超高齢社会と選挙。認知症有権者が激増する現実。

厚労省の推計では、2025年、つまり来年、高齢者(65歳以上)の5人に1人が認知症になると予測されています。予測とは言え来年のことですから、まあそんなに外れはないでしょう。

高齢者(ここで言う高齢者は65歳以上ですが)は投票率が高い。全ての年代で、もっとも投票率が高いのがこの年齢層です。そしてこの年齢層で、来年、5人に1人は認知症になるのです。

我々医者が認知症と診断するときは、改定長谷川式かMMSEと言うスケールを使ってスクリーニングします。私はグローバルなMMSEを使っていますが、その内容は「今日は何年、何月、何日、何曜日ですか、ここは何県何市のなんと言う病院で、今いるところはこの建物の何階ですか、などという言う時間と場所の認識に始まり、「リンゴ、ハト、電車」という相互に無関係な三つの単語を言ってもらいます。「この三つは後でもう一度質問しますから覚えておいてください」と言ってから100-7はいくつですか?と聞きます。この「7を引く」というのを100から連続五回やって貰った後で、「さて、さっきの三つの言葉はなんでしたか?」と聞くのです。この「単語再生」と「計算」で失点が多く、かつ「図形を再現出来ない」となると「どうやらこの人はアルツハイマー型だ」と予想します。そうしてこのような30点満点の検査で24点以下が「認知症」としてスクリーニングされます。

つまり来年、65歳以上の5人に1人が認知症になるということは、こういうテストで24点未満の人が5人に一人いるという事です。

私が何を言いたいか分かりますでしょうか?

来年から、65歳以上という、もっとも投票率の多い年代層の有権者の5人に一人が、こういう検査で30点満点中の24点以下になるという事なのです。

有権者の5人に1人が、さっき言ったはずの三つの言葉を思い出せなくなるのです・・・来年から。

その人々は、無論候補者の名前とか、どの候補者が何党だとか、記憶出来ない可能性が高いのです。これって、選挙が成り立つのでしょうか。

じゃあ今はどうしているんだ、と言えば、老人ホームには選挙になると投票箱が置かれます。老人ホームに入所している認知症高齢者は全員が有権者ですから。無論、本人は何も分かりません(当然認知症の程度によって違いますが)。だから職員が代筆するのです。どの候補を代筆するかって?当然その施設の理事長が「あの党にしなさい、誰それにしなさい」と指示した党の候補者の名前を書くのです。

まあ今年が来年になったからって、劇的に何かが変わるわけではないでしょうが、ともかく来年から65歳以上のうち5人に1人は認知症、つまり上に紹介したようなチェックシートで30点中24点以下になるのです。で、全員が一人一票。

選挙って、成り立つんでしょうか?

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