【検証レポ】元文芸部員が本気で”うたの日”やってみた結果!!!!
概要
こんにちは。横山航路です。
地方の大学に通いながら細々と俳句や短歌を作っています。
さてこの記事は、うたの日初心者の僕が3週間ほど投稿してみた結果をレポ形式で書いていく中で、うたの日の良さやちょっとした攻略法(?)をお伝えしていくことを目的としています。
すこしでも短歌やうたの日に親しみを持っていただけたなら幸いです。
そもそも”うたの日”って?
うたの日をざっくりと説明するなら「ネット上で毎日歌会ができるサイト」です。
大まかな流れとしては
➀二時間ごとに設定されているお題に投稿
投稿は一日につき一首まで。締め切りまでなら何度でも修正可能です。
どのお題に出すかも結構ポイントだったり……
➁締め切り後24時間以内に投票
締め切り時間を過ぎるとそのお題に投稿されたすべての歌が匿名の状態で並べられます。
それらの歌の中で、良い!と思った歌には音符を、その中で一番良いと思った歌一つにハートをつけて送ります。(もちろん自作にはNG)
ちなみに採点は全てハートの数が基準です。また、投票は義務ではありませんが、投票すると自分にもハートが一つ分入るので積極的に投票することをおすすめします。
また、投稿に関しては一日一首までですが、投票は自分が投稿していない枠にも行うことができます。
(サイトの管理人さんによると、今後試験的に24時間→12時間に変更してみるかもしれないとのことでした。もし今後参加する際は、ぜひ時間をご確認ください。)
➂投稿締め切りから24時間後に結果発表
投票時間を過ぎると結果が発表されます。
このとき、そのお題の中で最多得票の歌を首席=薔薇が咲く、と呼びます。二番目なら次席、三番目なら三席、と呼びます。
また、10点以上を獲得した歌は秀歌と呼びます。
余談ですがこれまでうたの日に投稿された歌の総数は、2023年3月29日18時の段階で67万7388首(多すぎ)、そのうち首席歌は2万6429首、秀歌は1116首となっています。お題や時期によって変動するため一概には比較できませんが、首席歌は上位3.9%、秀歌は上位0.16%だとおおまかに試算できます。秀歌すごすぎる。
この流れで一回の歌会が終わりになります。なんとなく流れをイメージしていただけていたら幸いです。
本題、あるいは挑戦者プロフィール
さて、うたの日についての大まかな紹介を終えたので、さっそく本題に入っていきます。
ずばり、「元文芸部員が本気でうたの日に投稿したらどれだけ首席を獲れるのか」!!!
これをぜひ皆さんに予想していただき、それを踏まえて以下の結果発表を見ていけたらと思っています。
予想のために前提を。
集計期間
2023年3月13日~2023年3月31日
(計19首)
作歌歴
単純計算で2年、ブランクを除くと実質1年ほど
受賞歴
・高校の文芸部時代に県高文連の優秀賞
・県の小中高生短歌コンクールで高校生の部優秀賞
本気度
めっちゃ
参考程度に既発表の作品も載せておきます(宣伝大事)。
ちなみにうたの日の上位層のレベルは結構高く、新鋭短歌シリーズから歌集を出したtoron*さんや西村曜さんもうたの日に投稿しています/いました。
そのお二方以外にも新聞歌壇やうたらばなどへ幅広く投稿している方たちがいて、その方々と日夜しのぎを削っていくような感覚です。
あとこの先の19首回顧を見ていただければわかるんですが、明らかな問題作もいくつかあります。
しかしそれらも含めて全部本気です。
提出するときは毎回首席を獲れるだろうという確信に満ちているのですが、後から見返すと恥ずかしくて死にそうになることがあります。それも予め織り込んで考えていただけると助かります()
さて首席数の予想は立ちましたか?
