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(改訂版)ホロライブイベントのお弁当は「ぼったくり」「高い」のか?カバーの利益率をもとに会計学・商学の視点から考察してみた!

最終更新 令和6年8月15日 *当記事は約15分で読了できます。

みなさんこんばんは。

今回はタイトルの通り、商学および会計学に関する検証記事です。

ナントカ学とか考察とか、なんだか物々しい雰囲気のタイトルではありますが、分かりやすく丁寧に構成した(つもりな)ので安心してご覧ください。

なお、取り扱う学問について筆者は浅学菲才であるため、未熟な記事になってしまうかもしれません。その点についてはご容赦いただけますと幸いです。

また、当記事についての感想はもちろん、異論やご意見、ご質問なども大歓迎でございます。皆さまのご指摘やご叱正によって、さらなる信頼度の向上に努めていきたいと考えています。

*当記事は加筆修正を行う場合がございます。


はじめに


ホロライブの現地イベントが行われる際、必ずといっていいほど下記のようなフードメニューの販売があります。

hololive GAMERS fes. 超超超超ゲーマーズ 限定のフードメニュー。出典は参考文献より。
hololive SUPER EXPO 2024 限定のフードメニューの一部。出典は参考文献より。


こちらのメニューはいずれも会場限定であり、予約で即日完売することもある大人気商品ですが、発表のたびに批判が寄せられています。

列挙するなら「ぼったくり」「安くしろ」「コスパ悪い」など。

しかし、非難の声とは裏腹にフードメニューの売上は好調です。それはなぜでしょうか。

今回は、会計学の視点から「なぜ値段が高いのか?」、商学の視点からは「それで批判されているのになぜ売り切れているのか?」という点について考察していきます。

商品の値段構造

学問的な視点を見る前に、まずは商品の値段の中身を考察していきます。ただカバー株式会社の内実を知っているわけではないので、多少の誤差の可能性を孕んでいる点はご容赦ください。

何もない状態で真っ先に思いつくのは原価と利益ですね。原価は作るためにかかった費用、利益は末端価格から原価を差し引いた残額であることは皆さんもご存知かと思います。

間違いではありませんが、原価を種類ごとに分けたり、その他の値段の内訳の意味もしっかり把握できた方がより当記事の趣旨にご納得いただけるはずです。

まず、原価は直接コストと間接コストの2種類に分けることが可能です。
直接コストはその商品の売上を出すのにそもそも必要なコストで、間接コストはモノやサービスが売れる仕組みづくりと定義しましょう。後者は売上を支える存在ともいえます。

フードメニュー自体をこのコスト構造から分析すると、直接コストは例えば米野菜の仕入価格や調理スタッフの給与、間接コストはキッチンカーのレンタル料金や本社の事務手続き費用などが含まれると推察されます。

これら以外で大きいのは「ブランド価値」でしょう。ここでいうブランドは高級ブランドのようなモノではなく、ネームバリューやホロメン自身の見えない価値を市場において貨幣的に見える化したものだとお考えください。これは一般的に、ブランド価値を維持するためのコスト(多分いろんなもののクオリティ向上)として使われることが多いです。

残るは利益です。利益を得る目的は、一般的なパターンをカバーに当てはめると、「今後のありとあらゆるプロジェクトの資金」や「今後Vtuber業界の活況が衰退したときのクッション」あたりが大きなウエイトを占めると思います。

戦いつつ生命を断たれないためにも、こういった要素を反映するのは大切ですからね。

以上のことを勘案すると、末端価格=直接コスト+間接コスト+ブランド価値+利益(資金&クッション)で構成されていると筆者は考えます。

これらを踏まえたうえで、それぞれ学術的な視点からタイトルの疑問を考察していきます。

なぜ高いのか?(会計学的な視点)


