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【聞香会のアーカイブ】2022年6月29日・五味の会・苦

このnoteは、香雅堂で行われる聞香会で話された会話の内容を(個人情報に関わる内容を必要に応じて削除したうえで)純粋に記録したものです。企画概要は以下リンクよりご覧くださいませ。
この企画は、お手伝いの方たちの大変ありがたいご尽力によって成り立っております。この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます、誠にありがとうございます。
麻布 香雅堂 代表 山田悠介

「会長」お暑い中ようこそいらっしゃいました。よろしくお願いいたします。今回全く初めてご参加の方っておられますか。えっと、どうしようかな。香木の基本的なお話とかちょっといたしましょうかね。
じゃあえっとですね全体が一応4時終了の予定。まあその、いつも計画倒れが多いんですけれども。はい。

(連衆笑う)

という目標を立てつつ。えっとですね。香道でいう香木っていうのは、基本的に香道で使う場合しか言わないのが基本ですが。じゃあどういうものを香木というかという中で大きく分けて三種類なんですね。

それはどういう種類の木を、どういう基準で分類するかというのは、それは流派の家元とかご宗家とかそういうトップの方がお決めになることなんですね。だからわれわれがこれをこういう分類に使ってあるけど、それはどうなんでしょうって言ってもそれ関係ないんですね。家元が決まればいいことなんで、或いはご宗家が決めればいいことなんですね。

その三つに分けられるっていうのが、一つは白檀の仲間です。これは植物学的には一種類しかないんです。違いは主に産地によって性格の違いが出てきますね。それご覧になります?ちょっと見せましょうか。

「連衆」(うなずく)

「会長」はい。一応用意はしてあるので。一番代表的な白檀っていうのはインド産。これちょっともう端材になってますが、これインド産の白檀です。これ年輪の感じを見ていただければわかると思いますけど、これくらいの直径だったやつの一部。これくらいだったと思われます。外側に白太がついているので。もう皆さん手の消毒お済でしょうから。聞いている最中にあまり頻繁に消毒しなくても大丈夫です。3:23
それやるとアルコールのにおいがかえって臭いので大丈夫です。これお回ししますね。

(インド産の白檀の塊をまわす)

「連衆」これ触っても。

「会長」大丈夫です。はいどうぞ白檀。あの、香りの成分がオイル分でオイルからサンタロールという物質、芳香物質が出ます。香水系の方だったら結構ご存じだと思うんですけどエッセンシャルオイルが取れます。で、同じ白檀なんですがインドのと比べてこっちはアフリカで取れた白檀です。あとこれはオーストラリア、これはオーストラリアの…これ周りに白太がついてますが…数珠を取る、念珠を取るために板状にして加工してあります。

(オーストラリア産の白檀を回す)

こっちはアフリカの白檀です。

(アフリカ産の白檀を回す)

常温でもある程度香りが出ているかと思いますし、その出ている香りの中でも産地によってちょっと特徴の違いが出ているかなって思います。
白檀は、外見から白檀とわかる植物なので見つかればそれを切り倒して、まわりの皮と白太を落としてしまえば芯材が現れますがその芯材がそのまま香木として利用できます。乾燥させれば。
5:48

「連衆」<聞き取れず>

「会長」何か質問があればおっしゃってください。
白檀は用途が広い香木で色んなことに利用されてますね。特に仏像彫刻の材料としては非常に優秀な材料です。ただ、そんなにでかい白檀がたくさんある訳じゃないので彫刻と言ってもサイズが限られてます。だいたいこれぐらい。高さこれくらいの物だったら目いっぱいかなっていう。

「連衆」インド産の物が一番馴染みがある感じしましたね。

「会長」おっしゃる通りだと思います。

「連衆」白檀って感じします。

「会長」そうですね。扇子とかに加工されているのもインド産が多いです。ただ、中国のお土産とかの扇子なんかだとそんなにいい白檀使ってないので。台湾の白檀とかインドネシアの白檀とか使っているからあんま香りがしないんで、それで化学合成香料つけてる。だから臭いんですよ。あれはだから本当の白檀の香りでもなんでもないんですね。
今お回ししているこのぐらいの常温だとこのくらいの香りしか出ないんですね。ただ、いいものだと30年40年ずっと香り立ちます。8:21

「連衆」白檀のようにオイル系の香りのものでも3、40年揮発しないのですか。

「会長」しないと思います。現実問題としてこれなんかこんな形に割ってから3、40年経ってますから。はい。出し続けますね。

「連衆」すごいですね。

「会長」はい。不思議なんですけど、目方減るのかと思ったらそうでもないんですよね。

「連衆」(笑う)

「会長」不思議ですよね。

「連衆」不思議ですよね。揮発

「会長」どんどんどんどん揮発しているはずなのに、全然目方減らないんですよ。まあ乾燥して水分が飛ぶっていうのはすごく影響ありますよね。
正倉院なんかにも白檀残ってるみたいですけど。これなんかもう外側の方はどんどん香りが飛んでいるんでしょうけど、中の方むけばちゃんと白檀の香りすると思います。
恐れ入ります。アフリカの白檀なんかは割と数珠に加工されること多いんです。栴檀の数珠とかいって。

「連衆」この加工は中国?日本で作っているのですか。

「会長」あ、両方あると思いますけど。これは日本で加工するために。日本は穴を開ける機械がこういう風に板状のものを通していって、そこで上からガーッて穴開けていくんです。それでなるべくこれが効率よくとれるように。でやるんですが、中国はもっとなんていうかな。合理的というか原始的というかどっからでも取っちゃいます。だから日本と違って板状にする必要が多分ないと思うんですけど。
10:37

それとあの、違いはドリルの形。日本の場合は玉がみかん玉って言って、上がちょっと潰れたような形の玉、みかんのような形をした玉の作りなんですが中国はまんまる。

まああの、白檀については非常にわかりやすいんですが。あの、香道の流派でも志野流系統は全く白檀を使わないんです。沈香しか使わない。そのまえに黄熟香をみせましょうか。

もうひとつオイル系の香木で黄熟香というのがあります。これが二番目の仲間です。これもこのままお回しします。これもインドネシアで見つかった香木なんですが。黄熟香。黄色く熟すっていうやつですね。これもいろんな種類があります。色々サンプル探し回ってもらったことがかつてあったんですれけど十何種類みつかりました。これもその中の一つのタイプなんですが割と黒っぽく見えるタイプですね。これも常温で香りが出ます。やっぱりオイル系の香木ですね。

「連衆」先日の増上寺のイベントの蘭奢待は黄熟香なんですか?

