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これがただの掃除なら #12(そのゴミは誰のゴミ)



2022年11月19日

スタートから一ヶ月。
男は二十往復を済ましていた。
持ち帰った缶の数は二千を超えるだろう。

山のゴミは空缶ばかりではない。
プラスチック
ナイロン
ビニール
ガラス
陶器


全部ある。

目立つ空缶。

どのゴミを持ち帰るか
選んでいるわけではない。
物理的に選ばされている。

背負えないほど大きく重いゴミは
持ち帰ることができない。
ガラスで出来たものは
一時廃棄時点では割れていなくても
二次的に廃棄された山の斜面では
割れていることが多く危険だ。

持ち帰り得るゴミを持ち帰り、自邸に放つ。
行為 と 現象 が繰り返され
観たものの 再現 が 表現 に成る。
これがただの掃除なら
いつか終わりも来るだろう。

そして人は忘れる。

ゴミ掃除という意味でなら
男はあの山の斜面へ辿り着くまでの道
その道中で目にする
昨日今日
誰かが捨てたゴミを
帰りに拾って
別に用意した袋に入れて持ち帰る。
ゴミとしてゴミの日に出す。

あのゴミと
このゴミと
何が違うのだろう
違っていて欲しい
けれども
何も違わない

少年が二人
自転車で颯爽と自邸前を通る。
少年一「ウエッ、何これ!」
少年二「これ、アート!」
そう言って
風のように過ぎて行く。

見ないふりより
ずっといい。
知った顔より
ずっといい。










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