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105 アニスの願い

「はぁはぁ、ずっと、ずっと、この時を待ってたぞ。ミレディア!! お前をこの手で、この手でぶっ殺せるこの時を!」

 ジャリッと地面を踏みしめて近づいた足音。
 槍を思い切り地面へと突き刺すと手のひらを見つめて拳を握り込む。
 視線を拳から切り、あたしを貫かんばかりにギロリと睨みつけてくる。

「く、ふー、ふー、っ、ああ……そっか、やっぱり、あんたが……」

 確信的な情報はまるでなかったけれど、間違いないと今はそう思う。

「やっぱり? 何のことだ」

「…ん、ふぅ、くぅ、はぁ…これ、、」

「…!? それ、は、、、」

 あたしが制服の胸元から引っ張り出したそのおまもりを目にした途端、フェレーロの動きは止まる。
 
 あたしは倒れたまま首から下げていたそのお守りの紐の結びを解き、呆然とするフェレーロへ弱々しく投げ渡した。

 フェレーロの手にポスリと収まるその小さなお守り。受け取ると彼は眼を見開いてそれを凝視している。

 指先が小刻みに震えているのがわかった。

 知ってるんだね。

 見覚えが、あるんだね。

 その表情を見てアニスと全く関係がない人だなんてもう思えない。

 そうだよね。そのおまもり、お兄ちゃんからもらった大切なものだって、いつも嬉しそうに身に着けてたし。

 大切な人にあげた物ならば、あげた本人だって覚えてるはずだから。

 アニス。

 アニスとの思い出が形として残る物はもうこのおまもりしかなかったけれど、フェレーロがもしアニスのおにいちゃんなら、これを持っているべきは、あたしじゃない。

 だから、これで、いいんだ。

 今にも泣き出しそうな弱々しさをひた隠そうとしながら、あたしに向けて怒声を飛ばすフェレーロ。

「どうして、お前が、お前がこれを持ってる!!! やっぱりお前が!!!!!! アニスを!!!!」

 そうだよ。その通り。何も間違ってない。あれはあたしがやったも同然なんだもの。

「……中にね。紙が入ってる。中身は私も知らない。私が見るべきじゃないと思ったから」

 いつの日か探しにいこうと思っていた。自分が立派な騎士になって国中を自由に巡れるようになったら絶対にアニスのお兄ちゃんを見つけ出すんだって、思っていた。

 まさか、こんなに身近に居ただなんて思いもしなかったけどさ。

「……時間稼ぎのつもりか?」

 あたしの不可思議な行動を訝しんで警戒するフェレーロは震えながらも未だその緊張を解かないでいる。

 その間にもヒューヒューと喉で鳴り始める乱れたあたしの呼吸。

 ああ、お前はもう騎士になどなれないと、お前の命の終わりはここなんだって運命に告げられているようだ。

 本当はあの時、あたしは終わるはずだったんだから。

 シュレイドとメルティナと会えて幸せな時間を過ごせた。あの日々はきっと運命からの最後の贈り物だったのかもしれない。

 あたしの心残りになりそうだったことは今、こうして目の前で見つけてしまった。
 だから、あたしがこれ以上この世界で生き続ける意味なんかもう、きっとないんだ。

「でも、あんたとこうして戦ってる最中にね、思い出してさ。きっと、これはあんたに今日こうして渡すために、私の元にあったんじゃないかなって」

 フェレーロの顔を見てられない、けど視線は絶対に逸らしちゃいけない。

 逸らしたりなんかしたら、あたしがあの世で自分で自分を許さない。

「俺がこいつに気を取られている隙に反撃する気だろ。そんな手にはかからない」

 ううん、ちがうよ。そんなことしない。

 するつもりなんかない。

「本当にそう思うなら、このままそのおまもりを捨てて、この場で私を殺せばいい」

 その権利がアンタには、あるんだから。

「ああ、そうさせてもらう」

 眼前のフェレーロはおまもりを投げ捨てようとしたが、出来なかった。

 振り上げた手がそのままでふるふるとしながらも止まっている。

 群れからはぐれたであろう鳥の影が地を這い、羽音がバサバサと通過してあたし達二人の頭上を横切っていく。

「…ッっ!?」

 躊躇っていたフェレーロはゆっくりと手を下ろし、おまもりを今一度見つめる。

 微かにだけど弛緩する気配。

「……ふん、ミレディア。…少しだけ寿命が延びたな。コイツを渡してくれた礼だ。中身を見るまで、、、待ってやる」

 そう言っておまもりの中から小さな紙を取り出そうとしているフェレーロへ咄嗟に声を掛ける。

 どうしてそんな言葉が出たのか?