「会長」ああ、はい。あの黄熟香というと一番有名なのが蘭奢待ですよね。で、その蘭奢待っていうのが正倉院の収蔵されているっていうことから大変著名なんですが、おそらく、おそらくっていうか私が知る限りでは正倉院に入ったのがいつだったかっていう記録ないんです。ある時に点検したところ、あれが入っていてそれで黄熟香という風に書いてある。
それが、後の世に蘭奢待になっていた。

「連衆」 (笑)

「会長」それも誰が名付けたのかわかんないんです。少なくとも私は知らない。はい。
まあ、いい加減っていえばいい加減ですね。あれが歴史的にも一般的にも一番著名な蘭奢待ですね。ところがあれは黄熟香ですから。見るからに黄熟香でしかもそんなよくないんですよ。黄熟香としては。

「連衆」笑う

「会長」もっといい黄熟香いくらでもあるんですよね。

「連衆」頼政でませんでした。残念でした。

「会長」はい。あの、でそれは一つその。黄熟香の蘭奢待として代表的な一つ。ところが、蘭奢待には他にも何種類かあるということがわかっていますし、徳川美術館には確か蘭奢待と言われるものが4種類あるっていう風に、私がよく存じ上げている副館長みたいな方大河内さんっていう方がおっしゃってます。で、研究論文も書かれて出しておられます。
だから、どういうことだったのかがよくわからないんですけれど、蘭奢待って名付けた香木が何種類もあったんですね昔。で、その中でまあ一番いい蘭奢待、難しいんですけど。香木として最も優れている蘭奢待がよく言われる頼政所持と。源頼政がなんかそれもよくわかんない話、鵺退治のご褒美でもらった香木だとか言われますが、どうだろうなって(笑)鵺そのものがだいたいねって話ですから(笑)

「連衆」(笑)

「会長」で、でもその頼政所持と言われる伽羅の蘭奢待はものすごくいいです。私が知っている限りの範囲でしか言えませんけど。もう素晴らしいです。

「連衆」それは伽羅なんですか?

「会長」伽羅です。もう本当に完璧な伽羅ですよね。こんな伽羅っぽい伽羅はなかなかないっていうような堂々たる伽羅です。

「連衆」徳川美術館のは伽羅なんですか。

「会長」四種類くらいあるんです。その中には多分正倉院のもあると思うんです。多分、家康ですから、持ってるはずですよね。それはあると思います。
17:06

「連衆」蘭奢待の定義は何なのですか?

「会長」だから、あの、誰かがそうやって名付けたんです。はい。そうとしか思えないんですよね。例えば私が持っている香木に仮に名前を付けますよね。まあ、そんな軽々しいことと一緒にはできないかもしれませんけど、いつか誰かが蘭奢待って風につけて書きつけたんですよね。そしたらもうそれが蘭奢待。そういうやつが多分何種類かあったと。ということだと思います。だから蘭奢待ってものすごく上等な香木の代名詞みたいなイメージみたいなのがあったのかもしれないですね。真偽のほどはわからない。研究されてる方も何人かおられたように思いますが、ちょっと正確なことはわかっていないんですね。

であの、三つ目の香木のグループとして挙げられるのが沈香伽羅の仲間。これは植物は何かっていうのはわかっています。ジンチョウゲ科アキラリア属といわれるの植物の仲間です。

これ一応お回ししますが、カンボジアで資料のために切らしていただいたものです。まだ多分数年しか育っていないのですが。基本的にはこれを切り取った時点で全く香木にはなっていないので香りはしないのが普通です。全く香木になっていない。で、そのサイズだとちょっと感じが掴みにくいので、これ輪切りにしたものを一緒に回します。持った感じ軽いですよね。これその皮の一部です。

「連衆」皮の一部。

「会長」割と繊維質の目立つ。

「連衆」皮ね。

「会長」これが鋸で引いた粉ね。すごい繊維っぽいですよね。輪切りにしたやつを持った感じって相当軽いですよね。

「連衆」これ開けて大丈夫?

「会長」はい。大丈夫ですよ。この植物は何も起きなければ、この様な状態だったらぷかぷか水に浮きます。沈んだり絶対しないです。

「連衆」あれは香木としては使えない沈香?

「会長」えっとね。沈香というと香木になっちゃいますから、元の植物だから「沈香樹」って言い方を私なんかもしてます。

「連衆」沈香樹。

「会長」はい。沈香の元の植物ですね。

「連衆」香木にはなってない。

「会長」なってないですね。これに毛が生えたみたいなやつが法隆寺の秘宝館に堂々と置かれてますが。堂々と。

「連衆」沈香って名前がついているんですか。

「会長」ええ。ゼンセンコウっていうやつかもしれないですね。こんな太いやつがドーンとした。ケースに収まってますけど。あれはこれのお兄ちゃんみたいな感じです。殆ど香木になってない。あんなの香木として見せたらあかんって学芸員さんに言いたいんですけど。

「連衆」ゼンセンコウってどんな字を書くんですか?

「会長」ぜんは「全く」、せんは「浅い」っていう、「浅い」っていう字を書く場合もあるし、ちょっとこういう、こういうって言っても

 <後ろの席で確認できず>  「全桟香」?
 
