冬眠 #15(そのゴミは誰のゴミ)
2022年12月
雪が積もりだした。
この年の冬は暖冬傾向と言ってもそれなりに寒く、標高800メートルほどの低山であっても陽の当たらない斜面に積もった雪は春が近づくまでなかなか溶けはしない。
行動はしばし冬眠に入る。
幸い男はそれまでにたっぷりと蓄えた。
図らずして。
銀世界を見る目が変わる。
雪は隠してしまう。
どうせならずっと隠してくれてもいいのに。
なくなったらまたがっかりするのだから。
その下に何を隠しても全部知っている。
奇しくもそこはレジャースキーのゴミ捨て場。
春が来てこの雪が溶けたらまた何も変わっていないあの圧倒的なゴミを目の前にして男は黙々と行動を再開するのだろう。
それがまた次の冬まで続くのか分からない。
男にとって実験の終わりとは「あの美」が何だったのか知ることなのかもしれないし、芸術が起こし得る現象を知ることなのかもしれない。
日々積み重ねられるその現象から得る「観る目」が何を観て何を背負うことになっているのか、それは本当のところ当事者にしか分からない。
それでも幾ばくかの目撃者たちが当事者になる刹那に芸術としての使命が果たされるように
今の私はそう感じているのです。
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