会計学というのは、簡単に言えばお金の計算に関する学問です。
この会計学の考えをもとに、売上や費用を記録します。これが俗にいう「簿記」です。

まず、コラボメニューをホロリスへ提供するためには、実に多くのステップやコストがかかります。

例えるなら

直接コスト
・食品工場への外注費用
・調理スタッフの雇用
・デザイン費用

間接コスト
・企画や立案に係る人件費用
・冷蔵庫などのレンタル費用
・マーケティング費用

など…1部ですが、それなりに多いように見えますね。

またIP*ビジネスであるため、先述の通り推しという名のブランド価値も関わってきます。ブランド維持コスト、という言い方もあるかもしれません。

*IPとは知的財産のこと。著作権や商標権などを指す。

イベント限定メニューは一度きりであるために、直接的な費用の段階で他のレストランより多くのコスト・時間がかかってしまいます。

カバーの利益率


コストが多いから赤字なのかといえば、そういうわけでもありません。

フードメニュー個別の原価明細ではなく、会社全体の利益にはなりますが…

ここ数年のカバー株式会社の当期純利益率(会社に入る利益)は15〜20%弱と、情報通信業の中央値が5.3%である中、非常に高水準であることがわかります。(昨今はソフトの開発費用で利益が圧迫されている、なんて話も聞きますが)

正直、儲けているかと聞かれたら首を縦に振るほかありません。

しかし、お金を貸す人(以下、債権者)や株主などの資金提供者に対する信用度を上げるためには、ある程度高い利益率もやむなしと言えるでしょう。

利益率が高い、つまり貯金(資本)が多い状態であれば、株主や債権者は安心して資金提供できますし、いざホロライブの業績が落ち込んでもしばらくはタレントや社員を守ることができるはず、つまり倒産に対する安全性が高いと見て取れるためです。

また、カバーの決算報告書にはおそらく先述の理由から「借金の比率をなるべく低くして、資本から捻出する割合を大きくするように努める」という旨の記載がなされています。利益は資本(貯金)になるため、資本からコストを捻出しつつ、資本の割合をキープするためには高い利益率が必要です。

もしかしたら、「いやいや、それいうなら借金抱えてる方が利率高くないとおかしくない?だって借金の利息も追加で返さなきゃいけないし。」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。これに関しては、会社に入る利益である当期純利益は、すでに借金の利息コストを加味した後に求められた利益であるため、カバーが借金多めの企業であればむしろ利益率は縮小しているのです。

他には、カバーの主力がコモディティ化(扱っている製品が業界全体で同じクオリティになること)しているものであれば、競争原理が働き利益率はぐんと低くなるでしょう。

しかし、主力は「ホロメン」という絶対唯一無二のものです。競合もだいぶ限られ、ファンは各タレントへの思い入れが強いので商品への需要が非常に高いと考えられます。おそらく、グッズの値段が高価であるのも需要による値上げの要素が大きいでしょう。日用品ほど大量生産するわけではない点も絡んでいるとは思いますが。(物価高騰は…どうなんだろ?)

以上のことから、値段の高さの主な要因は「手間・ブランド価値・需要・生産数・信用力確保」であると考えられます。

本当はスパチャなどを考慮した全体的な利益率から逆算し考察したかったのですが、あまり長文になっても仕方がないため、こちらで一旦区切らせていただきます。

なぜ売れるのか?(商学的な視点)


ではなぜ高価であるにもかかわらず、飛ぶように売れるのでしょうか。
それは、商いの学問である商学の観点から見るとわかりやすいかもしれません。

商いなので「商品やサービスなどの、支払ったお金に対する対価が消費者に届けられるまでの過程」に関する学問です。よく聞く「マーケティング*」がこれに当てはまりますね。

*マーケティング:物の売れる仕組みづくりのこと。広告などが代表的。

こういった学問ゆえに「消費者が商品に対し、心理的にどのような価値を感じるのか」というのも研究対象なのです。

それにならえば、(数ある価値の一部ですが)ご飯は「機能的価値」「経験価値」「文脈価値」を提供できるモノと考えることができます。

機能的価値:ご飯でいうところの味や食べやすさ。
「美味しい」「飲みやすい」など。お弁当をグッズの一種とみなし購買される場合であれば、それも機能的価値と言っても差し支えないかもしれません。

経験価値:食事という体験に対し得られる価値。
例えば、非日常の会場で食べるご飯、SNSに写真をあげ得られる反応など。

文脈価値:どのような状況で消費したか、により得られる価値。誰と、どのような状況でコラボメニューを食べたか…みたいな。
例えるなら、「ホロリス友達と話しながら食べるから、一人で食べる時より食事に価値を感じる」といった感じ。