 自分でも分からない程に自然に、心から零れるようにあたしの口を通って世界に呟かれ音となり声となり、フェレーロへ届けられていた。
 
「ありがとね、フェレーロ」

「は?」

 面食らったように驚く彼の顔には戸惑いが滲んでいた。そんな彼に向って言葉はなお止まる事を知らず続いていく。

「アニスを、忘れないで居てくれて」

 フェレーロが奥歯を噛みしめているのが分かる。そりゃそうだよね。
 あたしがこんなことを言えた義理なんて、ないんだから。

 でも本心なんだ。それだけは信じて。

「……アニスを殺したお前が、ふざけたことをいうな」

 全く持ってその通りだ。
 アンタが正しい。
 ホントどの口が言うんだろうね。

「……そ、だね…そうだよ、あたしが、あたしがころした、アニスを、それは、間違ってない……」

 あたしのせいでアニスは、あの時、死んだんだから。

「ふん。待ってろ。中身を確認したらすぐ楽にしてやる」

 うん、そうして。

 それでいいんだ。

 そして、アニスに謝りに行こう。

 あたしの心はもう、決まっていた。

 フェレーロはおまもりを開いて紙を取り出す。

「……て、手紙? これは」

 古くなった紙。くしゃくしゃに折りたたまれた紙が二枚分、中に小さく折り方も下手なまま、詰め込まれていたようで中から出てきた。

 フェレーロは震える手でその紙を開き、そして俯いた。
 
「あぁ…ぁぁぁ……」

 しばらく無言で手紙を読み進めていた、唇を噛み締めて。
 
 その表情がくしゃくしゃになっていくのをただただあたしは見守っていた。

 彼の肩が大きく震えて止まらなくなる姿が視界に入る。

 沢山の想いが地面に零れ落ちそうになるのをぐっと堪えている。

 ああ、ごめんね。フェレーロ。

 あたしのせいで。

 フェレーロはゆっくりとあたしの方を見た。

 さっきとは違う視線で、あたしにその真実を問うかのように。

「ミレディ、おねぇちゃん? あ、なんだ、なんだこれ、なんだ……まさか。手紙に書かれてた、おねぇちゃんっていうのは、もしかして、ミレディア……お前の事なのか? いくつもの手紙に書かれていた、沢山の話に出てきていたおねえちゃんって人物は、アイツがいつも楽しそうに手紙に書いていたおねぇちゃんってのは、ミレディア。お前、だったのか」

 ああ、懐かしい呼び名だなぁ、血なんか繋がってもいないのにあたしのことをいつもそう呼んでくれていたアニス。

 彼女があたしを呼ぶ時の人懐っこい声を思い出す。

 でも、どうしてか今この瞬間に鮮明に思い出されたのはアニスとの悲しい別れの記憶じゃない。

 一緒に毎日楽しく過ごしていた日々の中で、明るく元気に笑いかけてくるアニスだった。

『ミレディおねぇちゃん』

 ニコニコと屈託のない笑顔をあたしに向けるアニスに涙が自然と溢れそうになる。

 あの頃のアニスは本当はあたしを通してフェレーロとの、おにいちゃんとの日々を夢見て過ごしていたのかもしれない。

 でも、それでもあたしとの時間も本物だ。存在してたんだ。

 あたしがあなたのおねえちゃんだった時間が確かにあるんだ。

 あたしが、それを覚えてる。

 へへ、ねぇ、アニス。ほらやっぱりアンタのおにいちゃんは全部、手紙、読んでいてくれていたみたいだよ。

 これであの時、大丈夫って言ったあたしの言葉も嘘じゃなくなるね。

 よかった。

 本当に、よかった。

「おねえちゃん、か。…懐かしいな、そうだね。孤児院でそう呼ばれていたのは、あたしだけだったかも…アニス。手紙にいつも書いてたんだ、そっか、そっかぁ、そっか、アニス、ううく、くうぅぅ」

 あの日、隠していた手紙にもそれ以外の手紙にも、もしかしてあたしの事を書いていてくれたんだろうか?

 あたしとの日々、あの頃の思い出を。

 かつての記憶が強く甦る、あたしは何を想った?
 
 アニスの眠るあの場所で何を誓った?