「連衆」くしのアサイだ。くしの。

「会長」こういう字を書いたりする場合があります。とにかく香木に関しては正確な知識があまり昔からなかったので、みんな適当にその尾ひれを付けたり、神格化したりして、扱ってきていたということがあると思います。未だにちゃんと研究されていないので。はい。誰かしてくれるといいんですけど。私?いえいえ。ちゃんとした植物学者とかそういう方がきちっと研究なさればいいと思うんですけど。

そういう研究ってなんていうかな研究資金があまり出ないんですよね。国とか文化庁とかそんなのが後押しして研究費用出してくれて、で、ちゃんと色々調べてくれる人がいればいいんですけど。なかなか。まともな研究は私が存じ上げる中ではないですね。で、そのアキラリア属の植物が通常は全く香木になってないと。で、そこで今ご覧いただいたみたいに皮が薄いですし、昆虫なんかが外からガリガリやって傷つけたり、穴開けたりとかしやすいそういう木なんですね。で、そういう傷がついたところにその木が育っている所まあ主に東南アジアのベトナムとかタイとかインドネシアとかそういうところですよね。に、生息している菌が真菌みたいな菌ですね。それが付着して繁殖を始めるということが起こりえる。そういう時にこの植物は樹脂を出す。樹脂を出して自分の患部を守ろうとする。そういう生体防御反応みたいな。そういう工夫をアキラリア属の植物は獲得したんですね。ていうか、そういう風にしてきたやつだけ生き残ってきたということになるかと思います。

まあ、植物って植物であるって時点で、もう動物と違って逃げて走ったりできないですから、じっとしながら自分の体をどうやって守るかっていうそういう工夫をした結果だと思われます。そういう工夫の結果、その傷口に向かって樹脂をどんどんどんどん出していったら、その組織が全くその元とは違うようなものになってしまうっていう変化ですね。それが起きた場所が沈香であったり伽羅であったり。

ですからこの原木そのものは非常に大きくなる植物ですから、その植物の中でどっかに香木だった個所があるかっていうのは外からでは見分けはつかないんですね。ただ、その健全だった部分っていうのは寿命が来たら枯れますから、枯れたらもしかして倒れたら土に帰るんですね。まあなくなってしまう訳ですが、その中で香木になった部分があるとすれば、そこがバクテリア分解できないので残ってしまう。ということで後々発見される。ということはあったんだろうと思います。
26:30

「会長」ありがとうございます。
もしあの、基本的なって言うか香木っていうものに関して何かご質問とかございましたらおっしゃってください。

「連衆」今の最後のその木の植物の名前は何ていうのですか。

「会長」ジンチョウゲ科アキラリア属のその下に何とか種、何とか種っていうのがあると思いますが、それは多分マラセンシスだと思います。

「連衆」バラセンシス?

「会長」マ、マラセンシス。

「連衆」マラセンシス。

「会長」ジンチョウゲ科アキラリア属マラセンシスとかアキラリア属なんたらかんたらというのが何種類かある。あるはずだと思います。それによって沈香の種類が分かれる。だから、タイのやつが何タラで、ベトナムのやつが何タラでっていう風にして枝分かれしているんですね。その枝分かれしている中に伽羅になるものがある。で、真南蛮になるものがあるっていう風にして枝分かれしていると。いう風に考えてます。証拠とか裏付けはないんです。多分そういうことだと思います。

ただあの、これは伽羅にしかならないっていうそれは見つかってて、それ今伽羅の栽培は行われています。

それで、じゃあちょっとこれから本題に入らせていただきますね。     
29:00

前回、甘いって味がどんなものかと。これを普通だったら、なかなか教科書的なものがない世界なので、これで甘いですよとかっていうのは証拠として示せるっていうことが普通はなかなかできないんですね。ところが昔、米川常伯って人が制定したって言われているんですけれども。これも当時の資料っていうのがあまり詳しいものが私は存じ上げないので   何ともなんですが、その米川常伯って人が定めた五味の教科書的な存在。いわゆる古五味香ですね。古五味香十種。それが現代でも残っておりまして、それがたまたま手元にございますので、それを焚けばそれ教科書にできる。甘いだったらこういう香木を聞けば甘いっていうのが出ますよっていうのが古五味なんですね。

で、お手元に資料をお配りしてますが、これは出展はこいつなんですね。早川甚三さんて方が昔書かれた「香道」って言われる本。142頁~145頁をコピーして皆さんにお手元にいってます。これはえっとですね。六国傳内辨解秘註書(りっこくでんないべんかいひちゅうしょ)といわれる文献があって、これ143頁に出てますが、五味之傳(ごみのでん)っていうのがあって、その中に今日は苦味ですから  

苦味 苦(く)は黄柏(おうばく)の苦味・・・黄柏に限るにはあらず黄蓮(おうれん)にても何にても苦き藥種をきざみ或いは煎ずる匂ひに似たるなり

非常に抽象的と言えば抽象的ですが、苦い漢方薬を刻んでいる時に感じる苦味。とか、煎じている時の匂い。それが苦いということになっていますね。で、じゃあこの苦みをちゃんと出すことが出来る手鑑、手本木(てほんぼく)として、さっき申し上げた米川常伯が定めたという十種があるんですね。で、甘いっていう時は『浅間』っていうのと『先鉾』っていうのを出したんですけど。今日はテーマが苦いですので、「おもしろ」って読むんだと思うんですけど、『面白』とそれから『志(こころざし)』この二種類を今日は用意しております。

これがその名香十種の極め状のコピーしてありますから、これをお回しします。

(名香極め状のコピーを回す)

