わたしの税理士事務所敗戦記Epiosode13もう一つの敗戦顧問先の倒産
顧問先企業の倒産を税理士が防ぐには限界がありますが、税理士にとっての敗戦であると思います。
独立開業から20数年の間に生家を含む10数件の企業の最後を見届けてきています。
倒産とは法律用語ではなく、弁護士が入る自己破産や民事再生、それ以外に任意整理、夜逃げなど弁護士が入らないケースがあります。
私の経験ではだいたい半々です。
倒産する会社の共通点を考えてみました。
倒産した会社のほとんどは、同業者の水準よりもかなり粗利益率が低い会社でした。
粗利益率がが10%台、20%台の会社はいつも綱渡り状態にあります。
粗利益率が低い会社が倒産に陥りやすい原因の一つに社長が勘違いしやすいことをあげられます。
たとえば年商2億円の会社でも粗利益率が10%だと粗利益はたったの2000万円です。
家族経営の個人商店の規模です。
しかし社長は年商2億円の会社の社長として振る舞い、人を雇いお金をつかいます。ベンチャー企業経営者の集りの入会条件が年商1億円だったりするのですが、粗利益をベースにしたほうが良いと思います。
銀行も粗利益率100%で売上2000万円の会社よりも、売上2億円の会社の方にお金を貸したがります。
一応毎月2000万円近い入金があるので、いざとなったら回収できるからです。
ということで実力以上の借金をしてしまいます。
会計学者白田佳子氏が提唱するSAF2002という倒産予知モデルがあります。
倒産と相関性の高い財務指標として
1 利益剰余金÷総資本=総資本留保利益率
2 税引前利益÷総資産=総資産税引前利益率
3 棚卸資産✕12÷売上高=棚卸資産回転期間
4 支払利息÷売上高=売上高金利負担率
の4つをあげられています。
1,2が高ければ結果論として安全なのは当たり前として、3と4に注目すべきだと思います。
売上高に対し在庫の多い会社は倒産しやすい。
粗利率が20%の会社の売価1万円の在庫1個は8000円です。
また、利幅が薄い商品は必然的に沢山売らなければならないので在庫点数も増えます。
その相乗効果で粗利益率の低い会社の売上高に対する在庫額は増えてゆきます。
また粉飾決算をしているところも在庫比率が不自然に高くなります。
在庫を、抱えるためには借入が増え、あるいは借入をするために粉飾決算を行ない、そのうち普通の、銀行融資を受けられなくなり、高利のところから借りるようになります。
その結果、売上高金利負担率が上がり倒産確率を高めるというのがこの指標が表すパターンではないかと思います。
粗利益率の高い会社は、リーマンショックの時に売上高が激減しても生き残れました。
固定費を削減すれば、損益分岐点まで戻すことが容易だからです。
借入があっても最悪リスケすれば生き伸びることができます。
粗利率の低い会社はリスケしてもどうしょうもないところまで、売上げ重視で借入を増やしながら突き進むケースがほとんどです。
標準的な業種別粗利率は
コンサルタントや士業 ほぼ100%
理美容、治療院 90%
飲食店 70%
製造業 50%
小売業30から40%
スーパー 25%台
建設業 20%台
卸売業 10から20%台
くらいだと思います。
ここで注意したいのは、粗利益率を計算するときの原価の中には簿記で習う、仕入や外注費の他に、立場の弱い会社だと、売上の一定率の広告宣伝費や配送経費を負担させられるケースがあります、またバックマージンを要求されることもあるでしょう。
これらを原価に含めると、実質的な粗利益率はもっと低くなります。
これらの標準値よりも実質の粗利益率の低い会社は、下請けからの脱却、業種や業態の見直しなどあらゆる努力をして高粗利益体質に変える必要があると思います。
しかし社長が考えを変えることができず手遅れになるケースがほとんどです。
税理士はこういうときに無力ではありますが、できるだけ事実ベースの未来の数字を提示して警鐘を鳴らし続けることしかできないのかなと思います。
損益予測ではなくキャッシュフロー、資金繰り予測が重要だと思います。
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