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古賀慎一郎
2023年1月19日 10:34
よく、ふと思い出すひとつの光景がある。それは本番前、ちあきなおみのステージドレスの背中上部のホックを私が留める姿だ。「ちあき君が呼んでるぞ。君の大事な仕事だ」 いつもそう言って私を楽屋へと促したのは、松原史明だった。 楽屋へ入ると、全身鏡前でその人が待っている。 私は微かに震える手でホックを留める。と、その人は大きく息を吐き、ちあきなおみとなるのだ。 本番終了後は、同様にそのホックを外
2023年1月15日 10:24
~それぞれの愛~ コンサート〔百花繚乱〕(作詞・水谷啓二 作曲・倉田信雄) オーバーチュアが静まりドラムがカウントを取ると、ステージ両サイドからのサスペンションライトがステージ中央で交差し、おぼろげにちあきなおみの姿を照射する。前奏に乗って徐々に両腕を下から横に広げてゆくと、脇下から手首下まで仕掛けられた裾が孔雀の羽のように全開となる。そのシルエットからは一線級歌手のオーラが漂っている。
2023年1月8日 10:24
歌手・ちあきなおみの生涯を顧みれば、一九六九(昭和四四)年にメジャーシーンにその姿をあらわし、アイドル路線を経て、一九七二(昭和四七)年に歌謡界の頂点に立つ。その後、ドラマチック歌謡路線がつづき、船村演歌で歌手としての低力を見せつけるも、歌の方向性の違いから、郷鍈治との邂逅を機に、業界のあらゆる障壁に屈することなく、メディアから姿を消し独自の路線を進んでゆく。ジャズ、シャンソン、ファド、日本の名