 終わりじゃない。
 
 まだ終われないんだ。

 こんなところで、終われないとそう思っていたはずだった。

 だけど、あたしの命を終わらせるのが目の前にいるフェレーロの望みならばそれを受け入れる心の準備は、死ぬ覚悟はもう出来ている。

 これが最後の時間だ。

「……もしかして、おまえじゃ、ないのか? アニスを殺したのは。本当はお前じゃないのか!?」

 フェレーロはどうすればいいのか分からないというような顔であたしを問い詰めた。

 何を言っても言い訳にしかならない。でも、それでも彼に真実を伝える義務があたしにはある。

 アニスが死ぬという起きてしまった結果は同じだとしても、その真実をフェレーロに。

「……いじめられてたアニスを助ける時に、あたし、貴族の子供に大けがを負わせてしまったの。それで、わたしは貴族の元に連れていかれて。本当はそこで、あたしが、あたしが死ぬはずだったんだ。でも、アニスが、アニスが、あたしを庇って。だから、わたしのせい…だからアニスの命を奪ったのは私でもある。それは事実だよ」

 悲痛な表情であたしの言葉を受け止めたフェレーロは黙り込み力なくだらりと腕を垂らした。

「……っ、そう、か」

 フェレーロが倒れているあたしに背を向けて歩き出そうとした。

 ちょっと、どういうこと!?
 待ってよ。あたしをここで罰さずに、裁かずに、殺さずに一体どこにいくつもり?

 これを渡したら、返したら、あたしは、アンタに殺される覚悟を決めたんだよ。

 何の罰もなく今日までのうのうと生き続けてきたあたしに罰を与えてよ。

 それが出来るのは、アンタだけなのに。

「…どこに、いく、の」

 待って、まだ、くそ、身体が動かない。
 血を流しすぎたかもしれない。
 意識が朦朧としてくる。

「…アニスに、頼まれちまったからな。お前を助けろって。そのお願いを、俺が守らないわけにはいかねぇだろ」

 フェレーロの返答にあたしの思考は白く染まる。

 え?


 アニスに頼まれた?


 え、あたしを助ける?


 あたしの思考は停止したまま徐々に起きている事を整理し始める。

 あたしを助けて欲しい? アニスがそう言ったの?

 どういうこと? 

 手紙にそう書いているってこと?
 
 けど、それは今のこの状況を救うことじゃないでしょ。

 普通に考えればわかることだよ。

 今のこの状況を、未来の事を見通すなんて出来ないんだから。
 
 けど、だとしたら、それじゃぁ、もしかして。
 
 おまもりの中にあった手紙っていうのは。

 あたしがあの日、連れていかれた後にフェレーロに向けて助けを求めた?

 連れ去られたあたしを助けるためにアニスがフェレーロに書いた手紙ってこと?

 お兄ちゃんが助けに来てくれると信じて、フェレーロがあたしを救ってくれると信じて、それを書いたっていうの?

 あたしを、たすけてほしいって願って。

 でもあの時、フェレーロは来れなかった。

 当然だ。

 結局、出すことが出来なかった手紙なんでしょう。
 
 じゃぁフェレーロは、今それを、アニスの願いを守ろうとしてくれているってこと?