「連衆」これ本に載ってた。似たようなの。写真が載ってた。

「会長」それ出てましたっけね。ちょっとすみません。

 先に『面白』という方を焚きますね。35:40

ちなみに、今日は室温が24.8℃湿度が53% まあ条件としてはよろしい方かなと思います。寒い時期は湿度20%を切っていたことがありましたらから。

ちなみに今、焚こうとしている銀葉の表面の温度をこういうセンサーで測ってみているんですが、正確かどうかちょっとわからないんですけど、現状ですね110℃弱です。

伽羅・面白・1回目・110℃弱 始め

前回の『浅間』も『先鉾』もそうだったんですが、やっぱり昔の名香って立ち始めからどんどんどんどん良くなるんですよ。だから1周2周回したくらいじゃ全然力落ちないんですね。また後で時間、余ってるかどうかわかんないですけど、後でまたお回しするようにしますね。

(極め状コピーを見せながら)

これは蜂谷式部ってありますが、これがこの当時の家元。志野流の家元ですね。実際この極め状を書いているのはこの右にある藤野専齋。この蜂谷式部がまだ若年で家元としてはそんなに多分しっかり活動できてなかったと思われます。それで藤野専齋が後見人みたいな形で色々と行っていたという風に思われます。この当時の真の実力者が藤野専齋だったんですね。
 
「連衆」笑
 
「連衆」あて先は長谷川?

「会長」読めないんです。

「連衆」藤野さんが<聞き取れず>書いて、蜂谷さんが署名だけして。家元として。

「会長」そうですね。

「連衆」あて先は長谷川さん。
44:55

「会長」そうですね。この長谷川さんって人がどういう人かっていうのはわかっているんですけれど、三重県の豪商ですね。おそらく歴代長谷川家は志野流のパトロンやってたんだと思います。

「連衆」先生すみません。確認なんですけど、伽羅とかを聞くと<聞き取れず>の時にはある香りがちょっとこう嗅いでいて時間が経つとまた別の違った香りがいろんな香りがしてきますけど、この『面白』というのはその中でも苦いっていうのをメインにずっと出してきているって考えていいんですか?一味立ちみたいに。

「会長」はい。そういうふうに書かれてもいますし、多分そうだろうと思います。ちなみに今、これ回した中で、甘さを感じた方っておられますか?

「連衆」(手を挙げる)

「会長」はいはい。これね、見てると「始め甘く、中程より終わりまで苦し」という風になってますが。焚き始めに私が最初乗っけた時点では、そんなに甘さっていうのは感じなかったですね。
途中から見え隠れする形なんでしょうかね。まあ、今おっしゃったようにベースとしては  苦味がずっと通っていて、そこにちょっと甘みが後ろの方に絡んでいるっていうそんな感じでしょうね。

『志』っていうので、これは「始め苦く、終わり辛し」っていう。次焚いてみますね。

これ106℃位でまわします。50:25

実際、聞香炉で皆さん焚かれる時に何度かってわかんないから、あまり言っても意味がないかもしれないんですけどね。大体これで測ってみたらそんな感じです。『志』。
 
伽羅・志・1回目・106℃ 始め

「連衆」この袋というか、入っていたものは竹皮紙(ちくひし)になるんですか?

「会長」お回ししている香包みですか。

「連衆」はい。

「会長」はい、これね。紙の香包みの中に竹皮紙があってまた包まれていますね。

竹皮紙ということは竹の薄皮を和紙で裏打ちしている訳で、通常畳んだ所の表面は和紙ですよね。和紙の側が上に来ていますよね。そういう包み方しています。別にそんなにこう事細かな決まりがある訳ではないようですね。志野流でお伝授受ける時に出てくる名香なんかは、きちっともう竹皮紙の折り方が決められてますから。どこにどう折って、どこに字を書くとかって全部決められてますから。こんな昔はそんなことなかったと思います。

「連衆」通電してなかった。ちょっと戻しましょうか。

「会長」ああ、これね15分で一応切れるようになってるんで。はい。ゆっくり回ってると途中で切れますね。

「連衆」これ最初に。間違えた間違えた。最初に。

「連衆」この香りって苦味から辛みに変わるとしてましたっけ。『志』ですけど。

「会長」はい。志は始め苦く、終わり辛し。どっからどこまでが始めで、どっからが中程でってわかんないですけどね。

「連衆」最初聞かせていただいて甘苦い感じがしました。

「会長」あ、えっと。

「連衆」『志』。

「会長」『志』が。
まあ、本当に言われているような味しか持っていないんでしょうね。<聞き取れず>ってことはないんでしょうね。
55:00

「連衆」甘い。

「会長」甘くなってます?

「連衆」これが和紙ですね。

「会長」左が竹皮紙。

「連衆」左が竹皮紙。

「会長」結構大きく作ってますね。

「連衆」これぐらいの大きさ。

「会長」えっと、それ原寸大です。

「連衆」え、これ原寸大。えー、大きいですね。

「連衆」この見えている方が竹皮?使ってる裏側がこれが竹?

「会長」こっちが出てるのは和紙の部分が出てます。端の方にちらっと見えているのが竹皮紙皮。

「連衆」端っこの方に。

「会長」はい。左側の方にちょっとこう筋っぽく薄茶色に見えているのが、それが竹の皮です。

「連衆」はい。ありがとうございます。

「連衆」竹皮紙っていうのは竹そのままなんですか?

「会長」えっと、まわり終わった時の温度を。
最初と違って香木が置かれている真上では測れないので、ちょっと脇で測りますね。120℃ですね。だからやっぱり回っている間に香炉がどんどん温まるんですね。それでだいたい返ってきたら最初よりも大分ちょっと高めになってます。だけど香木がその分ちょっと弱ってくるからちょうどいいのかもしれないですね。まだまだバリバリですよね。後でもう一回お回ししますね。

伽羅・面白・1回目・120℃ 戻り

「連衆」甘くないですか?

