4-お勧めの本

【本】中村文子、ボブ・パイク『講師・インストラクターハンドブック』:授業・研修を設計実施する人のための具体的なノウハウを提供。

木曜日はお勧めの本を紹介しています。今回はこの本を取り上げます。

中村文子、ボブ・パイク『講師・インストラクターハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター, 2017)

■要約

研修や授業を行う、講師、インストラクター、トレーナー、教師のために、楽しく、ためになるような研修・授業を設計し、実施するための具体的なスキルとテクニックを提供する。10人から1000人規模のどんな研修やセミナーでも使うことができる。

■ポイント

すでに講師として活躍している人であれば、実行していることも多いかもしれないが、自分のセミナー、研修、授業を1から見直してみるためにも、この本を通読する価値がある。

たとえば、研修の中で参加者同士の対話が必要であることは、89ページから解説がある。またパイク得意の「90/20/8の法則」については93ページから紹介されている。

研修・授業のコンテンツの組み立てを考えるには、「KSAフレームワーク」が有用だ(102ページ)。これは内容を、Knowledge/Skill/Attitude(知識、スキル、態度)に分けてその最適な教え方を考えるもの。知識を教えるには人の記憶の仕組みについて知っておく必要があるし、スキルを教えるにはその練習方法が大切、また、態度を教えるためには感情に働きかける必要がある。

研修でよく取られる方法は、理論から入るものだけれども、そうでない方法をレパートリーとして身につけておくことが大切。たとえば「EATフレームワーク」(121ページ)。これは、Experience/Awareness/Theory(経験→気づき→理論)の順番で導入して行くものだ。まずそれぞれの経験から入っていけば、わかりやすいし、身近な問題として考えさせることができる。

参加者に適度なストレスをかけることは、成果を得るために必要なことだ(218ページ)。それには、時間的なプレッシャー、役割を与えること、チームに対する責任を感じてもらう、競争的要素を取り入れるなどの方法がある。こうした考えも、参加者をアクティブにするための工夫として身につけておきたい。

この本でインストラクショナルデザインについて関心が高まったら、私の本を読んでいただけるとわかりやすいでしょう。

向後 千春『上手な教え方の教科書 ~ 入門インストラクショナルデザイン』(技術評論社, 2015)

今、この本の続編を考えているところで、より具体的なノウハウとしてのインストラクショナルデザインを提示したいと思っています。そのためにもこの本をまずお読み下さい。

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