教える技術ヘッダ

発表を聞いたらコメントシートに書くというシステムを参加者全員が共有しているということが文化なのです。

2017年1月24日

(火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています)

数日前にゼミ生の研究発表会が終わったところです。研究発表会では他のゼミ生の発表を聞くだけではありません。発表を聞いたら必ず「コメントシート」に記入して、発表者に渡すというシステムがいつの年からか確立しました。

コメントシートは下のように印刷されたA5判の用紙です。これを参加者が十数枚持って、発表を聞くたびに記入します。そして発表者に渡すのです。

どんなコメントであっても書いてもらうと、発表者はうれしいですね。発表を聞いてくれた全員からもらえるので枚数もたくさんになります。

発表者はこうしたコメントを読んで、自分の発表のどこを改善していけばいいか、またこの先の研究をどのように進めていけばいいかのヒントをもらうことになります。

発表を聞いたらコメントシートに書くというシステムを参加者全員が共有しているということが、大げさに言えば「文化」を作るということになるのだと思います。コメントシートそのものはただの「道具」に過ぎないのですが、その道具をきっかけにして「行為」を誘発し、それが文化を作っていくのです。その文化を「思想」と言い換えてもいいかもしれません。

チャートとして書いてみれば下のようになるでしょう。

思想:「ゼミ生はお互いに協力して研究を進めていこう」
 ↓
 (思想を道具とシステムで具体化する)
 ↓
道具:「コメントシート」
 ↓
 (道具が行為を誘発する)
 ↓
行為:「聞いた研究発表へのコメントやアドバイス」
 ↓
 (行為することによって考え方が少し変わる)
 ↓
思想:「ゼミ生はお互いに協力して研究を進めていこう」

前回の記事でこんなことを書きました。

研究は1人ではできません。自分が耕すべき領域を見つけたら同志を募ってみんなで耕すべきです。そうやって人類は進歩してきたのです。そうした人たちと仲間になりましょう。研究上の情報交換を活発に行って、協力し合いましょう。そうやって自分自身も成長していき、同時に自分が大切にしている研究領域全体が進歩していくのです。

こうした思想をコメントシートという道具で表現しているわけです。

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