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#共同親権 が #DV対策 になる 学びのつづき

共同親権を推進すると、DVの問題を置き去りにするのではないかという声もあって、なかなか建設的な議論の機会に恵まれない。

冷静な法的な議論こそ必要なはずだが、離婚の100%がDV事案ではないにもかかわらず、DVの二文字によって、議論自体が進まないことがある。

実際は、婚姻と親権のあり方の紐づけを解消し、離婚後においても共同親権となる場合があることを認め(父母の共同親権は父母の婚姻の有無に連動させない)、父母が婚姻しているかどうかでの親子体制の格差を除去するから、父母の平等を実現することで、離婚しやすさを促進しうる(格差があることで、破綻していても離婚を躊躇しかねない実態がある)という点をすでに指摘した。

引き続き、同noteで参照している、「家族の幸せ」の経済学から読み解く。

第6章 離婚の経済学

この中で、離婚のしやすさについてを一つ目のテーマとして、解説していた。それに続く2つ目のテーマとして、共同親権を位置づけている。経済学の視点から、どのように見ているのだろうか。

 日本では、子どもを持つ夫婦が離婚した場合、お父さんかお母さんのどちらか一方だけが親権を持つのですが、多くの国々では、離婚後も共同で親権を持つことを認めています。日本では、離婚後に親権を持つのはお母さんだけであることがほとんどですが、近年、親権を持てなかったお父さんだけでなく、弁護士、裁判官、法学者といった専門家たちからも共同親権を求める動きがあります。
 離婚後の共同親権を導入することで、家族の、とりわけ子どもたちの幸せはどのように変わるのでしょうか。・・・

冒頭から衝撃的である。専門家たちからの共同親権を求める動きをキャッチしているということ自体が意外に感じられてしまう。しかし、実際は、確実にその動きがある。もはや、共同親権は、非親権者となったお父さんだけが求めているわけではないのだ。

これについて、4 共同親権から「家族の幸せ」を考える という項目にて補足される。

 ・・・近年はお父さんの育児参加が進んだこともあり、お父さんが親権を持つことを希望するケースも多いのですが、実際にそれが叶えられるケースはわずかしありません。
 離婚後に親権が無い場合でも、面会権を持つことは多いのですが、面会の頻度が不十分だったり、当初の合意が守られていなかったりすると感じるお父さんも少なくなく、現状を解消するために、共同親権を求めるお父さんが増えてきています。

かつては、仕事の忙しさもあって、月に1回程度顔を見れれば安心するというお父さんも多かっただろう。しかし、父親の育児参加が推奨され、実際、育児の実働を担ってきたお父さんにとっては、意欲的だった子育てを制約されることは悲痛でしかない。この傾向について、同書は次のように記している。

 こうした動きに対して、子どもがお父さんと交流を持つ権利を保障すべきという観点から、支持する声も少なくなく、超党派の共同養育支援議員連盟は2016年に、共同親権制度の導入検討などを盛り込んだ親子断絶防止法案をまとめました。また、2018年7月の記者会見で上川陽子法務大臣(当時)が、共同親権について「導入すべきだとの意見は承知している。単独親権制度の見直しも含め、広く検討したい」と言及しています。

そこで、離婚後の共同親権導入により考えられる影響を検討していくことになる。

興味深いのは次の一文である。

離婚法改革の影響に見られたとおり、離婚についてのルールが変われば、離婚しない人たちにも影響を及ぼすのです。

離婚後の共同親権が導入されたところで、婚姻中の共同親権下において行われる「連れ去り」は解決しないといった言われ方も見られるが、確実な影響が期待できるのである。

さて、共同親権導入の実像としては次のとおり要約する。

 離婚した両親が共同親権を持つということは、子育てについての義務と権利を共有することを意味します。・・・離婚したら自動的に共同親権となるわけではありません。裁判官が、「子どもの最善の利益」を考えた上で、誰が親権を持つべきか決定します。共同親権は、子どもが両方の親から、精神的にも経済的にもサポートを受けることができるようにする一方、子どもが両親のいさかいに巻き込まれてしまう危険性もはらみます。これらの可能性を総合的に判断して、共同親権が子どもにとってベストであると裁判所が判断した場合に、共同親権が選ばれるのです。

 離婚時の親権者の指定結果は、戸籍に記載されるが、その記載が、単独親権下の父か母かという記載にとどまらず、父母との記載ができるようになること、それが「共同親権の導入」というわけではない。あくまで、子どもの最善の利益を図るための調整をきめ細やかに行っていくための政策だ。過不足のない調整が望ましいところ、単独親権制では、離婚というだけで、親の一方を親権者、他方を非親権者として分断する一律強制的な運用のために、子育てを細部に分担することが困難になってしまうことと大きく違うといえる。

 まだ、共同親権導入の是非を検討する段階といわれており、導入した後どのような仕組みになるかは、今後もよく検討を要するべきではあるが、イメージとして遠くないものといえる。

