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Fourth memory 03

「冗談、冗談。マジになんないでよ! ヒナタも、ほーらもっと楽しい話しよ! 今日、一日雨っぽいし、ソフィもどうせ暇なんでしょ?」
 
 あたしまで、しんみりしないように精いっぱい明るく振る舞う。

 でも、ソフィの表情はそんなあたしの気持ちとは裏腹に暗い表情のままだった。

「あっ、いえ……行方不明者が今日も出たので決して暇というわけでは……あっ!」
 
 ソフィのその言葉にあたしは、言葉を失った。

「そっか……また出たんだね……行方不明者」
 
 ヒナタが悲しい表情を浮かべ、あたしの体はカタカタと小さく震えだす。

「すっ、すいません!! 僕、また余計なことを!!!」
 
 あたしが

 望んだから……?

「今日は西地区? 東地区? どっちから?」
 
 あたしが……ちゃんと天蓋にいれば……。

「……両地区です。西地区から3人、東地区から5人の計8人です……一日に出た行方不明者数の最高人数も更新されました」
 
 こんなに、たくさんの人が犠牲になんてきっとならなかったのに……。

「……昨日より2人、増えたのね……」
 
 あたしが……あたしのせいで………。

「はい……これで、この地域の全人口の4分の3が行方不明者となってしまいました」
「……あたしのせいだ———」
「えっ!?」
「あたしが! 役割を果たさなかったら……だから、こんなこんな大変なことに———」
  
 目の前が暗くなり、寒くもないのに体が震え、呼吸が苦しくなる。

 色が次々に消え、白黒になっていく。
 
 それは、天蓋にいた時のようだった。

 ……サロスも、フィリアも……みんな、みんな、あたしのせいで……。

「ヤチヨ、落ち着いて!!」
 
 ヒナタが、あたしにふわりと後ろから抱き着く。

 暖かい……白黒だった世界に色が戻ってくると同時に、頬から一筋、涙が零れる。

「でもーー!!」
「ヤチヨのせいじゃない!」
 
 あたしの言葉を遮り、更にぎゅっとヒナタがあたしの身体を抱きしめる。

「ヒナタ……」
 
 首元から回されるその腕にそっとあたしは、自分の腕を重ねた。
 
 まだ、震えは治まってはいないけど、少しだけ気持ちが楽になったような気がした。

「……そういえば……それと同じく昨日より多くの例の鉱物が天蓋跡地で発見されました」

「鉱物?」
「はい、例の謎の鉱物です」
「……」
「ヒナタさん?」
「ヒナタ?」
 
 ヒナタが難しい顔をして、少しの沈黙の後。何かに気づいた様子で話し始める。

「ねぇ、二人ともおかしいと思わない?」
「何が(ですか)?」 
「ずっと引っかかっていた事なんだけど、行方不明者の増加に比例して、その鉱物が多く発見されている気がするのは気のせいかしら」
 
 その鉱物というのは、行方不明者が出る度に見つかっている緑色の光る石のことで、見つけてから3~4日は見つけた時のような眩い緑色の光を放ち続けるが、その後、光を失って黒い鉱石になる。

 年々燃料不足で悩んでいたこの地域にとって、この鉱石が燃料として活用できることが判明してから、今ではその謎の鉱石が様々な場所で使われていた。

 そして、その鉱石量はこの2~3年の間に格段に増えていたのは確かだ。

「……行方不明者と何か関係がある、ということですか?」


 鉱石と行方不明者……その二つが関係しているかもしれない……そんな因果関係があるなんて、今まで確かに考えてもいなかった。


「調べてみる価値はあると思うわ。そうでしょ? ヤチヨ」
 
 もし、それでこれ以上の犠牲者を防げる何かが見つけられるというのなら。やらなくちゃ……。 

 ううん、絶対にあたしがやらなきゃダメだ!!

 漠然としていて調べても何もないかもしれない。けど、こうして、今何も出来ないままで日々を過ごすよりはずっといい気がした。

「そうね! このまま何もしないで過ごすなんてあたし達らしくないよね!! 行こう! 天蓋跡地に!!」
 
 ヒナタの言葉であたしの心の中に眠る行動力が昔のように強く火を灯したような気がした。


続く


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