24 ウォーシュミレーション?
「エナリア会長。生徒会に入れば、私は強くなれますか?」
エナリアと視線を交わす少女が何故そんな質問をしたのかその胸中を伺い知る事は出来ない。ただ、強くなりたいと願う緑色の瞳からはエナリアですら気圧されるほどの覚悟と決意が垣間見えた。
「強くなれる。と断言はいたしかねますわ」
「……そうですか……」
「それに、メルティナ・フローリア。私は貴女の力を存じ上げません。少なくとも現時点の印象として、生徒会でやっていける力があるとは貴女には到底感じていません」
先ほどまでとは打って変わって厳しい言葉を投げかけるエナリアは厳しい表情を浮かべる。僅かに肩を落とすメルティナの様子に言葉を続ける。
「先ほどの質問にはお答えしましょう。今の生徒会のメンバー達は東部学園都市の中でも上位の実力者ばかり。単騎での戦闘能力だけで言えば今この場にいる生徒会のメンバーはカレッツ以外、少なくとも私よりも強い。強さを求めるのなら学べることは多いはずですわ」
ミレディアが驚いた様子で反応する。
「生徒会長が一番強いってワケじゃないんだ!?」
「ええ、その通りよ。私が生徒会長になれたのは状況の把握と対策の早さがあってこそ。つまりは集団を指揮するのに向いている力があったというだけ」
横から鋭い視線がミレディアへと飛ぶ、スカーレットと名乗った赤髪の女生徒は睨みつけるような目で話す。
「エナリア会長の持つ強さは一般の生徒には決して得る事の出来ないほど卓越した素晴らしい力だ。個で強い事よりも騎士としての才覚は我々よりも遥か天上にある事を理解しろ」
どうやら彼女はエナリアの力が低くみられることが気に入らないらしい。シュレイドがエナリアに勝ったという話を信用していなかったことからもエナリアにかなり信頼を置いているようであった。
「オレ達の力を最大限引き出せるような適材適所を判断して常に変わりゆく状況の最善手を打つこと、これは簡単に真似は出来ねぇものさ。目の前の戦いの判断だけをするのとはワケが違う。東部の生徒達全員を現状指揮できるのはエナリア会長だけさ。皆がその指示を信じて付いてきてくれさえすれば、な」
引っかかりもある言葉ではあるがガレオンが意見を重ねると、生徒会の面々は総じて肯定の面持ちで頷いている。余程エナリアは信用されている生徒会長なのだろう。
「……どうやったら、生徒会に入れるんですか?」
その空気をゆっくりと割くようにメルティナは質問を発した。
「私は、強くなりたい。何物にも負けないように、だから……」
彼女の瞳は変わらず強い意志を湛えてエナリアを見つめる。
「そうね。でしたら、少なくともカレッツに勝負で勝ってほしいわね」
「えっ!?」「…へ?」
メルティナが驚くと同時にカレッツも驚いていた。
「かかか、かいちょぉ!??? 僕ですか!!? 何で僕なんですか!!!!???」
「見た所、彼女は明らかに前線での戦闘向きのタイプではないわ」
「いやそれは流石に僕でもわかりますけどぉ、、、アッ、すごく可愛いね君、ちょっと真っすぐに見つめるのはま、まぶしいよね。うんすごくいい」
真正面からメルティナを見据えて突然鼻の下を伸ばすカレッツを無視してエナリアの話は続けられる。
「このカレッツとストラテジーゲームで勝負してもらいますわ」
「すとらてじーげーむ??」
「ウォーシュミレーションの訓練の一種ですわ」
メルティナ、シュレイド、ミレディアの三人は聞きなれない言葉に目をぱちくりしながらエナリアの説明に耳を傾けた。
続く
作 新野創
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