だけの店舗」「枕で試しに寝てみる為だけの店舗」「ガジェットを試しに触ってみる為だけの店舗」などです。
これって、今までにはなかったプログラムだと思うんです。新しいプログラムに形を与えることこそ、建築家の得意領域で、ここに新しい建築が生まれる可能性を感じています。
D2Cについて詳しくは石田康平さんのnoteが参考になるので是非。


2:都市の構成が変わる
飲食業界では、ゴーストレストランと呼ばれる業態が生まれています。
簡単にいうとデリバリーのみのレストラン。
ゴーストレストランはuber eatsや出前館などを利用し、オンライン上で注文を受けデリバリーで飲食提供をする為、賃料の高いGL階や表通りに出店する必要がありません。ここから不動産の価値が変わるかもしれない。
これが増えると、街のGLレベルのプログラム構成が変わったり、デリバリーを食べるためのフードコートが街中に現れるかもしれない。
似たようなことが飲食業界以外でも起きており、プログラム配置の変化から、都市が変わっていく可能性を感じています。

3:空間体験の本質を考え直しが起きる
空間体験はオンライン体験と比較して考える必要が出てきています。
わざわざオフラインで体験する意味は何か?オフラインの価値とは何か?
を深いレベルで求められるようになっている。
価値を考え直すいいきっかけではないでしょうか。
例えば、オンライン上では過去の検索履歴から情報がレコメンドされることによって、自分の世界が閉じてしまう「フィルターバブル」と呼ばれる現象があります。
それに対し「セレンディピティ」や「求慣性」が重要と語られることがありますが、ここはまさにオフラインが提供できる価値です。
このようにオンラインと比較してオフラインの価値を再定義や強化をしていく必要があると感じています。

4:デザイン与件としてのデジタルが当たり前になる
OMOではオンラインとオフラインが溶けることが重要な為、
「体験がシームレスにつながる」→「統一された世界観の構築」
の流れがあります。
「空間として美しい」ではなく「空間もデジタルもどちらも美しい」
のデザインを発明する必要が出てきます。
建築業界でよくみる真っ白のデザインは、UIのブラックモードの流れと逆光するし、彩度の低い落ち着いた雰囲気のデザインは、UI上だと眠たい印象になってしまう。
これどう乗り越えるか?を思考することで、空間デザインの新しい可能性が出てくるのではないかと感じています。

ビシネスから建築は変われる

建築業界にはビジネスシーンに対して、
「闘う姿勢が正しい」「面白くないものができる」「一瞬の流行りもの」
といった考えも一部では残っていると思います。
けれど、今起きていることは今後ずっと続く新しい価値が生まれている瞬間だし、向き合うことで建築の新しい領域を開拓していけると、ぼくは思っています。
このnoteではそれぞれのトピックをざっくり流しましたが、今後それぞれのケースについて、深掘るnoteも書こうと思います。


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