「会長」ちょっと甘いです。
辛くもありますよね。これって『面白』ですよね。

「連衆」そうです。

「連衆」全然苦味を感じないです。

「会長」うん。

「連衆」辛みもあって、渋みもある感じ。

「会長」あの、苦みなくはないんですけど、なんかこう奥の方にいっちゃってる感じがします。後でもう一回まわします。
60:00

「会長」温度の、室温の感じはいかがですか?一番奥の方あたりは暑かったり寒かったり。

「連衆」大丈夫です。

「会長」大丈夫ですか。

「会長」今、昔の何百年か前かちょっと存じ上げませんが、昔の古い名香のちょっとどんな味がどう出るかというのをお聞きいただいていますが、でも、書いてある通りかというとなんかそうでもない感じが。微妙ですが。甘いの時もそれがあったんですよね。なんか『浅間』と『先鉾』と書いてあることが逆なんじゃないかって思ったようなこともありましたね。まあ、さほどその味という風なものが捉えにくいのかなっていうところでしょうかね。

近現代の香木だったらどうかというのをちょっと焚いてみようと思います。これも伽羅なんですが、見かけ大したことないんです。ぱっと見、なんか大したことない伽羅かなって思ってたんですが、焚いてみたらなかなかどうしてというやつ。春霞という。前も何かの時に焚いていると思うんですけど、非常に面白い伽羅なんでまた焚くことにしました。これもやはり苦味を持っておりますが、その苦みの出方が他の味と絡み合ってくるんで単純には苦いって訳にはいかないんですけど。

110℃で回しますね。春霞。

緑油伽羅・仮銘 春霞・1回目・110℃ 始め
1:05:30

「会長」春霞です。

春霞って外見、見かけの顔がぱっと見そんなに良くなく見えるんですよね。いわゆる新伽羅って言われるような樹脂化の密度がそんなに濃くなくて浅い、或いは若い。そういう印象を受けるんですね。ぱっと見。焚いてみたら全然違うんですけど。非常に面白い変わった伽羅ですね。
で、中はものすごく詰まってますが、断面見ていただいたらわかりますけど、真っ黒々ですよね。非常に樹脂詰まってる。だけど、水に沈むような濃度じゃないんです。非常に面白いですね。

「連衆」強烈ですね。

「会長」はい?

「連衆」ハッカのようなスッという感じなんですね。

「会長」ああ、はい。なんか、そんな軽薄じゃないけど割と華やかな立ち方をしますよね。

「連衆」華やかというか、結構主張してますけど。

「会長」はい。

「連衆」<聞き取れず>っぽいです。

「会長」最初あの霞のイメージかなと思ったんですけど、なかなかどうして。

「連衆」薬草みたい。

「会長」薬草。

「連衆」薬草風呂。

「会長」114℃ですね。戻ってきたら。

伽羅・志・1回目・114℃  戻り

「連衆」春霞は何度でしたか?

「会長」えっと、何度って言いましたっけ?

「連衆」110…。

「会長」110℃くらいでしたっけ。
まああの、最近というか数十年前の物だと思われますがそんなに古くはないんですけど、一応よく立つ伽羅なんで火加減おさえめにしました。

「連衆」春霞ですか。

「会長」そうです。
もうちょっと温度を高くすると苦味がもっと出たかもしれないんですけど。あの、古五味この二つとも後でもっと温度上げてもう一回まわしますね。

「連衆」『志』は二回目回ってきた時にちょっとこう苦味っぽい感じがしました。

「会長」はい。多分、苦みの持ち味の一種じゃないかと思います。

「連衆」春霞は常温でも結構香りますよね。

「会長」そうですね。やっぱり伽羅ですからね。樹脂分の融点が低いというか、割と低い温度で揮発する。そんな印象がありますよね。
それでこれ、今見ると、竹の皮の繊維が写ってますよね。

「連衆」でもあくまでも、和紙を張った和紙越しに見える竹の皮ですね。

「会長」そうです、そうです。
次あの羅国をちょっとお回しします。ここら辺の木肌ですね。いわゆる顔。これベトナムの沈香のある種典型的な顔してます。だけど、断面とかそれから割った所とかみると、そんなに樹脂化の密度が濃くないんですね。だから、香木としてはそんな大したことないんです。だけど、ちょっとこれが焚いてみると大したことないなりに、逆に個性がわかりやすいです。これがものすごくいい羅国で、伽羅立ちとかするやつは木所なんだろうってよくわかんなくなるような立ち方するんです。だから鑑賞にはいいけど、組香なんかにはちょっと難しくて使えないっていう。だけどこれは組香に使って羅国だなっていう風にわかりやすいケースで。で、そういうものの立ち方をちょっと聞いていただくと、割とその苦味がわかりやすいかもしれない。

(羅国・仮銘 雪間の草 香木を回す)

「連衆」お戻しします。

「会長」はい。

雪間の草という仮銘をつけました。

雪間の草まわしますね。124℃位。

羅国・仮銘 雪間の草・1回目・124℃
1:20:00

「会長」あまり、樹脂化がそんなに進んでいないっていうことでちょっと高めにしてみましたが。

「連衆」今までで一番苦味を感じました。

「会長」あ、これが。ああそうでしたか。

「連衆」雪間の草。

「会長」まあ人それぞれでしょうけれどね。さっき言った、こういう木ってさっき申し上げたように、一見そんなによくない木なんですけれど、あの、意外とこういうタイプの方が香りが何ていうかなクリアに出やすいんですよね。すごくこう奥行きがあって深く絡まってっていう風な複雑な立ち方よりは、もう少しシンプルな立ち方をしてくれる。それで掴みやすいっていうのはありますよね。

ちなみに今、戻ってきた春霞122度になってますね。

緑油伽羅・仮銘 春霞・1回目・122℃ 戻り
1:26:00

これもまだまだいけそうな感じですよね。なかなかいい木ですよね。

まだ雪間の草が回ってますが、じゃあ次、真南蛮タイの沈香。今の雪間の草はベトナムの沈香ですがこれタイの沈香です。タイだったらどうかっていうのをちょっと回してみますね。この木はねほぼかなり樹脂化の密度は高くなってますね。これはなんていうか、江戸時代には日本に入っていたというのがわかっている。珍しい木ですね。由緒がある程度わかっているという。朧月夜。
 
