9-号外_バラ

「感情論」2本(2017年8月〜9月のnote記事より)

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今回は、2017年8月〜9月のnote記事から、「感情論」2本をまとめてお届けします。

07 怒り感情は「今目の前で起きていることについて何か問題がある」ということを知らせるために自分が起動するのです。
08 怒り感情が起きたら、それをやり過ごしたあと何か問題なのかを考えるトレーニングをする。

07 怒り感情は「今目の前で起きていることについて何か問題がある」ということを知らせるために自分が起動するのです。

前回は、過去の出来事に対して起動する「後悔」という感情を取り上げました。

後悔感情は、アクティブ(能動的)傾向の人であれば、「あのときこうしておけば良かった」と考えて、自分がその行動を取らなかったことを悔やみます。これが強くなると、自分の思う通りにしてくれなかった他者を怨んだり、行動できなかった自分を「怨む」という感情に変わります。

一方、パッシブ(受動的)傾向の人であれば、「あのときそうしなければ良かった」と考えて、自分がその行動をしてしまったことを悔やむのです。この感情が強くなると、「罪悪感」という感情に変わります。

いずれにしても、後悔感情は過去の出来事に問題があったということを知らせるために起動します。それは、私たちが過去の情報から何かを学ぶためです。ですから後悔感情が起動されたということは、過去の情報を参照せよということを自ら指示しているのです。過去の出来事を思い出し、そこから得られることを現在に活かせばよいわけです。それで後悔感情の役割は終わりです。

未来については不安感情が起動され、過去については後悔感情が起動されることがわかりました。そして、現在のことについては「怒り」というネガティブな感情が起動されます。怒りもまた「今目の前で起きていることについて何か問題がある」ということを知らせるために自分が使っていると考えます。

私たちは自分の一部を「道具」として使います。たとえば、「頭(脳)を使う」「手を使う」と普通に言いますし、「心を使う」という言い方もまったく不自然ではありません。しかし、感情については「感情を使う」というよりは「感情に支配される」という表現の方が自然です。ただし最近では「感情労働」という名称で、接客業や医療、看護、介護職など対人の業務において、「感情を使う」業務であるためのストレスや精神的負担が注目されています。こうした業務では、本心はどうあれ、仕事としてポジティブな感情を装わなければならないところに問題があります。

不安や後悔や怒りといったネガティブ感情は、一般にはそれに自分が「支配される」ものと捉えられています。しかし、アドラー心理学では、たとえ意識的ではないとしても、自分がその感情を「使っている」とするのです。この前者を「所有の心理学(Psychology of possession)」と呼び、後者を「使用の心理学(Psychology of use)」と呼んでいます。

たとえば「あの人は怠け者だ」というとき、一般には「怠惰」という性質がその人に所有されていると考えるわけですが、アドラー心理学では、その人は何かの目的のために「怠惰さ」を使っていると考えるのです。ですから、その人に怠惰という性質が備わっているわけではないのです。そうではなく必要なとき、怠惰さを使うのです。これがアドラー心理学独特の人間の見方です。

【参考】「所有/使用の心理学」についての簡潔な解説と短いビデオはこちらです(英語)。
https://www.adlerpedia.org/concepts/111

08 怒り感情が起きたら、それをやり過ごしたあと何か問題なのかを考えるトレーニングをする。

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