ちなみに僕の予想は19首です←
日々の記録、あるいは反省の弁
以下、一日ごとに投稿歌、投票結果、所感のように書いていきます。
最後に結果はまとめるので「いちいち読むのめんどくさい!」というせっかちもいいから全部読んでくれ方は軽く読み飛ばしてもらって大丈夫です。
ちなみにうたの日では岳琉という名前で投稿しています。様子見で一回だけ捨て名で参加してみたら意外と楽しくてそのまま~っていう。
うたの日1日目
♡1+1 ♪11
一番最初の投稿にしてうたの日の洗礼を受け、天狗の鼻を根元からへし折られた僕は、この日から他の時間帯の選歌も行うことで早くうたの日の傾向を掴もうと試みます。
うたの日2日目
♡3+1 ♪11
他の枠の傾向からリアリティ系の相聞が強そうとの予想を立ててさっそく出詠するとやはり高評価で三席に。ただほとんど恋愛経験がない僕は相聞を作るのが苦手なのであまり使えない情報に。
うたの日3日目
♡1+1 ♪14
「実」というお題に結構苦戦しました。他の枠の首席歌などを見ていく中で、やっぱり「お題からどれだけ離れられるか」「他の人と似た発想にならないように詠むか」が重要になりそうだなとは感じていて。ただそれを「実」というお題でどう実現できるか、っていうのがなかなか難しかった印象です。
そんな中、私が尊敬するうたの日erの一人である林あかりさんが
という僕の中ではもうこれ以上ないってくらいの模範解答を叩き出していました。お題の昇華の仕方、見立て、韻律、どれをとっても巧みな歌だと感じます。ちなみに首席率18%超えの素敵な方です。
うたの日4日目
♡9+1 ♪16
初首席&初秀歌!!!!!!
この日は全ての枠のお題が「桜」という少し変わった日で、いつも以上にお題との距離感が重要な日だったように思います。その日「桜」の題に対して提出された354首の中でワイパーを絡めた歌は他に見当たらなかったので、そこが一つの大きな勝因だったかもしれません。
さて、初めての首席を秀歌で獲るという偉業(?)を成し遂げて再び天狗の鼻が伸びていく岳琉。しかしそんな彼を長い長い暗黒期が襲い掛かるのだった……。
うたの日5日目
♡3+1 ♪12
個人的には会心の出来でしたが、結果は首席と1点差の次席タイ。ただやはりリアリティ系の相聞は強いですね。素敵な評をいただけたのも本当に嬉しかったです。
うたの日6日目
♡1+1 ♪5
出ました問題作。ネガティブなイメージの強いお題は距離感の取り方もなかなか難しく、最終的に「苦」を直接使うのではなく「古と新、苦と薪」という対比に着地しましたが、その発想の生かし方が甘かったように思います。
うたの日7日目
♡2+1 ♪9
個人的には漢字一字の詠み込みが最も考えやすいお題だと思っています。
今回の「等」のお題で言えば、”等しい”、”等しくない”、”など”、”平等”、”優等生”、というように様々な使い方ができる中で、どれを選択してどう世界を広げていくのか、みたいな。
短歌を上手くなりたい!っていうときの練習法としても、一字詠み込み&前向きに詠むっていうのは結構ありなんじゃないかと思っています。
秀歌は結構前向きに詠まれた歌が多いですし、そもそもうたの日のシステムで首席や秀歌を狙っていくには誰かからの「一番好き」を獲得していくことが前提にあるので、そういった面でも前向きな歌は有利な気がしています。
うたの日8日目
♡2+1 ♪15
他の枠の結果を漁っていた中で「くじら」を詠み込んだ凄い歌があり、それに対する対抗心から「くじら」を中心に詠もうと決めて作った歌です。
結果的には三席タイ。
うたの日9日目
♡3+1 ♪12
次席タイ。やや観念的な相聞を出してみました。
僕の中では「右」というお題に対するベストに近い応答だと考えていたのですが、それでも首席には届きませんでした。
うたの日10日目
♡2+1 ♪10