(真南蛮・仮銘 朧月夜を回す)

「連衆」雪間の草って<聞き取れず>おっしゃってた顔って部分以外は割とこうあっさりしていますよね木が。それはある程度そこ以外は樹脂化がされていないっていうこと。

「会長」そういうことだと思います。発見されるのが数十年早かったって感じでしょうかね。惜しいって言えば惜しいんですけど、逆にわかりやすく立ってくれるから貴重な木ではありますよね。
最初、外見た時に<聞き取れず>外見から見た時に良さげだなと思ったんですけどね。  割ってみたらあれっていう感じで。なんじゃこりゃっていう。

(連衆笑う)

「会長」まあ真ん中に空洞もありますしね。空洞の中はちなみにほぼ腐ってますから、ほじくり出してここ焚いたら、やっぱりでも似たような羅国の味は出ると思います。
ちなみに、ここ割ったとこちょっと赤っぽいですよね。赤っ茶けた所ありましたよね。ここは、水分の浸食を受けた個所ですね。だから丸太の所に割れ目があって、その割れ目の中に水が入ってきてた。で、それでちょっとこの辺腐ってます。だからこれは、何かで硬いものでこすったらボロボロって落ちるような場所ですね。それでも香木の香りはすると思いますけどね。

「連衆」そういう所は腐っている所というのは焚けないんですか。香木として使うということはない?

「会長」焚けなくはなくて、逆に面白いとは思いますが、通常販売する時はこういう所は避けて、もうちょっと、もうちょっとちゃんとした所。そこから先に販売します。最終的にもういい所で売るところがなくなったらここら辺も販売するかもしれない。

「連衆」笑う

「会長」ですが、割と最後の方に取っておくみたいな感じですね。最初からそういう所、ちょっとそういう所こそ焚いてみたいっておっしゃる方がおられたら、おっしゃっていただいたらちゃんと販売します。ちょい割安で。

「連衆」いわゆる訳アリですね。

「会長」訳アリ、まあそうですね。
だけど、本当は結構楽しいですよ。こういうところだったら、どういう立ち方をするんだろうっていうことが非常に面白いことは面白い。でも、何もそういうことを予告編なしでいきなり販売すると「何じゃこれは」ってなるかもしれないので。はい。

「会長」雪間の草は面白いですよ。なかなか。

「連衆」ここがなかったら消えてる。その時にこれを下から押し上げて暫く待つと。暫く待つ時間が結構長いんです。

「会長」いわゆる長押しという感じですかね。

朧月夜。これ115℃位になってます。

真南蛮・仮銘 朧月夜・1回目・115℃
1:35:15

「連衆」なんておっしゃいました。

「会長」115位です。位ですけどね。
姫路藩の家老の家にあったというやつです。全然手つかずで塊のまんま名前も付けられずころっと入ってたというやつです。多分、一応、香木持ってたんでしょうけど全然使ってなかったんですね。

「会長」午前の部ではちょっと時間が足りなさそうだったのでお回しできなかったのですけれど何とかなりそうなので。インドネシアの沈香です。インドネシアの沈香が苦かったらこうなる。お回しします。

(寸門陀羅・仮銘 柴の戸まわす)

柴の戸という仮銘ついてます。

午前中は時間なくて二つ飛ばしちゃったんです。

「連衆」今の雪間の草、一度目はシンプルに苦味立ったんですけど、今二度目回ってきたらとっても甘いんです。

「会長」そうですね。

「連衆」変わるんですね。

「会長」変わりますよね。

「連衆」年輪がくっきり見えるんですね。

「会長」はい(笑)そういうタイプですね。

「連衆」雪間の草何度でしたか?

「会長」忘れました。

(連衆笑う)

「連衆」測られないから。

「会長」多分122℃位です(笑)

(連衆笑う)

「会長」ぐらいということで。すいません。大体でも最初よりは必ずちょっと上がって返ってきますよね。

「連衆」さっきの下がってました。雪間の草。

「会長」そうでしたか。

「連衆」はい。

「会長」110でいきます。

「連衆」柴の戸。これから回る。

「会長」これからいきます。これ多分、インドネシアの沈香ですけど割とよく立つんじゃないかと思うんで、ちょっと低め。沈香にしてはやや低めでやってみます。
柴の戸です。

寸門陀羅・仮銘 柴の戸・1回目・110℃
1:47:15

このインドネシアの沈香に関しては、御家流系統の方にはお馴染みがない種類の木ですね。志野流では佐曾羅ですが、御家流では佐曾羅というと白檀系統か、これから回す赤栴檀(しゃくせんだん)かっていう風なことが一般的ですので、普段からはインドネシアの沈香に限っては使っておられないはずです。ところが、昨今、真南蛮でいいのが殆どなくなってしまってますから、真南蛮としてこのインドネシアの沈香が売られるようになってきています。ですから、真南蛮として聞いている方がおられるかもしれないですね。こういうタイプを。おそらく独特の塩はゆみ(鹹)がありますから、それが真南蛮と共通するところがあるんじゃないかと。それで真南蛮の代用品として使われるってことが起きてるんだと思います。

だんだん時間が怪しくなってまいりましたが。
1:50:20

せっかくなので赤栴檀。今申し上げた御家流で佐曾羅として使われることが時々あるという赤栴檀。これを私本当にいつも申し上げてますけど、何の木の植物だか知らないんです。わからないんです。ところが、なぜこれが赤栴檀だと言っているのかといいますと、まあ、昔の名香にある赤栴檀ですね。それ何種類か嗅いだことがあるんですけど、みんなこの手の木なんですね。なのでこいつも赤栴檀だろうという。そういう感じです。香木として日本に入ってきているのかどうか。何がきっかけで日本に入ってきたのかちょっと知らないんですよね。赤栴檀として輸入するってことはないので。結果的にはこれは赤栴檀として使えるっていうそういう感じです。ちなみに鋸で引いた粉も入れておきます。結構赤いです。あから橘という仮銘を付けました。私の感覚ですけど柑橘系の感じするんですね。みかんの皮燃やしたみたいな味がする。それで橘っていう柑橘系の植物の名前を仮銘に入れたんですが。

