アドラー用ヘッダ

自分のライフスタイル辞書によって感じ方、考え方、行動の仕方を決めている。(ライフスタイル論#02)

2017年2月27日

(月曜日はアドラー心理学のトピックで書いています)

前回は「ライフスタイル論」の1回目として次のことを書きました。
 1. 性格やパーソナリティを捉える方法には、類型論と特性論がある。
 2. 類型論の例として「ユングのタイプ論」、特性論の例として「ビッグ・ファイブ」が挙げられる。

こうした特性論的な性格の捉え方は現代心理学が取っている立場ですが、アドラーのライフスタイル論はこれとは一線を画しています。アドラーが考えたライフスタイルとは「その個人にユニークで一貫性のある、思考・感じ方・行動の統一された動き方」(Griffith & Powers, 2011:63)ということです。

私たちは日々の生活の中でさまざまな課題にぶつかります。その場面や状況によって、さまざまに感じ、考え、行動します。しかし、それは自分の中では一貫性のある感じ方であり、思考であり、行動なのです。その一貫性があるからこそ「自分は自分として生きている」と思っているわけです。その一貫性のある動き方をライフスタイルと呼びます。

ライフスタイルとは私たちの動き方(Movement)なのです。その動き方は次の3つのことを参照しながら自分で決めていきます(Griffith & Powers, 2011:63)。
 (a) 対人関係の作り方についての方略
 (b) 自己・他者・世界についてのスキーマ
 (c) 自分で作り出した自己理想の追求の仕方

図 ライフスタイルのしくみ

最初の「(a) 対人関係の作り方についての方略」はまわりの人たちとどのように付き合っていくかという作戦が書かれたものです。次の「(b) 自己・他者・世界についてのスキーマ」は自分と他者と自分のまわりの世界をどのように考えているかということが書かれたものです。最後の「(c) 自分で作り出した自己理想の追求の仕方」は自分がなりたいと思っている自己理想を目指してどのように追求していけばいいのかが書かれたものです。

このようなことが書かれたものを仮に「ライフスタイル辞書」と呼ぶことにしましょう。私たちは日々の生活の中で感じ、考え、行動していくわけですが、それはすべて自分の「ライフスタイル辞書」を参照しながら決めているのです。このライフスタイル辞書は自分の成長の過程で作り上げてきたものなので、ごく自然に、そして何の苦労もなく参照することができます。ですからその存在すら意識することはありません。とはいえ、私たちは日々ライフスタイル辞書を参照しながら、感じ、考え、行動しているのです

ではこの「ライフスタイル辞書」はどのような形で書かれているのでしょうか。もし特性論的な立場を取るとすれば、「外向性:8 神経症傾向:5 協調性:6……」というような数値で書いてあるというでしょう。外向性が高ければ、他者に対しても課題に対しても積極的に考え、行動する確率が高くなるでしょう。つまりその数値はその人の行動傾向を予測するものとして使えるわけです。これが特性論的な見方の長所といえます。

アドラー心理学では、ライフスタイル辞書は数値では書かれていないという立場を取ります。数値ではないとすると一体どういう形で書かれているのでしょうか。

【引用文献】

Griffith, J. & Powers, R. L. (2011) The Lexicon of Adlerian Psychology: 106 Terms Associated with the Individual Psychology of Alfred Adler Second Edition, Revised and Expanded. Adlerian Psychology Associates, Ltd., WA, USA

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