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【本】市川尚・根本淳子編著『インストラクショナルデザインの道具箱101』→インストラクショナルデザイン入門の1冊目として実用的

2017年3月9日

(木曜日はお勧めの本を紹介しています)

市川尚・根本淳子編著『インストラクショナルデザインの道具箱101』(北大路書房, 2016)

■要約

インストラクショナルデザイン(ID)とは学びの「効果・効率・魅力」の向上を目指した技法とモデルの総称である。それを101個集めたこの本を眺めて、自分の現場に導入していけばあなたの教える技術は高まるだろう。

■お勧めのポイント

IDの技法とモデルを101個も集めたら、それをどのように分類、構造化して示すかというところが本を作るポイントになるだろう。この本では、監修をしている鈴木克明氏の「eラーニングのレイヤーモデル」を援用して、うまく分類している。

レイヤーモデルは以下の5つのレベルからなっている。

・レベル-1:いらつきのなさ(精神衛生上の要件)【技法例】学習環境分析
・レベル0:ムダのなさ(内容の要件)     【技法例】ニーズ分析
・レベル1:わかりやすさ(情報デザインの要件)【技法例】形成的評価
・レベル2:学びやすさ(学習効果の要件)   【技法例】9教授事象
・レベル3:学びたさ(魅力の要件)      【技法例】ARCSモデル

レイヤーモデルを使って、自分の「教える・学ぶ」の現場を見てみると、その行為全体がシステム的に構造化されたものとして見えてくるだろう。教え方の工夫を単独で導入したとしても、それだけで何かが起こるわけではない。それが「教える・学ぶ」プロセスの一部として有機的に組み込まれたとき、初めて効果を発揮するのである。

この本の良いところは、レイヤーの高いレベル「魅力の要件」からスタートして、一番低いレベル「精神衛生上の要件」にさかのぼった順に項目を並べているところである。これによって読者はIDの一番面白いハイライト的なところから読んでいくことができる。ページが進むにつれて、根源的なレイヤーに進み、どうやって学習者のいらつきを最小限にするかということが大切であることを再認識するだろう。

この本を読んで、何かを教える立場にある人が「経験と勘と度胸=KKD」ではなく、データと実証に基づいた「インストラクショナルデザイン(ID)」を常識として身につけてほしいと願っている。

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