不快な心地良さ_オテサーネク妄想の子供
まだサブスクとかなかった20年近く前。
行けるツタヤとゲオの類をハシゴしまくったけど無くて諦めて忘れていて長らく観なかった作品。
U-NEXTはそういう部分の補完に優れたラインナップだなあ。
大昔、別のサービスに加入した時にお試しでついてきたときは、全く良さに気付かなかったし解約の仕方が鬼で印象すこぶる悪かったのに。
夫が仕事で滞在する国で唯一楽しめるのがU-NEXTらしくそのために再契約。
U-NEXT=夫のもの という感じだったのでしばらく手をつけていなかったけど
ラインナップをチェックするだけでも楽しい。
すごい、すごいや、あっぱれだよ。
オススメサーフィンで辿り着いたオテサーネク。
当時の思い出がグッと甦った。
好きなように生きる事ができた、かわいくてなんだかずるいあの人、元気かなあ。
その人が好きだったんだよ、ヤンシュヴァンクマイエル。
子供を持つことが正義な世の中の産婦人科、待合に並ぶ妊婦、子供ができない夫婦、悲しむ妻、夫は子供の幻覚が見える、悪気なくデリカシーのない女児
はい、もうね、私ここで白旗です。
冒頭10分でもう「しんどーーーーーーー」
で、みんな悪気がないんです。
悪気がないのが最高に最悪なんですよ。映画でも現実でも。
ご飯のシーンも美味しくなさそう。
美味しい料理を作りそうな奥さんなのに。
女児も女児で行儀が悪すぎるし。
絵に描いた授乳シーンは不快というよりゾッとした。
まるで聖母のようにベールを纏う妻。美しいはずなのに。
妻にとってはやっと訪れた幸せなのに、不愉快なのは何故か。
こんな不快のオンパレードなのに、その描き方が見事で逆に心地良くなるのが不思議。
ストップモーションアニメのテンポの良さなのか、妙なアップのカットが多いからなのか。
特に何度かあるペドフィリアの爺さんのシーンは構成が同じで、コントっぽくもある。
ちょっと癖になってしまう。不快なんだけどね。
この不快さを抜かりなく絶え間なく描き続ける凄さ。
最近の「不愉快がお上手」監督だと、アリアスターとフィルティペット(わ!U-NEXTで観れるじゃんMADGOD!)。
どちらも悪夢の佃煮、酷すぎて麻痺させるってか麻痺するしか生きて観終えることができない不快さ。それも見事だと思うし好きなんだけど。
ヤンシュヴァンクマイエルはアリスやファウストも共通して「不快を愛でる」っていう独特なゾーンに持って来させる不思議な監督。ベースが童話や寓話だからなのかな。
で、ヤンシュヴァンクマイエルは奥様もアニメーターとして制作に参加しているのも、本物感があるじゃないですか、何が本物か偽物か知らんけど。
ホラー映画とかの「ほうら、嫌でしょー、嫌な気分になるでしょー、怖いでしょー」じゃなくて「ほうら、だんだん好きになってくるでしょー、ほらあー、こういうの私は好きなんです」っていう
何を求めてこの映画観てるんだろうって気になってくる。ノージャンル。
この作品のお話に関しては、一応の赤ちゃん、オティークを女児が育てようとする展開も良くて
赤ちゃんが欲しい夫婦のエゴのようなものが女児の兄弟が欲しいエゴに繋がる
オティークは勝手に作られた、可哀想な怪物で、この不快オンパレードの中だとなんの憎しみも恐ろしさもなくて、ちょっと可愛くも思えちゃうっていう。
観終えた後、してやられたり。という気分になった。