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永遠のテーマ 思春期の子供とのコミュニケーションの問題3 解決編

Bonjour! パリ在住、日本語の声とことばのトレーナーゆうじです。

3回に渡ってお答えしてきた、声とことばの相談室への初めてのご相談、思春期の子供と親のコミュニケーションの問題、今回いよいよ解決編です。

今日は、まずご相談の内容の確認からです。

ご相談は、思春期のお子さんを持つ、パリ在住の女性の方から

話し方って本当に大切ですよね。思春期に入ってきた長女なんかピリピリしてる時には何を言っても毒。。どう話したらいいの?と悩みますね。


この方のFacebookは友達のみの限定公開だと思いますので、お名前をAさんと呼ばせていただいています。

初回の相談から、ネット上で決定版と言える回答が出回っていない難問中の難問に取り組んでいます。どうやって回答しようかと悩みながら、この問題の回答を、前回、前々回と投稿してきましたが、FacebookやDMからすでにご感想をいただいています。

「私の家では、こんなことに気を付けてるよ」とか、「頑張って最後まで書いてください」など、ご感想はいろいろですが、世のお母さま方の高い関心のある問題だということがわかりました。僕には子供がいないので、親としては完全に素人ですが、声とことば(コミュニケーション)の専門家の立場から、ご期待に応えられるように、解決編をまとめてみたいと思います!

ちなみに思春期って何歳なのかネットで調べると8才~18才のことを言うみたいですが、ご相談者の文意から、中・高校生くらいをイメージしてお話しています。

じゃあ、子供とどうやってコミュニケーションをとればいいのさ!?の問題

前回の記事で、子供は二次成長期になると声変わりをして、精神が自立の練習を始めるんだけど、親の方は特に身体に変化がないので、親は自分の役割が変化していることに気が付かない場合があるよ。と言う話をしました。要するに、思春期の子供が自立の練習をしているので、邪魔しないようにしましょうってことなんですが、そこがとても難しいんですよね。

前回の記事を読んで、結局私が悪いの!?

と思われた方は、もう少しだけ我慢して読んでください。決してそんな結論ではありません。

思春期の子供は、自立の練習を始めていますが、でも、放っておくにはまだまだ未熟です。大きな失敗をして潰れてしまう可能性が高いからです。

「ロミオとジュリエット」というシェイクスピアの作品がありますが、まさにこの辺りのことがテーマです。

一般的にジュリエットが13歳、ロミオが14歳と言われているので、思春期真っ盛りですね。この物語のテーマはもちろん真実の愛なんですが、思春期の子供だけだと暴走して取り返しがつかなくなるし、大人が強く介入するのも難しい年齢ってところもテーマの一つなんです。

それで、この物語の重要人物にジュリエットのおしゃべりな乳母がいます。大きな役ではないんですが極めて重要な役割を果たしていて、乳母は最後の最後までジュリエットの味方をしています。ロミオが街から追放されてしまって、別の男との結婚の日取りが近づいてきます。そんなどうしようもない事情に迫られて、乳母もついジュリエットに「もうロミオの事はあきらめて、お父様の言いつけ通りに、別の男と結婚したら?」のようなことを言ってしまうんです。もちろん、ジュリエットの幸せを願っての発言です。

この言葉を聞いてジュリエットは、最後まで味方だと思っていた乳母に裏切られたと思い込み、死への道にまっしぐらに進んでしまいます。

この作品のすごいところは、登場人物に誰も単純な悪役がいないところです。ロミオの家族はロミオのことを、ジュリエットの家族はジュリエットのことが大好きなんです。でも二人は悲劇に見舞われてしまった。

だから見ているお客さんは、二人に感情輸入して、二人の死を家族の死のように感じて、悲しくなるんですね。

でも、もし乳母がジュリエットに、「ロミオをあきらめろ」と言わなかったとしたらどうでしょうか。

そうすると、この物語の展開が大きく変わってきます。きっとジュリエットは眠り薬のことを、乳母に打ち明けて協力を求めるはずだからです。

ジュリエットが「私、眠り薬を飲んで死んだふりするから、ロミオ様に伝えてね」なんて乳母に言っていたら、乳母は「そんな危険なことはやめましょう」とか、「私がジュリエット様の目が覚めるときに、そばにいましょう!」とか言って、ロミオとジュリエットの物語が簡単にハッピーエンドに変わってしまうんです。

それで、なぜロミオとジュリエットの話をしたのかと言うと、さすが天才シェイクスピアの観察眼によって、思春期の子供とのコミュニケーション問題についての大きな示唆があるからです。

この物語のポイントは、乳母の不用意な言葉が、乳母は敵だとジュリエットに判断を誤らせたこところです。もし乳母が、寡黙なタイプの人だったら、ジュリエットに向かって「ロミオはあきらめろ」とは言わなかったでしょう。もし言っていなければ、ジュリエットは乳母のことを味方だと思いつづけることができたはずです。

なぜでしょうか。

それは、普段の乳母の態度をジュリエットが毎日見ているからです。ジュリエットはわがままを言ったり、もう二度とあなたの顔なんて見たくない!くらいのことは乳母に向かって言っているはずです。でも乳母は、どんなときでもジュリエットに愛情を持って接し続けたことでしょう。その態度をジュリエットはずっと見続けているんです。

この普段の態度というのは、ときに言葉よりも重たいものです。

この言葉で伝えていない、非言語のコミュニケーションのことをノンバーバル言語といいます。広い意味ではジェスチャーなんかもノンバーバル言語なんですが、ここでいうノンバーバル言語は態度のことです。乳母にもう少しだけ忍耐力があって、ノンバーバル言語でジュリエットへの愛情を伝えられていると信じることができていたなら、ジュリエットを救うことができたのです。

ロミオとジュリエットの物語では、大人たちの不用意な言葉が二人を死に追いやってしまいました。現実世界の僕たちも、不用意な言葉は慎み、ノンバーバル言語を駆使して、思春期の子供達と接したいですね。

相談者のAさんのFacebookを拝見している限り、楽しそうな子供たちの写真がたくさんあります。その子供たちの表情を見る限りノンバーバル言語のコミュニケーションはばっちりです。その辺は、安心していただければいいと思います。

態度で示す理想の親とは!!

