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出版あれこれ

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出版にまつわる記事を集めました。
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記事一覧

【校閲ダヨリ】 vol.54 ウィキペディアの活用法

みなさまおつかれさまです。 数カ月ぶりとなってしまいました。すっかり花粉症の季節です。 あくまで本業ベースの物書き(私)にとって、ようやく魔の月間が終わりを迎えようとしています。 今回は、我々校閲者が「喉から手が出るほど」使いたい、ウィキペディアについてのお話です。 最初にお断りしておきますと、本稿に「ウィキペディアをこき下ろそう」とか、「みなさんに使うことをやめさせたい」といった意図はありません。 誰もがアクセスしやすい知の泉は紛れもなく世界の財産のひとつだと考えています

【校閲ダヨリ】 vol.51 校正と校閲の違い

みなさまおつかれさまです。 また年が明けました。(もう1月もおしりから数えたほうが早いですが) 年末年始も何かと動いていた私ですが、「なんとなく気持ちが切り替わった」ので、新年という概念は不思議なものですね。 本年も、マイペースではありますが更新をしていきたいと考えています。読者のみなさまに感謝をしつつ、スタートを切らせていただきます。 さて、2021年1回目は、よく尋ねられるこんなテーマで進めたいと思います。 「校正」と「校閲」って、どこがどう違うの?     私の

【校閲ダヨリ】 vol.49 出版業界でよく使われる言葉 その4

みなさまおつかれさまです。 あしかけ2か月以上にわたる本企画も、いよいよラストを迎えます。 今回は、制作の流れを追いつつ、赤字の入れ方などもご紹介しようかと思います。 1.ラフ 編集者がデザイナーに渡す「このページはこんな感じにしたい」という誌面案。手書きの場合がほとんど。ラフがそっくりそのままレイアウトに落ちることは比較的少ない。 2.デザイン出し ラフをデザイナーに見せつつ、ページの背景などを説明しながら行うレイアウト制作依頼のこと。 3.初稿(しょこう) 著者、

【校閲ダヨリ】 vol.48 出版業界でよく使われる言葉 その3

みなさまおつかれさまです。 専門用語特集でお届けしております近頃のお便りですが、今回は、いよいよ実作業系の単語の紹介をしていきたいと思います。 わかりづらい言葉は図を用いてできるだけわかりやすくご説明をしていきますが、それでもわかりづらいかもしれません。 その際は、コメント欄にてお気軽にご質問くださいね。 1.級数(きゅうすう) 活字の大きさを表す単位。和文活字は、正方形の枠(ボディ)に収まる形で設定されるが、この正方形の一辺を示す長さ=級数である。「Q(Quarter)

【校閲ダヨリ】 vol.47 出版業界でよく使われる言葉 その2

みなさまおつかれさまです。 ついこの間まで「暑い暑い」と思っていましたが、にわかに肌寒くなりましたね。(「肌寒い」は秋の季語です) 急な気温の変化に、体調を崩されていらっしゃる方もいるかもしれません。ご自愛ください。 さて、前回はどちらかというと本の外側の専門用語をお伝えしましたが、今回は内側の用語をご紹介したいと思います。 想定される使用場面は、誰かに「修正依頼」するときや、「ここをこうしたほうがいい」とアドバイスするときが主になるかと思います。 1.中面(なかめん)

【校閲ダヨリ】 vol.46 出版業界でよく使われる言葉 その1

  みなさまおつかれさまです。 今回は、我々が普段の仕事のなかで当たり前のように使用する言葉について、一般の皆さんに紹介する気持ちで書いてみようと思います。 昭和→平成→令和と、「本」というメディアは時代とともに育ち、そしてゆっくりと廃れつつあるというのが市井の評価なのは事実でしょう。 実際に、こと「出版販売額」という観点における数字は、それを裏付けています。販売部数が10年前に比べて増えているという出版物が存在するかどうか、あれば私も知りたいところです。 全国出版協会調べ

【校閲ダヨリ】 vol. 44 いぶし銀な、業界特有の句読法

みなさまおつかれさまです。 先日、社内の広報関係を司る部署から依頼を受けて、スライド資料的なものの校閲作業をしました。 その際、いつも雑誌や書籍で行っている組版方式(句読法)にしたがって赤字を入れたのですが、後ほど「これはどうして?」とお問い合わせをいただきました。 出版業界ではほとんど当たり前となっている組版方式なのですが、小学校の「作文の書き方」でも教わらないものですし、業界外の方には馴染みがないのかとあらためてハッとした次第です。 紙媒体を制作している出版社・新聞

