今後の在宅のあり方

リンクの記事は、来年(2025年)、団塊の世代が75歳になり始め、2040年にはなんと国民の3人に1人が65歳以上、すなわち今で言う「高齢者」になることを示している。



こうした中で今後在宅医療・看護・介護をどういう形にすべきか、考えてみる。



まず、来年から75歳以上の人口が猛烈に増える。今75歳で要介護という人は少ないだろうが、その人々がそのまま80歳、85歳になれば、確実に要介護高齢者が増える。



こういう状況の中では、今の「医師が毎月患家を廻って歩く」という訪問診療のやり方は、破綻する。



内科外来で、午前半日で40人、50人を診察するというのはごく普通だ。それが普通であることが良いか悪いかという問題はあるが。



しかし訪問診療で、午前半日10軒回るというのは、極めてタイトだし、そういう訪問診療はかなり雑なものになる。



つまり、要介護老人が爆発的に増える今後数十年において、医師が地域に散らばった患者を車で廻って歩くというのは、すぱりと言うが不効率だ。



一方、在宅看護、介護は今後一層拡大すべきである。今回の診療報酬大改訂で国は在宅について看護、介護の点数を下げたが、これは誤りである。すなわち、今後(と言っても来年からそういう時期に突入するのだが)、訪問診療は主に看護師を主体としてその元に介護士で行うという方向に改めるべきなのだから、医師の個別住宅訪問医療の点数を引き下げ、訪問看護、介護の点数は上げるべきだった。



医師の訪問診療について言えば、今よりさらに要介護老人が爆発的に増えるのであれば、人件費が高い医師がどう頑張っても半日で10人しか診察出来ない個別の訪問診療というのは状況に対応出来ない。だから、今は個別訪問診療が高く、施設訪問診療は安く設定されているが、これを逆転するのがよい。



つまり、要介護老人が今よりさらに膨大に増え、一方家庭の介護力はほとんど0なのだから、要介護老人はよほど金に余裕があって個人でその費用を支払える人を別にすれば、基本施設介護でやらなければならない。訪問診療元年と言われた1986年当時は、「お嫁さん」という人件費0の介護者がいたが、今そんな人はいない。第一、やがて3人に1人が65歳以上になるのだから、働ける人は男も女も外で働いて貰わなくてはならなくなる。家族の介護に専念されては社会が廻らない。



そう考察してくれば、結論はこれからの要介護老人の介護の中心は施設介護だという事になる。従って、介護の場が在宅から施設に移るのだから、施設入居している要介護高齢者の健康管理のために施設訪問する医師の点数は、むしろ高くすべきだ。すなわち、個別訪問診療の点数を下げ、施設訪問診療の点数を上げるのが正解、と言うことになる。



因みに、これを機に老健というものはきっぱり廃止するのがよい。老健は、医者がいる無医村だ。老健の医者は例外はあれどおしなべて臨床能力は低い。また臨床能力が高い医師が老健の施設長になっても、老健という制度の中で医師が能力を発揮する場は極めて限定されている。形ばかり「医師が配置されている」とやるより、老人ホームなどに転換し、医師は外から訪問診療に来るとした方が合理的だ。その意味でも医師の施設も有紋の点数は上げるべきだ。



すなわち、団塊の世代が75歳以上に突入する来年2025年から国民の1/3が65歳以上になる2040年という時期を乗り越えるためには、要介護老人は自宅介護を自費で払える人を除けば基本施設介護、そして医師は施設に月一回往診するという形がベストである。そのために、



訪問介護・看護の点数を上げ、医師の居宅訪問診療の点数は下げ、施設に対する訪問診療の点数は上げる。



これが正解だと考える。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?