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(085) 入門/中級/熟達の3ステージモデルとその意味

2020年10月21日(水)

『世界一わかりやすい教える技術』の新装発売を記念してZoomセミナーを、11月8日(日)と11月19日(木)に開くことにしました。詳しい情報と参加方法は下の記事をご覧ください。

このZoomセミナーのテーマは「入門/中級/熟達段階の上手な教え方」としました。「教える技術」を考えるときには、いろいろな切り口が考えられます。これまで私は、教える内容によって「運動技能/認知技能/態度技能」という3つの分類を考えて、それぞれの技能の効果的な教え方とその背景理論を提示してきました。

今回のセミナーでは、この切り口を「入門/中級/熟達段階」のように学習者がいまどの段階にいるのかということをキーにして、効果的な教え方というかコツを考えてみようという視点を取りました。

・入門/中級/熟達というステージの区分け

まず、「入門/中級/熟達段階」というステージを区分けする基準は何なのかということに疑問を抱かれる人が多いでしょう。これは、何ができるようになったらこのステージというようなコンピテンシーベースの基準ではありません。もしそうしようと思ったら、あらゆる領域と技能についてこのような基準を作らなくてはなりませんので、実質的に不可能です。

そこで、技能的な基準に基づく区分けではなくて、学習者が何を求めるかということに注目してステージを区分けしてみたいと思います。具体的には、入門段階から中級段階への移行は、すでに確立したコースを受けて成功体験を積むことからスタートして、切磋琢磨する仲間を求める段階への移行とします。そして、中級段階から熟達段階への移行は、良い師を求めて、選んでいく段階への移行とします。

つまり、入門段階では、よく設計されたコースであれば、基本的な技能は誰が教えても身につけることができます。中級段階では、先生やコースの中で学習するだけでは不十分です。自分の技量を上げるためには、一緒にトレーニングしてくれる仲間あるいはライバルといえる仲間が必要です。競争仲間を作ることによって、自分の技量は大きく進歩します。逆に言えば、競争仲間を作ることができなければ、いつまでも先生の元で習わなければなりません。しかし、それは急速な進歩を生み出すことができません。

そして、熟達段階では再び師のもとに戻ってきます。しかし、それは入門段階の先生ではなく、学習者が超えるべき師です。そしてこの段階では、その師からほぼ個人指導を受けます。ですので、その師は自分の目標となる人です。それを自分で選ぶ必要があるのです。目標となる師を自分で選びたいと思うようになることは、その人が熟達段階に入ったことを示すものです。

下の図は以上を図式化したものです。

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