自信を持って出した歌だったんですが、「寄せ書きの白」という着想の歌が他にもあったことが伸び悩んだ原因のように思います。
うたの日の投票画面って毎回ランダムに並べ替えられるんですよね。そうなると、仮に自分の歌がほかの類想歌より後に掲載されていたとき、投票者目線では自分の歌の方が二番煎じになってしまうっていう大きなディスアドバンテージを背負わなきゃいけなくなる。
「お題からいかに離れるか」の重要性はここにある気がします。
ちなみに全19首のうち、既に折り返し地点になってしまいました。これまでの10首のうち首席はわずか1回。もし予想段階で首席10首!とか予想していただいていた方がいたら泣いて謝りたいくらいです。19首中10首が首席とか獲れる訳ないだろいい加減にしろ
うたの日11日目
♡1+1 ♪15
出ました二つ目の問題作。
こうなったのはお題の選択ミスが原因です。せっかちな僕はとにかく早く結果が知りたくて、基本的に7時枠か9時枠に出すようにしていました。そのため、今回のように自分に合わない題でもどうにか出そうとして……という感じです。
とにかく「自分に合ったお題を選ぶ」ことの重要性を改めて実感しました。ただ、今後もハッシュタグを使った短歌については引き続き挑戦していくつもりです。(岡野さんの走馬灯の歌への対抗意識)
そのように僕がえらい目に遭った枠で、お題をひときわ巧みに昇華させていたのが先程も紹介したtoron*さんでした。
ちなみに僕が一番好きな歌人を挙げろと言われたとき、二人挙げるうちの片方はtoron*さんだったりします。喩や景の立ち上げ方が本当に巧みでとても尊敬しています。
うたの日12日目
♡8+1 ♪7
首席!!!!!!
これまでの反省を生かして狙いやすい枠で勝負した結果、二度目の首席を獲ることができました。枠選択、大事。
うたの日13日目
♡4+1 ♪7
2日連続首席!!!!!!
まさかまさかですよ。長い不調を乗り越えて通算3回目の首席獲得。
「ドラマ」の枠に投稿しようと決めてからメロドラマという語が頭から離れなくて、結局それに引きずられる形で作歌したのですが、メロドラマを使った歌が他に無かったことも相まって成功してくれました。
うたの日14日目
♡0+1 ♪11
おとの日……(他の人からの♡が0で♪が10以上の歌のことを指す)
これも後から見直すと「何を考えていたんだ」と頭を抱えたくなるような歌ですが、これは「隠語」というお題に囚われすぎた感じがあります。
うたの日のお題って、基本的に「お題の詠み込みは自由」なんですよね。だから例えば「桜」というお題でも必ず「桜」という語を三十一音の中に入れる必要はないし、「隠語」というお題でも「隠語」という語を入れる必要はないんです。
ただ、締め切り前の僕はどうしても「隠語」という語を入れようと考えて、結果へんてこな感じになってしまったっていう形です。何事もそうですがこだわりすぎないことって大事ですね。
ちなみに締め切り前の僕は、擬音をぽこぽこにするかぷくぷくにするかで結構真剣に悩んでました() もちろん短歌を詠むにあたって細かいところまで考え抜くっていうのは絶対に大事なことなんですが……方向性……。
うたの日15日目
♡0+1 ♪7
2日連続で♡0……。ここまで読んでくださっている皆さんの中には
「♡って結構簡単に獲れるもんなんじゃないの?これまで0とか無かったじゃん」
とお思いの方がいらっしゃるかもしれません。
そんな訳ねーだろ!!!
試しに2023年3月16日分を対象に集計してみたのですが、全354首のうち約半数である175首が無点歌(他の人から♡0)でした。(ただいつもより枠数の少ない日だったので、普段だとこれよりは無点歌の割合が低いかも)
このことからざっくりですが「全体の半数から3分の1は無点歌」と言えるでしょう。
つまりハートもらえるだけでえらいってこと!!!
