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反転授業の設計と実践(Part 5 完結)

2016年12月31日

■質疑応答

司会 それでは、向後先生、あと、ご参加いただいた先生方、ありがとうございました。これから10分ほど質疑応答があります。せっかくの機会ですし、このような、まさに発表、プレゼン、われわれが学生に促しているものを体験してみて、そこから活用できないかと考える機会ですので、先生のほうから、まずフロアのほうに、何かご質問など、何かあれば投げかけていただいても結構ですし、フリーでも結構かと思いますが、どちらがよろしいでしょうか。

向後 では、フリーでお願いします。

司会 はい。それでは、今日の内容に関して何かご質問などおありの先生方がいらっしゃれば、挙手でお願いいたします。どなたか。はい。では、若本先生、お願いします。

■グループワークがうまくいくためには

若本 英語英文学科の若本です。すばらしいお話をありがとうございました。

 特にグループワークのことですが、私も大人数でグループワークをやっていますが、うまくいくところといかないところがあります。たとえば、固定すると非常にうまくいくグループと、たとえば、よく休んだり、ディスカッションがうまくいかなくて崩壊するようなグループが出てくるわけですが、そのようなところで、何かアドバイスといいますか、喝を入れるとか、うまくいくような何か特効薬があったら教えていただきたいのですが、お願いします。

向後 ありがとうございます。提案しましたように、教員のレクチャー部分をeラーニングに回して、教室全体をグループワークで設計しようとすると、グループワークがうまくいくかいかないかが死活問題です。ですので、私も200人、300人のグループワークをコントロールするときに、常に全体を巡回しながら、うまくいっていないグループがあればそれを発見して、何らかのてこ入れをします。びっくりするのは、4~5人のグループなのに、1人寝ている場合があります。4~5人のグループでやっているのによく1人で寝られるなと思いますが、そのような場合も見逃さずに、前の日に徹夜したり、そのような事情があったのでしょうから、肩をポンポンとやって起こしてあげたり、そのようなことします。

 内容については、うまくいかないケースは、大体チームワークがとれていないケースが多いです。非協力的なメンバーがその中に1人でもいると、グループの雰囲気が悪くなってしまって、他の人も諦めてしまうことがあります。できるだけそのようなところに入って、TAも含めて、巡回して、うまくいくように、「協力的にやろうね」という形でやるしかないです。

 それから、グループは大体、2週か3週で編成し直しします。毎回編成すると大変なので、3週間やってまた新しいグループを編成します。万が一、雰囲気の悪いグループに当たってしまったとしても、3回我慢してもらって、また新しいグループでやってもらう形で許してもらおうかという、それぐらいの工夫でしょうか。

若本 ありがとうございました。

司会 はい、ありがとうございました。今の若本先生のように、具体的に、先生方の取り組みの中で何かあれば、ぜひ、この機会ですので、よろしくお願いします。その他、どのような質問でも結構ですので、よろしくお願いします。はい。

■eラーニングビデオ作成の工夫

松谷 ありがとうございます、情報メディア学科の松谷といいます。

 私はメディア教育論という授業を担当しておりまして、実は、先週と今週は、先生の東北大学でのeラーニングとグループワークについてのネット上で見られる動画を見ながら、学生とみんなで、eラーニングといったものは、学生の皆さんにとってどのようなもので、どのような問題点があるかということを、批判的に考えてみました。そこでいろいろな意見が出ましたが、一番学生にとって心配なことは、私たちは、授業を聞いているときに、先生の顔を見ているし、また自分たちは先生に顔を見てほしいという欲求があります。それは、小学校から今までの、いわゆる対面型授業がずっと続いてきた、そこでもうなじんでしまった意見なのかもしれないけれども、僕はそれを聞きながら、確かにそうだろうな、という気もしました。eラーニングのようなものをすると、高画質になっていけば表情がこまやかに見えるかもしれませんが、そのような、いわゆる授業のコミュニケーションの形だと思いますが、その辺で先生はどのような工夫をされているのか、お聞きしたいと思います。

向後 はい、ありがとうございます。ポイントは、できるだけ楽しそうに話すことです。これも私の10年間の体験ですが、eラーニングでは自分の顔をばっちり映します。表情も、時々手の動きも入りますが、それを、学生は、自分の家のパソコンで見るわけです。そうすると、今言われたように、先生は私のために話してくれているのだという感覚のほうが強くなってきます。だから、eラーニングは非人間的なものであって、人間的な接触を失うのだというような批判は、逆にあまり当たらないと思います。むしろ、自分と先生が1対1になっている。ですので、大きな教室で一番後ろに座っている学生よりも、eラーニングの方がよほど親近感があります。先生が言い間違ったり、照れたりすることもあると思いますが、むしろそのほうが親近感があっていいのではないかと思います。ですから、そのような意味でも、自分の部屋で収録することをお勧めしたいです。

