見出し画像

レンタル・シェアリングサービスの在庫管理について考えてみた_経理財務編

 前回の投稿(レンタル・シェアリングサービスの経理・管理体制の構築)に続き、
  モノのレンタル・シェアリングサービスの経理財務実務について考えたことを、これから検討される起業家の方・コーポレートの方に向けてざっとまとめました。
 カメラ・家電製品のレンタル小売サービスを提供するレンティオの小松です!レンティオのことをご存じない方のために参考として自社サイトはこちら

果たしてこの在庫は何者なのか?

 

当社のサービスは3泊4日の短期間レンタルもあれば、数カ月間の長期レンタル、さらには短期間レンタル後にお手元の中古品が購入可能な「そのまま購入」、一定期間後(12ヵ月~36ヵ月)に買取可能なもらえるレンタルなど、レンタルと販売が組み合わさったサービスを提供しており、
 会計的な視点では、これは商品(流動)なのか、固定資産なのか、それとも少額の仕入として一括費用か、と様々な選択肢がありました。

画像1

 初期の頃は、すべて費用処理を行っており、非上場の中小企業として継続するのであれば問題なかったのですが、果たしてこのままでよいのか?と議論になり、代表の三輪と一緒に検討を開始。
議論の結果を簡単にまとめると以下の表のようになりました。

画像2

 ※短期的財務健全性:早期に黒字化を果たして金融機関等からのデットファイナンスが可能か?という軸

 IPOコンサルの方や監査法人、顧問税理士、諸先輩方にもご意見を頂き、議論を繰り返しながら、最終的には固定資産とする方向で決定。理由としては、利益コントロールや会計処理の簡単さよりも、経営状況をより正しく迅速に分析し、適切な経営判断・IRを出来るようにすることを優先することが本質的であろう、と結論付けました。

 【Tips】
固定資産管理ソフトは、色々調べた結果、クラウドかつ安価な月額料金で利用できるPCAクラウドを採用致しました。迷ったらPCA一択でもいいんじゃないかな。オプションでAPI連携機能もあるので楽しみです。

固定資産の会計方針

どの在庫を費用処理、一括償却資産、固定資産にするのか?これを会計・税務両面で検討していきます。
弊社は固定資産とすることを選択しましたが、この場合、耐用年数、償却方法を検討していかなければなりません。
※税務は、より税務的に有利な方針を採用

会計方針を決めるにあたって、ざっとラフな論点は以下の通りで、
詳細は割愛いたしますが、現時点で考えられる最も合理的な選択をし、将来的に広く投資家に対してシンプルに説明できるよう整理致しました。

①会社として、その在庫を何年間レンタルとして棚に置き、最終的に販売に至るのか?
②その実績は?あるいは根拠となる一般的な情報はあるのか?
③物理的にどれだけ耐えられるのか?
④カメラ、ロボット掃除機、ベビー用品、高圧洗浄機など、様々な属性の商品をそれぞれどのように切り分けて判定していくのか
 【Tips】
余談ですが、検討をするにあたり1000種類を超える家電製品それぞれは、何年で新製品が発売されるサイクルなのか、何年経つと市場価値が下がるのか、リセールは可能か?などの家電製品あれこれについて、三輪さんへ相談しながら進める過程で、家電おじさん力の凄さを体感。家電おじさんすげえ

在庫効率の管理会計

 まず、最初に前提を述べておくと、対ユーザー面でのLTVやCRMについては今回触れません。ユーザーLTVと在庫の関係性はめちゃくちゃ奥が深くて面白いのですが、話が複雑になってしまうので割愛いたします。
 在庫管理は、一言で表現するとポートフォリオ管理になると考えていますが、まず、在庫効率を表現する指標は以下のようにすることと考えています。

画像3

上記の計算式は、デュポン分析の亜種みたいなものです。
 これをさらに分解し、ジャンル別等の意図を持った指標を作り、目標とするレベルを設計していくと、より事業をドライブさせていくためにどうするべきかと現場メンバーとの議論が活発になっていくのでめちゃくちゃ面白いです。

在庫管理の財務(資金調達)

 まず、財務的観点の前提を述べておくとお金には色があります。リスクの高い投資とリスクの低い投資(投資回収の蓋然性が高い)があるとして、基本的にリスクの高さに応じて要求リターンは比例する。
 よって、投資回収の蓋然性が高い投資にはデットを、低いものかあるいは間接的な投資にはエクイティをあてることを前提として話を進めていきます。
 ユニットエコノミクスの確立している前提で、多額の在庫投資を必要とするレンタルサービスにはデットによる資金調達が理にかなっていると考えています。(もちろん、実績のない新ジャンルへの投資は別です)
 それらを踏まえて、デットの調達方法をざっくりと見ていきます。

①コーポレートローン
②リース(ファイナンス&オペレーション)
③アセットベースドレンディング(ABL)
④信用創造(無利子負債)

まずは第一歩として①コーポレートローン。この取引がないとABLは基本検討してもらえません。
そして、販売を目的としない長期性の在庫であれば②リースを検討し、
事業が拡大期に入るタイミングでは、コーポレートの与信だけに頼らず、中長期的な資金調達を目的とした③アセットベースドレンディングを目指します。
※このステップは、あくまでも自分が考える理想であって、実現するにはハードルがあることを認識しつつも、目指すべきだと考えています。
 

【Tips】
アセットベースドレンディング:売掛債権や在庫を担保とした借入。
ちょっと古いですがソフトバンクの事例がわかりやすい

ちなみに、ABLはきらぼし銀行一択なんじゃないかぐらいに強いので、検討するのであれば、紹介で繋いでいただくとよいと思います。
ただ、ABLを選択する以上は、相応の資産管理体制が求められます。定期的なレポートに耐えられる管理体制が構築できているなら、検討する価値はあると思っています。

TIPS:信用創造(無利子負債について)

信用創造とは、端的に言うと買掛金や未払金、クレジットカード与信枠のことです。
例えば、1,000万円の仕入を毎月翌月支払いに出来たとしたら、利子0円で1,000万円の資金を調達したことになります。
なので、財務担当的には、理由なき1month未満の支払いサイクルを見ると、生理的に受け付けられない気持ち悪い感覚を持ちますw(赤字ベンチャーが我が儘を言っているのは重々承知していますが)

【Tips】 
運転資金(売掛金+棚卸資産ー買掛金)がマイナスに転じるか限りなくゼロに近いビジネスをみるとテンションが上がるのですが、(ビジネスモデルの影響もあるけど、バイイングパワーが強いんだろうなあと思う)
Amazonがわかりやすいです。


つらつらと思うことを書いてきましたが、業界全体の成長に貢献できれば嬉しいです。第3弾は、ユーザー分析、資金管理、調達あたりを触れたいとも思います。いずれまた!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?