うたの日16日目
♡4+1 ♪4
3回目の次席タイ。お題が「さあ」だったんですが、僕は逆張り陰キャすこしひねくれているので、「さあ」を呼びかけ以外の形で使うことを考えて、最終的に掲歌に辿り着きました。
余談ですがこういう「お題の本来の使われ方から外した歌」っていうのは僕だけに限らずうたの日の中では往々にしてあるようです。例えば「どんな」というお題に”マドンナ”を使ったり、「また」というお題に”たまたま”を使ったりみたいな。こういう部分も僕がうたの日を好きな理由の一つだったりします。
うたの日17日目
♡2+1 ♪7
4回目の次席タイ。いつも以上に首席の手応えがあった歌だったので、結果を見たときはまあまあダメージが入りました。
一応後から考えたら「追い越した日に」の方が良かったんじゃないか、とは思うのですが、そこを直していたら首席を獲れていたかと言われると何とも言えないものがあります。
うたの日18日目
♡3+1 ♪7
三席タイ。前の日のフォーマットを再利用しながらリベンジできないか、と考えて作ったんですがなかなか結果には結びつきませんでした。とても素敵な評をいただけたのはありがたかったです。
これは裏話なんですが、この日はもともと「兎」の枠に参加しようと思ってずっと構想を練っていたんです。ただ「兎」と言えば「寂しいと死んでしまう」「月で餅つきをしている」「二兎を追う者は一兎をも得ず」の三つの歌が圧倒的に多くなるだろうという予測は出来ていて。
これまでも何回か出てきたように、「発想が被ることは相当な不利」というのは経験則として理解していたので、そのベタな三つを避けながら、かつ兎を登場させる必然性を持たせながら、という二点を考えなければならないという結論に達しました。
無理でした(笑)
後から「林檎をうさぎの形に切る」というモチーフで詠めば被らなさそう(実際被ってなかった)だと気づいたのですが、締め切り前の僕が思いつかなかった時点で負けです。
うたの日19日目(検証最終日)
♡1+1 ♪5
検証最終日をふさわしい見事な成績……どころか箸にも棒にも、という。個人的には決して悪くない歌だと感じていたのですが、端正で抒情的な歌が評価されやすいフィールドでは、コメディチックな歌はやや分が悪いということの証左なのでしょうか。
で、結果は?
さて、これまで長々と振り返ってきましたが、結論としては
「元文芸部員が本気でうたの日始めたら、19日間で3回首席を獲れて秀歌も獲れた!!」
という感じになりました。
細かく見ていくと秀歌1回、首席3回、次席4回、三席3回になります。19首のうち過半数は三席以上に届いていることを考えるとそこまで悪くはない……?
もっと詳しい内訳は以下の画像を参考にしてみてください。
振り返り、あるいはうたの日攻略法
僕が今回参加した経験を通じて、今後うたの日に投稿する方に向けて役立ちそうな情報を、完全に僕の主観で挙げていくとするなら
出来る限り全力で類想を避ける、お題から離れる
空いてる枠に不安作<<<混んでる枠に自信作
積極的に他の枠の投票に参加する
秀歌を全部読んでみる
好みの人の首席歌を全部読んでみる
定型意識の高い口語新かな派が主流
家族の歌、リアリティ寄りの相聞は比較的有利
明るい歌、共感&実景寄りの後ろ向きの歌が比較的有利
この中でもより重要だと感じているのは、他の枠の投票をすることです。
自分の枠の投票はもちろんなんですが、他の枠にも投票することで、「投票者側の心理」を理解して自分の作歌に生かせるようになったり、うたの日の傾向を肌感覚で掴めるようになったり、面白い歌や新たな発想により多く出会えるようになったり、と結構お得です。
また、サイトの左下部にあるサーチ機能を利用して、秀歌や好みの人の首席歌をまとめて読んでみるというのももの凄く効果があるように思います。実際僕もこの機能で秀歌やtoron*さんの首席歌を読み漁りました。
というか色々言ってますが、もちろん僕自身もまだまだ人様に教えられるほど短歌が上手いとは到底言えません。少なくとも首席を100回=百薔薇を達成するまでは、うたの日で精進させていただこうと考えています。
最後の最後に
これまでうたの日について、実際に挑戦してみた結果や攻略めいたことなどを長々と書いてきました。その中で、企画の趣旨も相まって「首席を獲るには」「♡を獲るには」という目線から述べていくことが多かったように思います。
しかし実際は、うたの日も短歌ももっともっと自由なものです。三十一音で気持ちを伝えたい、ということにそもそも順位もへったくれもないんです。
もしこの記事を通して、すこしでもうたの日や短歌に興味を持ってくださった方がいたら、是非うたの日のサイトへ足を運んでみてください。面白そうなお題にふらっと投票してみたり、その日の首席歌を眺めたりしてみてください。
きっと素敵な出会いがあると思います。
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