 それからもう一方で、教室での授業を収録して、それを、eスクール(通信教育課程)のほうで配信するパターンもあります。その場合も、実際に通信制の学生に聞いてみると、教室の中でどのような雰囲気でやっているのかが分かるので、それがまた臨場感があるということで好評だったりします。

 ですから、自分だけで撮る場合と、それから実際の教室の授業を収録する場合と、両方のメリットがあるので、ぜひ両方ともやっていただきたいと思います。ポイントは、自分が楽しそうに授業をすることです。どうもありがとうございます。

司会 はい、ありがとうございます。今のような、いわゆるご批判的なもの、ないしは疑問点でも、この機会ですので、出していただければ、直接お話を聞けると思います。他にもう一つか二つぐらい、ぜひ、ご質問があれば、お受けしたいのですが。では。

■女性だけのグループの場合

萩本 看護学科の萩本と申します。

 先ほどの講義の中で、性別が偏ると問題が起きることがあるので、なるべく先生は男女や学科などをミックスさせるとおっしゃっていました。うちは女子大なので、女性しかいません。それで、参考ながら、先生の感覚でいくと、女性ばかり集まったりするときにどのようなことに注意をしたらいいのかちょっと疑問に思いましたので、教えていただけたらと思います。すみません、よろしくお願いします。

向後 そうですね、女子大だということをすっかり忘れていて、すみません。私のところが所属する学部はたまたま男女比がほぼ半々ぐらいなのでうまくいっていますが、たまたま遅刻してきたグループで、全員男で組むようなケースもまれにあります。そうすると、見ていると、雰囲気がよくないです。女性同士の場合は、これもまれにありますが、それほど雰囲気は悪くないです。協力し合うという感じですか。あと、男同士だと照れが入るのかどうか分かりませんが、微妙な感じで、協力関係を結びにくいのが見て取れるので、そのような意味で、その中に1人でも2人でも女性の方が入ると、とても雰囲気がなごむといいますか、良い感じになります。そして協力的にやってくれるので、そのような意味で、男女を混ぜるといいのではないかと思います。女性だけの場合は、全く問題ないと思います。ありがとうございます。

司会 向後先生、お気遣い、大変ありがとうございました。私の経験だと、女性だけでうまくいっているのに、なぜ男と混ぜると、という経験もあります。

 あともう一つ、ご質問があれば、お受けしたいと思います。では、飯田先生、お願いします。

■ピアインストラクション

飯田 今日はとてもありがとうございました。私のほうから、今日は、先生方から、グループワークのやり方など、いろいろな例があってとても良かったのですが、その中でグループワークを見ていくと、いわゆるオープン型で、答えのないものがふさわしいのかなと思いました。しかしながら、われわれの授業としては、たとえば答えが一つあるものも非常に大切で、それをグループワークでやるのは難しいのかどうか、それについてはいかがでしょうか。

向後 はい、ありがとうございます。今日はたまたま出ませんでしたが、グループワークのパターンにはいろいろあって、ディベートやロールプレーやシナリオや事例ベースがあります。それ以外に、ピアインストラクションというものをぜひお勧めしたいです。それは、正解がある問題に使えます。

 今日もクリッカー(学生用の反応ボタン)を持ってきていただいていますが、先生が、クイズを出します。「この1番から4番のうち、正解はどれですか」という感じです。クリッカーで、あるいは、クリッカーがなければ、挙手ですね。そうすると、1番の人が3分の1ぐらい、2番の人がまた3分の1ぐらい、という感じで、ばらばらになります。そのような、すぐに正解が分からないような、専門的な問題を出します。そうしたら、グループの中で「他の人を説得する」ということをしてもらいます。1番を選んだ人は、なぜ私が1番を選んだのかということを、他の人に対して説得します。また2番の人は、他の人に対して、自分の答えが正解だと思うので、説得します。これが、ピアインストラクションのプロセスです。

 そうすると、自分が思いもよらなかったような説明を受けて、だんだん自分の答えを変えていく人がいます。10分ぐらいのそのような討議の時間を取った後で、最後にもう1回、クリッカーあるいは挙手で、「答えが変わった人はいますか」という形で、もう1回聞くわけです。その後に先生が、「実はこれが正解です。なぜかというと、このような原理だからです」という解説で終わるのがワンセッションのピアインストラクションです。

 先生が天下り式に正解を教えるのは、あまり効果がありません。「あ、そんなもんか」で終わりなのです。けれども、クイズを出されて、自分の答えが正しいことを他の人に説得した後では、この原理は一体何なのかということについて、関心が高まるのです。その後なので、先生の話をきちんと聞いてくれることになります。このような効果があるピアインストラクションはお勧めなので、これはぜひ使っていただきたいと思います。

飯田 ありがとうございました。

司会 ありがとうございました。ちょうど時間になりました。繰り返しになりますが、長い時間、向後先生、本当にありがとうございました。ご参加いただいた先生方、本当にありがとうございました。

(Part 5 完結)

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