マガジンのカバー画像

藍羽の異世界旅行記

19
運営しているクリエイター

#Vtuber

藍羽放浪記・・・16ページ目

藍羽放浪記・・・16ページ目

紫の炎に包まれ現れたその男は、僕を冷たい視線で見つめている。

「うや..…らか?」

彼の両の手には2本の刀が握られている。
いわゆる臨戦態勢というやつだ。

「まって!!違う!ボクジャないンだ!」

「分かってる。黙ってろ。」

恭赤はそう言うと腰を低くかがめてこちらに突進してきた。
思わず両腕で目の前を覆う。

こういう戦いの時どう動くべきかなんてものを妄想していた時もある。
腕を掴む。足を

もっとみる

藍羽放浪記・・・13ページ目

あれから僕は夏希と連絡先だけ交換して、喫茶店を出た。
交換したとて、環境どころか世界が違うなら通信なんてできないだろうと思っていたけど…
元の世界の僕のスマホにLI〇Nが来た。
いったいどんな理屈で届いているんだとびっくりした。

僕の向こうの体は今、あのあと見つけた宿に泊まっている。無論、動くことは無い。

思えばこっちの世界でちゃんと日記を書くのは初めてだろうか。
向こうの話ばかりでいいからま

もっとみる

藍羽放浪記・・・D.S.

物心ついた時から、僕には夢とか好みだとかは無かったんだ。

いつも誰かの背中を追い続けた。
努力も実らないことがほとんどだった。
やる気は人一倍あったつもりだ。
けど「本物」には勝てなかった。

僕の夢は「偽物」いや、「借物」と言った方がしっくり来ると思う。

周りが語る夢をそのまま、自分の夢ということにしていた。

空っぽの僕には、友達がいた。
いつもそばにいた友達。
名前も顔も分からない。

もっとみる
藍羽放浪記・・・-???ページ。

藍羽放浪記・・・-???ページ。

俺には過去の「体験」がない。
産まれた時からこの体型だし、物心なんてものは産まれた時からついている。

だが、記憶はある。幼少期やここに至るまでの記憶。
記憶は、日に日に増えていった。
気味の悪い話ではあるが、記憶が増える度に「己の形」が確かなものになっていく気がして心地は良かった。

性格は比較的明るく、人に甘くて優しい。故に、友人が沢山いて、種族は問わず誰とでも仲良くなれる素質があった。

もっとみる

藍羽放浪記・・・12ページ目【小説】

あれから、20分くらい経っただろうか。
少し落ち着いた僕は、ゆっくりと顔を上げる。
どうやらカウンターに突っ伏してしまっていたらしい。
辺りを見回すと、先程まではカウンターに置いていなかったアロマキャンドルとグラスに入った水が、僕の近くに置かれていた。

(そうだ。夏希は…)

探そうとした僕だったが、探すまでもなく1つ席を開けた隣の席で袋を片付けていた。僕のこの症状自体も慣れたものではあるけど、

もっとみる
藍羽放浪記・・・11ページ目【小説】

藍羽放浪記・・・11ページ目【小説】

星の都のとある喫茶店に入った僕は、自分の書きかけの小説に登場する「小鳥遊夏希」(たかなし なつき)に出会った。
口ぶりから、この喫茶店のマスターなのだろうか。

小鳥遊夏希は僕が彼女の名前を言い当てたことから、僕を怪しい者と認識したようで険しい表情で僕を見ていた。

「なんで…私の名前を知っているんですか?」

「あ、え…っと」

適当な言い訳が見つからず、どうすべきか必死に思考をめぐらせた。

もっとみる
藍羽放浪記7ページ目

藍羽放浪記7ページ目

2024年4月8日

僕は自信を持って好きだと言えるものが幾つかある。

水族館、音楽、ゲーム。
そして星。

今日はかなりひらけた丘の上の草のクッションの上で日記を書く。
夜だから当たり前だが、辺りは暗い。
恭赤(うやらか)が夜でも動けるようにと、狐火の明かりを旅に出る前に用意してくれたからそれを使って手元と辺りを明るくする。

海の中であったことを思い出すと早く恭赤(うやらか)の所に戻らなけれ

もっとみる
藍羽放浪記6ページ目【小説】

藍羽放浪記6ページ目【小説】

どれくらい経ったのだろうか…

そんなことを考えながらゆっくりと目を開ける。

「これが…知らない天井ってやつか…」

どこかの小さい部屋の天井が目の前に映し出された。
ゆっくりと体を起こして辺りを見回すと、小さいテーブルと食器の入ったガラス張りの棚があるのがわかる。

部屋の大きさ的に店員の休憩所・・・といった感じだ。
僕はソファの上に横になっていたようで、少し腰が痛い。

ガチャ・・・

もっとみる
藍羽放浪記5ページ目・・・【小説】

藍羽放浪記5ページ目・・・【小説】

海に沈む自分の知る街と瓜二つの街を後にした僕は情報を集める為にここから数十キロ離れた位置にあるであろう街に向かった。

バス?タクシー?なのか分からないけど、ここでは「イルカ」に乗って移動するのがメジャーらしい。
幸い、こちらの世界と元の世界の通貨は同じらしく、料金は支払うことが出来た。

目的地に到着して「イルカ」に料金を支払い、「イルカ」が遠くなっていくのを確認して僕は辺りを見渡した。

「や

もっとみる
藍羽放浪記 4ページ目

藍羽放浪記 4ページ目

2024年3月18日

今日は海の中に入った。
こちらの世界の海は場所によっては海底を歩くことができるらしい。
水中でも呼吸ができるのはとても不思議な感覚がする。

海の中独自の文明あるようで、龍宮城?のようなものや地上と同じように街や村があったりする。

 そして一つ気になった街?があった。

それは、僕が向こうの世界で過ごした街と瓜二つの街があったこと。僕の家ももちろんあったよ。

何より奇妙

もっとみる
藍羽放浪記  3ページ目

藍羽放浪記 3ページ目

2024年3月12日

今日は大きな街の一角にあるこのレストランで日記を書くことにする。

街の名前は「eòlas」
調べてみたら元の世界のスコットランド・ゲール語で「知識」という意味の言葉らしい。読み方は分からん。なんでも「創作者の知識と夢が創り出した街」ということらしくて、物書きやイラストレーターが好きそうな「ファンタジー感」が街全体に現れている。
そのせいか、街ゆく人々は知ってる単語で言うな

もっとみる
藍羽放浪記2ページ目

藍羽放浪記2ページ目

2024年3月3日
こちらの気候と元の世界の気候は連動してることに気がついた。

そして「魔界」だったり「天界」だったり「魔法の森」やら「海底神殿」があるような世界だが、それ以外は元の世界とほとんど変わりがないようだ。

どこに行ってもだいたい生きているのは、この体が作り物だからなのか、はたまたそういう環境なのか…考察してみるのも面白そうだ。

そして今日は「魔法の森」でこんな植物を見つけた。

もっとみる
藍羽放浪記 1ページ目

藍羽放浪記 1ページ目

2024年2月27日
この異世界旅行にも慣れてきた今日この頃。
僕はいつぞや、宿がなくて困っていた時に助けてもらったこのカフェで今日の日記を書いている。

こうやって電子媒体で文字を書くのは、後々データのコピーや誰かとの共有をするのに都合はいいけれど…
ペンと紙を使って書く方が僕的には好きかなぁ。と思ったり。

持ってない訳では無いけど、ペンはそろそろインクも切れそうだ。
何かいいペンがあればいい

もっとみる