相談者のAさんは、それでもやっぱり子供は言うこと聞いてくれないから大変なんだよ!!態度で愛情を示すってどう言うことだよ!と思っているに違いありません。

ということで、もう少し詳しく態度で示す理想の親ってどんな親なのか考えてみましょう。

子供が悩んでいたら、そっと見守ってあげ、

八つ当たりされても微笑んでいて、

勉強のやる気のない子供に、勉強の楽しさを伝えられるように、自ら勉強している背中を見せ、

恋人ができても、詮索せずに見守ってあげられる親

そんな親にあなたはなれますか?

まあ無理ですよね(笑)。いや、神様じゃないんだから。なれるわけがありません!

八つ当たりされたら腹が立つし、子供が変なことしてたら詮索したくなりますよ、ふつー!!

さっきまでと言っていることが違うじゃないかと思った方、もうちょっとだけ辛抱して読んでください。

私の言う、態度で愛情を示す親とは、神様みたいな完璧な親を指すのではありません。そういうHow Toで語れるような、単純なことではないんです。100人の親がいたら、100通りの方法があって構わないんです。

人の行動には、全て動機があると言います。

あなたが子供を叱るとき、子供は親が自分を面倒だから叱っているのか、自分のことを思って叱ってくれているのか、ただ無関心なだけなのか、わざと放っておいてくれているのか。子供の側はその動機までよく見ていて、自分へ愛情を常に観察しているんです。

「私は子供のことを愛しているわ!」とすぐに反応できた方は、よく注意してください。この動機と言うのは、親であるあなたが判断する事ではないからです。本当に子供のことを思っているかどうかは、子供の側が判断するものだからです。コミュニケーションは一人でするものではありません。

じゃあ、「私の子供は、私のことをどう思っているの?」と、気になりますよね。

子供がどう感じているか、簡単に見分ける方法があります。

子供の、普段の元気な時の声で構いません。よく聞いてみてください。あなたと話すとき、よそよそしいような声をしていませんか。どこか緊張したような、ひきつったような声をしていませんか。

私の子供は内気だから、、、内気な子と言うのは確かにいます。でも親と話すときに緊張するような子供は、内気というだけでは説明できません。

同じく、攻撃的な言葉を使う子供も同じです。イライラした声で「うっせーよ、ババア!!」なんて口を利いていても、その言葉の失礼さに気を取られるのではなく、声そのものを聞いてみてください。あなたを攻撃する口調であっても、声に緊張感がなければ、問題ありません。ただ、元気なだけです。

でも、もし声に緊張感がある場合、あなたは子供から自分勝手な親だと判定されているのかもしれません。

逆に普段、リラックスした元気な声を聞かせてくれるようなら、なんの心配もいりません。

ときどきは、子供がイライラすることもあるでしょう。親子でケンカすることもあるでしょう。でも、普段は元気な声を聞かせてくれるなら、小さなことにこだわらず、あなたのノンバーバル言語が子供に親の愛情を伝えてくれています。そのことを子供の声を聞いて確認しておけば、心配はいりません。

最後に親として、一番大切な事。

最後に親として一番大切なことは、子供SOSの声を聞き逃さないことです。これができるのは学校の先生ではありません。親であるあなたしかできないことです。

子供の声を聞いていて、声が震えていたり、声が消え入りそうだったりしたら要注意です。何か子供の生命力を削ぐような、大きな出来事が起こっている可能性があります。一時的でなくて、慢性的なものなら更に注意が必要です。

こう言う場合でも、何が起こっているのか子供に聞いても、やっぱり何も教えてくれないかもしれません。でも、愛情を持って接しているあなたならわかるはずです。命の危険があるのかどうなのか。

危険だと判断したのなら、あなたは親としての強権を発動するときかも知れません。

その時は、子供の社会的な関係を、親の権力全てを使って遮断してあげましょう。そうすれば、徐々に子供は自分で問題が解決できないスケールのものだったと、あとから知ることができるようになるでしょう。

完璧な親になるのってこんなに簡単!まとめ!!

こんなに長く書いておいて、親として気をつけることは二つしかありません!

子供の元気な声を聞きながら、できれば細かなことを気にしない。

もしSOS信号を子供が出していたら、全力で子供の人間関係を遮断して、冷却期間を置く。

これだけできれば、あなたはもう特別何もする必要はありません。あなたは立派過ぎるくらい立派な親なのです!

そんなこと、普段から心掛けているって?じゃあ、気づかないうちにあなたは、完璧な親だったってことでしょう。

え?子育ての悩みが、まだまだつきないって?

だから初めに言ったでしょ、人は常に一定量悩むものだって。

これからも子育てに悩みながら、Aさん頑張ってください!!応援しています。また、Caféが開くようになったら、お茶しましょう!!

ではまた!!


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