続く、共同親権によって期待されること の中では、次の点を挙げている。

共同親権の導入は、お父さんにとって有利な変更です。・・・離婚後も、精神的にも経済的にも子どもを支えることが増えると期待されています。・・・単独親権のもとでのお母さんの子育て負担が極めて大きく、共同親権の導入で、お母さんの負担が軽減されると期待することもできます。

現実には、たしかに、非親権者となるのは父親が多い。しかし、母親を親権者と定めるという明確なルールがあるわけではないので、離婚の際に親権を失う母親というのも一定数存在する。DVの被害を受け、命からがら単身逃げ出さざるを得ず、そのままわが子と別居となって、親権を得られないということもあるのだ。DV加害者となる配偶者と共同親権者となることの懸念があるのかもしれないが、少なくとも、現状の単独親権、その運用によって、自身の親権が奪われていったことを思えば、DV被害を受けて、別居親となった母親たちも、共同親権を求めることが自然だ。そうすると、共同親権を求めているのが、父親という言い方は、あえて平易な論理のためかもしれないが、慎重にありたい。上記、「お父さん」とは、男女問わず「別居親」をいい、また、「お母さん」とは、「同居親」をいうであろう。共同親権導入によって、同居親にメリットがあるという指摘には賛同する。

 そして、次のように続く。

 ・・・共同親権の導入・・・は、結婚している夫婦の行動にも影響を及ぼします。
 離婚後の夫の立場が有利になるということは、結婚中の夫婦においても、夫の立場が有利になることを意味します。・・・離婚法改革が妻にとって有利なものであったことが、結婚中の夫婦における妻の立場を改善したこととちょうど同じ理屈です。

離婚法改革は、離婚しやすくすることで、結婚中の幸福度が向上したというものであった。これも、「夫」や「妻」を固定するあまり、「同じ理屈」を別ものとしてしまうミスリードを感じる。結婚中の夫婦において、「夫の立場が有利になる」というが、前述のとおり、夫の立場ではなく、「別居親」の立場に利する話だ。その点と離婚しやすさと相まって、要は、夫婦対等な関係を得ることが、婚姻中の幸福に貢献するという話なのではないだろうか?
離婚しにくい=不満があっても耐える環境であれば、パワーバランスの不均衡により支配構造を導きやすい。離婚後に親としての関係性が非対等であれば、弱い立場になりうる(非親権者になるのが父親が多いからといって、父親だけが弱者とは限らない)者にとっては、親権のあり方が、離婚の障壁になって、離婚をしにくいものにさせてしまう。現状の離婚法制でいえば、破綻主義が完成しておらず、離婚しやすさがない状態で、さらに、「夫が有利」になると語られる共同親権の導入があれば、妻の地位が不利に追いやられるという発想に自然になじむ。実際恐ろしいのは、妻にとっては、離婚しにくく、しかし、夫にとっては共同親権のおかげで離婚しやすくなってしまっては、共同親権を持ちえたとしても、単身生活を自立しなければならない女性にとっては酷と言いうる。共同親権導入にあたっては、離婚の仕組み自体の見直しも不可欠になってくるだろう。離婚しやすさも同時に実現しなければならない。とはいえ、それは、女性も自ら経済的に自立することも当然になる。この点に関する言及も同書にはあるが、共同親権導入で賛成の自殺が減少 という項目の中で、次のとおりまとめている。

共同親権導入の最大の目的は、離婚後の子どもにとっての幸福です。・・・離婚したお母さんが子どもの養育費を受け取る確率が9パーセント上がった・・・共同親権の導入は、両親が離婚した子どもにとってプラスの側面を持った・・・。・・・離婚後共同親権の導入は、離婚後のお父さんの幸福にとって好ましい・・・離婚後共同親権を導入した州では、男性の自殺率が9パーセントも減少した・・・。

共同親権が、子どもや父親の幸福に貢献する要素を指摘できる。何よりも、次の指摘に注目したい。

・・・結婚している夫婦における、夫から妻への暴力は2.7パーセント減少しました。・・・5分の1の減少にあたります。・・・夫からの暴力の減少は、離婚後の夫の立場を有利にすることで、夫の葛藤を減らしたことの影響だと考えられます。

暴力を受けることのある妻の立場にも改善を期待できるという言及が大変興味深い。DV対策を検討する上では、真剣に受け止めておきたい政策である。

最後に、「共同親権を認める上で最も重要な点は、それが「子どもの最善の利益」にかなっているかということ」、と導いている。

子どもの利益のために、共同親権を導入しようという単純な要求ではない。

共同親権の選択肢も用意してでも、子どもの最善の利益を模索する努力を続けようというものである。

共同親権導入が、子どもの利益のゴールではなく、その先もずっと努力を続けるということが、#子どもに優しい親権制 の真髄である。

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