【校閲ダヨリ】 vol. 37 まぬけ引用符というパワーワード

みなさまおつかれさまです。 今回は、ちょっと私の専門外の言語のお話になります。 しかし載せている情報は使用に耐えるものですので、ご安心してお読みになっていただければと思います。 さて、街で時たま見かけるのですが、外国の方がちょっと微笑ましくなるような漢字Tシャツを着ていることがります。 画像検索してみると「自己嫌悪」「烏賊(イカ)」「痔」「婚活」「手術」など、そうそうたるラインナップを見ることができますが、これは単に日本における外国人だけの話ではなく、我々が着ている欧

【校閲ダヨリ】 vol.29 カギカッコの使い方

みなさまおつかれさまです。 先日、「カギカッコの正しい使い方について記事を書いてほしい」と、とある方からリクエストをいただきました。 私も、かねてより「いつか書こう」と思っていたテーマであり、大学時代の指導教官だった教授にもアドバイスを請うべく連絡をとったりしていたのですが、これが深入りすればするほど出口が見えず、記事にすることができませんでした。 直接話をお聞きしたことで、ご質問者さまを含め、こと出版物に携わる方は想像以上に多くが同じ疑問を抱えているのかもしれないと思い、

【校閲ダヨリ】 vol.28 出典の書き方

みなさまおつかれさまです。 今回は、引用の回(vol. 13参照)と合わせると効果が倍増、むしろ、この事項が漏れていると引用として失格とも言える重要なことをお話しいたします。(書評の際やクレジット書式にも使えます) 引用の回で私は「公開されている文章は引用して自身の論の補強に使うことができる」というようなことを述べました。 引用というアビリティを使用する際に大切なのは、「どんなものから引用したのか、読者がわかるように示す必要がある」ということです。 著作権的な観点での重要

【校閲ダヨリ】 vol.26 常用漢字という灯台

    みなさまおつかれさまです。 今回は、常用漢字にかんするお話です。 特に、刊行物に携わる方々は、知っておかなければ損をしてしまう言語事項のひとつといえるかと思います。 また、ウェブ記事やプレスリリース、クライアントとのやりとりなど、出版業務以外の場面でも役立つファクターですので、認識があいまいな方にも読んでいただければ幸いです。 最初に、すごくざっくりと(でも明快に)常用漢字の定義についてお話しすると、 義務教育期間に習う漢字 という11文字で完結させることがで

【校閲ダヨリ】 vol.17 裏焼き

        みなさまおつかれさまです。 今回は、普段の作業で私たちがほぼ見つけられない裏焼きという事象の話をしようと思います。         昨今、Instagramなどでよく見られる(またはよく行う)写真の反転。 セルフィをしたとき、自分が見ている自分との視差に違和感を覚えて行うのだろうと思います。(視覚と聴覚で異なりますが、なんとなく、録音された自分の声を聞いたときと同じ違和感なのかなと思っています)     反転、とよく言われますが、業界では「裏焼き」と呼ばれてい

【校閲ダヨリ】 vol.14 校閲者向きの人物とは

みなさまおつかれさまです。 今回は、別の角度から、それはそれでマニアックな話をしようと思います。 誰かと話をしていて、「校閲をやっています」と言うと、 「その分野のことをよく知っている(例えば、民藝の本の校閲をするのであれば、民藝のことをよく知っている)んでしょう?」 と、大抵の人に言われます。(それはもう、うんざりするほどです) 最初に断っておきますと、私は国語学専攻でしたので「日本語」という言語に関しての知識はありますが、民藝の知識はまるでありませんし、万年筆に詳し

【校閲ダヨリ】 vol.13 引用

みなさまおつかれさまです。 今回は、引用のお話です。 前提としてなくてはならないのは、 「引用はパクりではない」 という認識です。 事実を明確に伝えるためや、誰かの論に反論するため、自分の論の根拠とするためになど、サポート的に他人のテキストを用いるのが「引用」 です。 引用は、事前の許可なく、金銭も発生させず行うことが可能です。 ただし、その代わりといってはなんですが、いくつかルールがあります。 まずは、その大元となる「著作権法」を見てみましょう。 このように定義されて