(佐曾羅・赤栴檀・仮銘 あから橘 香木を回す)

「会長」112℃で。

1:54:40

私の指先の感覚でいくとちょっと温度高めなんですけど。測ってみたら112℃だったんですね。一回これで回してみます。

あから橘です。

佐曾羅・赤栴檀・仮銘 あから橘・1回目・112℃  始め

「連衆」115です。戻りが。

「会長」よくぞ。115ですね。

「連衆」5℃上がりました。

「連衆」柴の戸戻り。最初は110。

「連衆」あれ?朧月夜じゃない?朧月夜の戻りだよ。

「連衆」朧月。

「会長」失礼しました。朧月夜。115ですね。

真南蛮・仮銘 朧月夜・1回目・115℃ 戻り
1:56:55

「会長」そういえば、このお回ししているこの四方盆、この素材が黄柏(おうばく)の木です。いわゆるキハダといわれるたぐいの植物です。それから、メグワっていう女の桑と書きます。女桑って言われるんですが、桑とは全然関係ない植物です。女桑っていうのは。あの、木目は桑っぽいんですね。それ以外は別にクワとは全然共通性はないんです。この黄柏っていうこれが「陀羅尼助(だらにすけ)」ですか、漢方薬の苦い胃薬あれの素なんです。だから、これかじれば苦いはずなんです。ちょっとそれかじる訳にいかないんですけど。はい。

だから、これ指物にする前のサンプルのキハダがどっかあったはずなんですけど全部指物師さんの所に渡してしまっているから、ちょっとかじれないんですけど。
大体苦みっていう感覚はなんとなく捕まえやすいかとは思いますが。

「連衆」温度。

「会長」はい(笑) 先ほどの、まだもう時間ちょっと経ってしまったんですがすみません。せっかくなんで古五味をもう一回まわしますね。それで、今これ『面白』なんですが、先ほどよりもちょっと高めに設定してみたらどうなるかという。126℃になります。
面白です。

伽羅・面白・2回目・126℃
2:01:50

おそらく、昔の名香の焚きがらを何回も焚いて使ったっていうのも基本的にはだんだん温度を上げていったんだろうと思います。

「連衆」なんか美味しそう。

「会長」次、この『志』もほぼ同じ126℃に設定しました。志です。

伽羅・志・2回目・126℃
2:04:45

「会長」121。柴の戸の帰ってきたやつ。121℃位。朧月夜の火末とちょっと似てるところがありますね。

寸門陀羅・仮銘 柴の戸・1回目・121℃ 戻り

「連衆」あでやかな感じがする。まろやかな。

「会長」そうですね。割とインドネシアの沈香って結構クールな立ち方するのが多いんですが、割とまろやかになってますね。

「連衆」赤栴檀ってこういう風にスッとしているんですか・

「会長」はい。

「連衆」   今まで見せていただいたよりもつるっとしているような感じ。

「会長」ああ、はいはい。

「連衆」<聞き取れず>

「会長」なんの植物だかわからないんです。どれが一番赤栴檀っぽいのかっていうのがわからないんですが、私が見たことがある何種類かの赤栴檀はみんなこんなつるっとしています。
基本的には引粉の方が香りがわかりやすい出やすいといいますけど。表面積が増えてるから。

「会長」あ、これ先ほどの古五味の苦(く)の『志』の表現ですが、他の文献には「火末にいたり少し甘み」っていうふうに書いてあるのがありますね。ちょっとこれ出展がわからないんですけど。2:13:40

「会長」あ、それ切れてます。

「連衆」切れてます。でも赤い。

「会長」赤いのは切れてる。

「連衆」そういうことなんですか。切れました。

「会長」ちょっと押してください。

「連衆」すいません。

「会長」っていうか、赤いのは一番熱くなっていたのかもしれない。3段階で。

「連衆」3段階?

「会長」青、オレンジ、赤とだんだん温度が上がるんですけど、一番上になっていたのかもしれないです。切れてたんじゃなくて。
2:17:20

「会長」133℃です。<聞き取れず>上がってます。

佐曾羅・赤栴檀・仮銘 あから橘・1回目・133℃ 戻り

赤栴檀ですけど、色がこれ赤栴檀色じゃなくて沈香と同じような見かけだったら、わかんないかもしれないですよね。昔、明治からいつの時代だかはっきりしませんけど、香木に炭塗って外見でわからないようにしてたっていう話がありますよね。
意外とこれも赤栴檀も面白い。

(面白が戻る)

「会長」まだまだ立ちますね。すごいな。益々よくなっているような。

「連衆」『面白』の苦味っておもしろい苦みですよね。私は好きですけど。

「会長」それでこんな銘つけたんですかね。

「連衆」面白い苦みだなあ。あまり聞いたことない。

「会長」で、あの『志』の苦味もちょっと独特な感じの苦味なんですよね。なんか典型的な苦みっていうのが、まだちょっとよくわからん感じですよね。

135℃になってます。相当高くなってます。『面白』。でも、これ別に高すぎる感じしないですよね。

伽羅・面白・2回目・135℃

「連衆」まだどんどんいけそうだから、なんかもっと回していただきたくなる。

「会長」回しましょうか。はい。もう一回。途中でもしかしたら切れるかもしれないけれどそしたら入れていただいて。なんかこう平気で25分位オーバーしていますが。よろしかったらたっぷり聞いていただいて。

