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学校で窓の外ばかりみていた私のための、キャリアの話

「はいそこ何してる」

この声が飛んできたらだいたい私だ。前にいるクラスメイトがこちらをチラチラ見ている。私は、お弁当の匂いが残る教室の窓から外をながめて、こんもりした緑の奥に電波塔の頭をみつけてテンションがあがっていたところだった。「どうしてクラスで決めたことができないのかしらね」と面談で教師がため息をつくたび、自分でもどうしてなんだろうと思うしかなかった。

着心地の悪い服を着続けるような12年間の後でご褒美のような美大時代を過ごしたあと、リクルートに就職した。懐かしいあの感覚が蘇る。

「ドラゴンボール」VS「ぐりとぐら」

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「だからさ、昨日の自分より今日の自分のほうが強いでしょ?そうやって強くなっていった1年後に、どんなことができるようになりたいかってこと。ドラゴンボールみたいに。」

もどかしそうに上司に目標設定の面談をされていた。アイディアを出すのが楽しくて営業成績もよかった1年目、君がこんなところでつまづくなんてという雰囲気だった。最後のドラゴンボールのくだりで思ったことを素直に言ってみた。「すみません、私の人生の進め方は『ぐりとぐら』形式なんです。」

毎日ブルーベリーをつんだりカステラを作ったりやりたいことにチャレンジしながら忙しくしたいけど、何かと戦ったりブルーベリーのレベルがアップする構想はなかった。結果おいしいパイが焼けるようになってもいいけど、変身なんてもってのほかである。

この面談を終えて私はやっと気づいた。会社のシステムは努力や行動量を積み上げてレベルがアップした喜びが得られるようにできている。やりたいことがたくさんあったり、レベルアップが第一の目標ではなかったりすると齟齬が起きてお互いもどかしい。

窓の外ばかり見ていたのには理由があったんだ。
クラスにひとりはそんな人がいただろう。この話は、そんな私ための働き方のメモである。

1.会社は水槽のようなもの 


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会社は水族館の水槽のようなものである。大きな魚から小さな魚までが集う大きな水槽もあれば、熱帯魚だけを入れた小さな水槽もある。私が知っておかなければならなかったのは、それぞれ水質や温度、魚の種類などのルールがあるということだ。なぜならそのルールに順応する力がなかったり、順応しようとするとふつうより多大なエネルギーを消費するからだ。

会社に入る時、その大きさや派手さだけに目をとらわれないで、どんなことが評価されるのか、どんな居心地か、そこで一番幅をきかせているのはどんなキャラクターなのかをよく見て選ぶ。間違ったところに入ったなと思ったら出ていい。ちなみに水槽の外は海なのだがこれはこれでけっこう厳しい。私の一社目はリクルートだったのだが、運良く稚魚の間、大きな水槽で遊ばせてもらって感謝している。

2.抜け道を探そう

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カメラマンになりたかった。そのために美大に行ったのに、卒業時に残ったのは奨学金の返済とアルバイト生活でアトピーがでた体。スタジオマンになれそうもないのでカメラマンになるのを諦めた。それが今仕事の半分くらいは写真を撮っている。営業やウェブの仕事を経て、編集の仕事でできたつながりを生かして写真の仕事もやってきたのだ。

なりたいものややりたいことを叶えるためには、必ず抜け道がある。
抜け道というのは、みんなが道だと思っていない道のこと。邪道だと言われることは覚悟の上で、私にとっては抜け道のほうが効率がいい。みんなが道と認めているプロセスには、学校と同じ努力と行動量の積み上げが待っているからだ。目的がはっきりしたら、なるべく自分らしい手段で達成したほうが楽しい。

3.他人の評価はどこ吹く風

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だいたい仕事で成功するというと、お金を稼ぐ、社会貢献度が高い仕事をする、えらくなる、名前がある仕事をする、などの軸で語られることが多い。これは全く悪いことではないけれど、電波塔を見つけてテンションがあがってる時点でそういうことに興味が持てない可能性も高い。その場合は、自分を評価する軸と興味のない軸を自覚しておいたほうがいい。

いいなと思えるものを作れたこと、一生の思い出になりそうな仕事、人に喜んでもらえる仕事が私の評価できるポイント。社会貢献度の高さや名前がある仕事にはあまり興味がないことを知っておく。そうすると、「全然有名じゃない人撮ってて楽しい?」なんて意地悪な質問が飛んできても「それが喜んでもらえてるからいいんだな〜」と清々しく返すことができる。

幸福度は意外と他人の意見で急降下するので、大多数と同じ評価軸を持てない場合は自分のなかに持っておくしかない。それをつきつめていると意外とお金や社会貢献、出世、名前がついてくるということもある。

「またバレちゃったね」
授業中注意されてふてくされている私にクラスメイトは優しかった。みんなと同じ軸を持てていなくても、気にかけてくれる人もいる。この「#いい感じに働くTips」に誘ってくれた人事の青田さんもそのひとりだ。有名大学卒の華々しいメンバーにまじって新卒の私を採用してくれた青田さんには、感謝していることがある。

それは手加減なしに社会のお作法を叩き込んでくれる環境に放り込んでくれたことだ。後になればなるほど、そこで学んだ基礎がありがたいことに気づいた。この話で紹介したtipsは、王道のスキルを知っていることでもっと最大化する。それはちょっと変わった私を放っておきながらも優しくしてくれた大多数のクラスメイトへの礼儀のようなものである。



この話は「いい感じにはたらくTips Advent Calendar 2019」の5日目です。クラスで窓の外を見ていなかった人は他23日分のみなさんのTipsをぜひ読んでみてください。最後に、参考までに私のめちゃくちゃなキャリアを紹介しておきます。

武蔵野美術大学卒業後、新卒でリクルートコミュニケーションズに入社。その後CAMPFIREの立ち上げメンバーとして5年間チーフキュレーターをつとめる。株式会社モーフィングにて美大生むけメディアPARTNERの編集長、株式会社マイナビにてマイナビウーマンの編集長をつとめたのち独立。現在はheyでheyMAGAZINEの編集や社内カメラマンをやりながらロックバンドLUNA SEAのライブ撮影を手がける。単著「クラウドファンディングストーリーズ」を青幻社より2019年9月に発売。

窓の外ばかり見ていた私でも、こんな謎のキャリアがつくれたんだから、いい感じに働くのは工夫ひとつで誰にでもできるのかもしれません。

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