ちなみに文脈価値は経験価値から派生したものなので、一見すると似たもの同士です。
しかし深く追求すると沼ゆえ、こういうもんだと認識していただくのが一番です。

こう考えると、コンビニご飯もイベント限定弁当も、共通して機能的価値は一定数あるように思えます。

ここの価値は(極端にいってしまうと)横並びであるため、値段がいずれも相場通りであれば、提供される場所が異なるだけで叩かれる要素にはなり得ません。

したがって、叩かれる要素を商学的に考えると「お弁当に機能的価値以外の価値を感じない=値段に釣り合っていない」と捉えることができます。
(ちなみに機能的価値以外の価値は、原価(機能的価値)に付加された価値という意味で「付加価値」と呼ばれます)

少し極端な表現ではありますが、この「付加価値」を生み出す状況(イベント設営や魅力的なコンテンツ展開)が機能的価値に上乗せされた結果、外部から叩かれるほど他の食品と価格差がついてしまったわけです。

しかし裏を返せば、先述のブランド価値に加え、これらの盛り込みによって値段と同等以上の価値をホロリスは感じることができる‥と筆者は考えます。

この記事で一番言いたいこと


フードメニューを批判する意見は「コスパが悪い」「ぼったくり」など、機能的価値のみに焦点を置き批判しているように見受けられます。目にみえる部分のみの、いわば表面的な批判といえるでしょう。

しかしホロリスは機能的価値(原価)だけではなく、付加価値として経験価値や文脈価値が含まれていると感じます。(あとブランド価値

つまり前者はコンビニ弁当のようなコスパに重きを置いた食事と同列に見ていますが、後者は特別な食事として見ているため、批判と購買意欲の間にズレが生じてしまうと推察されます。

こういった価値の違いは、お互いの立場に立ってみないとわからないもの。

値段絡みの批判は世の中たくさんありますが、結局は価値観や視点の違いが多いのだと再認識させられます。

最後に


タイトルに対する結論となりますが、値段に対する批判は正しいと言い切れないでしょう。(スッキリしない結論で申し訳ないです)

なぜなら、消費者としての視点が異なるためです。

会計学的な視点で考えると、レストランやコンビニ弁当のような恒常的な商品でなかったり、信用力確保の観点からそもそもの原価が高くなる傾向にあることが予想できます。

もう一つの商学的な目線では、付加価値に価格以上の価値を感じ、かつ需要が大きい点などから、相場より高価であっても購買する動機が失われることはないということがわかりました。

以上のことから、値段が高価で批判はされているものの、ホロリスにとっては購買する動機があるため売り切れが続出する…という外部と内部での評価が異なる現象が起きてしまうのです。


以上となります。
拙文にもかかわらず、最後までお読みいただきありがとうございました。

また、参考にさせていただいた文献の執筆者及び関係者の方々に深くお礼申し上げます。

このような、会計学・商学・経済学的側面からホロライブを考察する記事を不定期ながら今後も作成する予定ですので、今回の記事を気に入っていただけましたらぜひフォロースキ!SNSシェアなどをしていただけますと幸いです^^

なお、シェアをしていただける際、メンション(@ユーザーIDのこと)はそのままで問題ありません。むしろ大歓迎です🙆

参考文献


・久保田進彦・澁谷覚・須永努〔2013〕『はじめてのマーケティング』有斐閣ストゥディア。
・X(旧Twitter)〈Home / X (twitter.com)〉(最終参照2024年 以下同年 5月23日)
・hololive SUPER EXPO 2024公式サイト フードメニューページ
(hololivepro.com)hololive 5th fes. Capture the Moment|ホロライブプロダクション (hololivepro.com)〉(5月23日)
・hololive GAMERS fes. 超超超超ゲーマーズ公式サイト Newsページ
ニュース|hololive GAMERS fes. 超超超超ゲーマーズ (contents-abema.com)〉(5月23日)
・決算分析の目安辞典 〈「純利益率」業界目安の完全版~その企業、手取りいくらもらってる?|決算分析の目安辞典 (kaikeiei-gaku.com)〉 (8月15日)
・会計設立のミチシルベ 〈資本金を増資する意味とは?増資のメリットとデメリットを解説 | 会社設立のミチシルベ (soico.jp)〉 (8月15日)
・カバー株式会社 公式ホームページ IR情報 決算ページ 〈IRニュース | カバー株式会社 (cover-corp.com)〉 (8月15日)

*今回の記事は、一部狭い範囲の校正にチャットGPT3.5を使用いたしました。
・ChatGPT公式ホームページ〈ChatGPT〉(5月24日)



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