ちなみに、室温24.3℃、湿度53%

「連衆」申し込んだ時は2時~4時半にまでになってますけど。

「会長」あ、そうですか。2時から4時半。

「連衆」14時から16時30分

「会長」あ、そうでしたか。

(連衆笑う)
「連衆」え、だって6月29日ご注文ありがとうございましたでしょ。

「会長」私全然こういうの見てないんですよ。わお。16時半ですね。ということは、別に今、余裕でまだ。

「連衆」はい。焦っていただく必要ないと思います。

「会長」私の中では2時間っていう頭でやってるから。

「連衆」前は2時間だったんです。

「会長」前は2時間でしたよね。本当は前に戻そうと、一回ちょっと短めに設定しようとしたことがあって、それやっぱり無謀だということで。はい。

「連衆」これは『面白』の5回目。

「連衆」これは『志』の4回目。

「連衆」本当に<聞き取れず>長いですね。どんどん良くなってきちゃうから終わらない。

「会長」(笑)

「連衆」枯れるんですかね?

「連衆」枯れないかもしれない(笑)

「会長」だからこうなってくると、聞香炉で炭団で聞香するっていうのは無理ですよね。こんなに長く炭団持たないですもんね。

「連衆」すみません。香盆って香道のお盆だと少しお値段が高いと思うんですけど、茶道の方の香盆だと少しお安く手に入るような気がするんですが、その差というか違いはどういうこと何でしょうか。

「会長」指物師さんに聞いたんですけど、今のさっきの四方盆で作ってくれている指物師さんは千家十色の下請けの工房にいる指物師なんです。で、お茶だったらもっと安いんと違うかって言うと、はりが多いんですって。女桑ですけど。はり。

「連衆」はり。

「会長」はり。ベニヤにはってるみたいな。要するに他の素材に薄く剥がした女桑を貼り込む。そういうんだと安いんですって。同じ職人が作っても素材と、それから扱いの仕方で値段が変わってるみたいですね。

「連衆」そうですか。

「会長」はい。

「連衆」あまりにも値段が違うのでどういうことなのかなとずっと思っていたんです。

「会長」一つには、作ってるロットの違いもあるかもしれないですね。お茶道具だといっぺんに作る量が多いとその分、値段を抑えさせられるってことがあるかと。それもあると思います。まあだから、そんなに変わりないっていうこともありますね。まあ、寸法さえちゃんとしてれば、ちゃんとお茶の物でも対応はできるかもしれませんが。見かけがそんなに変わりないですからね。
2:26:00

「会長」130℃ですね。『面白』。

「会長」133℃ぐらいです。

「会長」4時半までだったら余裕だと思うんですけど。本当は多分書き間違いだと思うんですけど。

「連衆」そうなんですか。

「会長」多分そうだと思います。

「連衆」あらま。

「連衆」<聞き取れず>ですけれど、どのくらい回せるんですか。どのくらい使えるものなんですか。

「会長」一回聞いて、焚きがらをってことですか。

「連衆」はいそうです。

「会長」ああ。時によっては3回4回使えるんじゃないでしょうかね。今、集中的に長いこと焚いてますけど、これを細切れにやれば何回かに分けて焚けば。

「連衆」火が、温度が普通になったら、そのまままた保存して、他の日に<聞き取れず>。

「会長」まあ普通、香木の種類とか品質とか、それによって大きく違いがあると思いますけど、昔の人は例の蘭奢待が「十返の法」ってありますよね。それは焚きがらを焚いて使ったということで、こういう風にやればそれができますよっていう何かそういうノウハウがあったんでしょうね。
2:29:25
多分、最初焚いた時に火加減が強いと、もう後が続かない。だからだんだん温度を上げていくふうな使い方をすれば数回できると思います。普通の香木でも。ただ、温度設定を徐々に高くして使っていくってことは実際問題として難しいことは難しいですよね。普段からどうやってご自分の火加減を把握しているかっていう。それ次第です。

「連衆」さっきの青いのが低くてってそれでやればいいんですね。

「会長」電気香炉だったらそれはやりやすいです。普通の聞香炉だと難しいですけど。

まあまた、こんな調子で来月は六国で、再来月にまた五味の続きというふうになろうかと思いますので、またご都合がつけばお出ましいただければと思います。
一応、まだ時間…まあ。4時半っていうのは大きな間違いで4時だと思うんですけど。

(笑)

「会長」皆さん全員落ち着かれてて、立ち上がる気配が全く感じられないんですが、お急ぎの方もおられるやもしれません。とりあえずこれで終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございます。

「連衆」ありがとうございました。

「会長」まだ聞ける人はどうぞ聞いて帰ってください。
2:31:50

「連衆」書面で藤野専齋さん、蜂谷が出てた書面の長谷川さんて、はせがわじろべえさん。
 
「会長」じろべえ
 
「連衆」だったと思います。
 
「会長」あ、そうですか。
 
「連衆」三重の豪商っておっしゃいましたよね。あの時代に木綿問屋で<聞き取れず>三重の松坂の木綿問屋。
 
「会長」あ、そうです。その長谷川ですね。
 
「連衆」そうですね。そうするとあれ「じろべえ」だと思うんですけど。
 
「会長」じろべえって言われると確かにそういう感じですよね。
 
「連衆」もう一度見せていただけますか。

「会長」これですね。まちがいなさそうですね。

「連衆」崩し字で見ると大体そうかなって感じで。

「会長」そういわれてみればそうだったと思います。治郎兵衛。ありがとうございます。

「連衆」三大豪商。

「会長」三大ですか。

「連衆」三井と長谷川さんと、もう一人誰だっけ。三重県の松坂の。

「会長」ああ<聞き取れず>

「連衆」はい。進出されてますね江戸時代に。で、ずっと続いてたお家で。他は結構途中でおやめになったみたいですけど。

「会長」ここはねいいものお持ちなんですよ。長谷川家は。もうここにあるものは確かです。出所として。


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