アンチワクチン?冗談じゃない!

アンチワクチンの人々に言います。



あなた方はワクチンを嫌い、毒チンなどという珍妙な発言をしますが、そもそもあなた方が今成人してそう言う駄弁を聾(ろう)せるのは、子供の頃あなたの親があなたに決められたワクチンを受けさせたおかげです。あなたは覚えていないでしょうが。



日本では子供に必ず親が受けさせなければならないワクチンが10種類あります。それを受けたから、今あなたは成人して、ネットなどを使ってアンチワクチンだの、毒チンだのと言えるのです。もしあなたの親がそうしたワクチンをきちんとあなたに受けさせなければ、あなたはポリオ、日本脳炎、水痘、ジフテリア、結核などの感染症でほとんど命を落とすか、重大な後遺症を被ってアンチワクチンなどという駄弁をネットで晒せる状態ではなくなっていたはずです。



洋の東西を問わず、世界中の医学は全て感染症との戦いでした。西洋医学だけではありません。中国系伝統医学(日本の漢方も含めて)の偉大な古典「傷寒論(しょうかんろん)」はまさに傷寒という感染症をどう治療するか書いた本です。著者張仲景ちょうちゅうけい)は序文に記しました。



「私の親族はかつて200人以上いた。しかし傷寒が流行して10年の間に、その9割が死に、死んだ人の7割は傷寒で死んだ」。



まさに凄まじい疫病であったのです。こうした疫病に対する治療法が書かれているのが傷寒論であり、この本は今でも中国伝統医学や漢方で極めて重要視されています。



時代が下って金代、モンゴル帝国に都が攻められた時、城内で深刻な感染症が流行しました。城(昔の中国の城は都市という意味)からは毎日無数の死者が運び出されましたが、そのほとんどは戦闘で死んだのではなく、疫病で死んだのです。李東垣(りとうえん)という医者はその治療に当たる中で、「この疫病はどうも傷寒ではない。別の治療法を編み出さないとこれは治療出来ない」と気がつき「補中益気湯」という偉大な処方を作りました。補中益気湯は今の日本ではなんとなく元気がなくて胃腸が弱い人に使いますが、もともとは感染症の薬でした。



さらに時代を下って明代、呉有性(ごゆうせい)という人が「温疫論(うんえきろん)」という仮説を提出しました。呉有性は、「疫病というものはこれまで考えられていたように風寒暑湿など環境要因で起きるものではない。なんらかのものが人から人に感染するのだ」と述べたのです。呉有性は顕微鏡を持っていなかったのでその「なんらかの物体」を特定することは出来ませんでしたが、「感染症」という概念を世界で初めて提出したわけです。



時代が下ってジェンナーが種痘に成功しました。これにより、当時世界中で膨大な人命を奪った天然痘を克服する手段が生まれたのです。種痘はまさに世界で最初のワクチンです。今天然痘は世界で撲滅されていますが、これはまさしく種痘というワクチンが発見されたから達成されたことです。



アンチワクチンの人は自分の肩を見たら良いです。そこにはBCGの跡があるはずです(一定の年齢以上の人のみですが)。BCGのおかげで、最近まで猛威を振るい何百万人もの日本人が命を落とした結核が、現在では非常に稀になっています。BCGは平成15年に義務ではなくなりましたが、それはまさにBCGのおかげで結核が我が国では稀になったからです。しかしBCG廃止により、最近結核は日本でも再び増加傾向にあります。



要するに、感染症を甘く見るんじゃない、感染症に対する人類の戦いを軽んじるなってことです。ワクチン、抗生物質などがなければ、未だに人類は2割しか成人せず、40まで生きるのは稀だったでしょう。そうであれば、毒ちんだなんだという戯れ言を言うことも出来なかったはずです。



ワクチンも抗生物質も、恐ろしい感染症に対し人類が手にした貴重な武器です。素人がネットの根も葉もない情報に乗せられて妙なことを言うのは、過去の人類医学の感染症との戦いを知っているものとしては、遺憾の極みです。



ワクチンのおかげで今生きているくせに!

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