 胸の中に熱い気持ちがぶわっと込み上げて視界がぼやける。

 アンタ達兄妹はホントに、揃いも揃ってほんとにさぁ。

 バカだよ。ほんとにバカ。どんだけ不器用なんだよ。

「……ごめん」

 なんだよ、あたしも大概バカだ。

 今のあたしにはやっぱり謝る事しか出来そうにない。

 フェレーロは普段の表情に戻そうと複雑な笑みを作る。

「…お前のせいじゃ、ねぇんだろ。今のお前の顔見りゃ嫌でも分かんだよ」

 ああ、そんな目をしないでよ、もっと責めて、罵倒してくれたって構わないのに。
 あたしの命を奪ってアンタの心が救われるならそうして欲しかった。

 アニスにこれでちゃんと謝りにいけるんだなって、思ってたのに。
 
 途端に我慢し続けていた何かが決壊してしまう。

 あの日の自らの誓いを破ってしまった。

 二度と泣かないって。

 くそ、くそ、くそ

「もう、泣かないって、ぎめで、たのに、きめて、だのにぃいいい、く、うあああああああ」

「ふ、ふうう、くそ。チックショォオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」
 
 涙を止められなくなったあたしに呼応するようにフェレーロも大きく叫んでいた。
 二人の声が場に周囲にこだましていく。

 この場にどこから来たのかも分からない風が凪いでいく。

 強くも弱くも、温かくも寒くもある、そんな風。

 うすぼんやりした脳裏にある別の記憶。孤児院のある村にふらりとやってきた名前も覚えていない放浪の歌姫さんが歌っていた姿。

 孤児院の室内にはその素敵な歌声が響き渡る。

 これは英雄碑へと手向ける鎮魂歌なんですよ。

 そんなことを歌姫さんが歌う前に説明してくれていた気がする。

 アニスは初めて聞く歌というものに聞き入ってキラキラと目を輝かせていた。

 あたしの隣ですごいね。すごいねおねぇちゃんって。

 幼い子供である私達はいつもうるさいのにその日は、じぃっと静かに歌姫さんの歌声に耳を澄ませる。

 今のあたしの嘆きや悲しみがあの日に聞いた記憶の中の歌姫の鎮魂歌と混ざり合って意識の中で甦る。

 手を叩いて歌を楽しむアニス。嬉しそうにするアニス、笑うアニス。

 あたしとフェレーロ二人の嘆きの声は天まで届かんばかりで静かな辺り一面に響き渡っていった。

 
 今日まで、もしかしたらあたしの時間はずっと本当は止まっていたのかもしれない。
 そしてきっと、彼も、フェレーロもそれは同じで。

 二人の天を裂くような声は空に溶けて、そして闇の訪れと共に徐々に消えて、静かに何事もなかったように飲み込まれていく。

 薄暗い街灯が学園都市内の各区域に灯り始め、煌めく星が頭上に姿を見せ始めていた。

 少し先ほどよりひやりとした風が身体を撫でて通り抜けていった。

 身体の中の水分がなくなる程の感覚に気付くまで、あたし達は二人で泣き続けていた。

 しばらく経って落ち着いた後、フェレーロはあたしに簡易的な手当てをしてくれた後、立ち上がり、その場から離れ始める。

「ねぇ、これから、どうするつもりなの?」

「さぁな、俺にもわかんねぇ」

「……フェレーロ」

「今回の事は、すまなかった。あと、手紙。ありがとう。本当に」

 そう言って、歩き出すフェレーロの背中から声が聞こえてハッとする。

「アニス、会いてぇな、もう一度、お前に」

 その掻き消えるような小さな呟きが耳に聞こえた時、フェレーロをこのままで行かせちゃいけないような気がした。

 あの背中に満ちる悲哀の渦をあたしはどこかで見た記憶がある。

 顔も思い出せないその誰かの声、あたしの元で会話する誰かの声の記憶が断片的に雑音混ざりに体内に反響する。

『伝え…ことが相手に………正しいかどうか………関係あり…せん。伝え…い事こそ…何よ……後悔…連れ…く……です』

 その誰かの声は言葉は、あたしの背中を強く押してくれる。

 今、何が出来るだろう。あたしに何がしてあげられるだろう。

 あの出来事の罪滅ぼしをしたいとかそういうわけじゃない。

 フェレーロとアニス。

 二人が離れていた時間。それを今ここで最後に繋げられるのは、この世界にきっともうあたししか、いない。

 ここで伝えなきゃ、フェレーロはきっと……。

 頭に浮かんだ最悪の予感を振り払う。

 あたしも何度か考えた事があるその思考に決して辿り着かせちゃいけない。
絶対にダメだ!!

 残る力を振り絞って、あたしは歩いていくフェレーロを見つめる。

 あたしに、今のあたしに出来るのは、出来るのは、これしかない。

『こんなあたしでも誰かを助けられるんだって、そう信じてる』

 息を大きく吸いこんで、遠ざかる背中に向かって視線をキッと向ける。

 喉が張り裂けそうなくらいに大きな声で。

 あの頃のアニスの想いが今のフェレーロにも届くように、上半身だけを無理やりに起こして大声を張り上げる。

「フェレーロ!!! アニスは、いつも、あんたのことばっかり、孤児院で、話してた。いつも、今日はおにいちゃん迎えに来るかな。明日は迎えに来るかなって。いつもいつも!!」

 あたしが見続けた姿。いつも兄を想い過ごすアニスとの日々。

 彼女のその想いがあたしの言葉を通じてフェレーロに届いてくれたかは、分からない。


 でも、あたしに出来るのはきっとここまでだから。

 ごめんね。

 そして、ありがとう。

 アニス。
 
「ッッ、、、」

 あたしが言葉を投げかけた直後にフェレーロの背中から先ほどまで渦巻いていた何か良くない悪いものが、彼の中からフッと消えた気がした。

 一度立ち止まり、こちらを振り向くことはしないままで、フェレーロはゆっくりと離れていった。

 届いて、くれたのかな。

 ああ、私は。

 それを見届けてあたしの身体は再び天を仰ぐ。

 ここへきて冷静さを取り戻してようやく気付く。

 昔のように、あの日のようにあたしは

 アニスに守られた。

 また、今度も、助けられたんだね。

 ほんとアンタ、おねぇちゃんのこと大好きだなぁ。

 けど、あたしもアンタに負けない位、大好きだよ。アニス。

 はーっと大きく息を吐き出して、すーっともう一度ゆっくりと吸い込んだ。

 落ち着いたら身体の痛みが今更ながら襲ってくる。歯を食いしばって仰向けに星を眺めて紛らわせようとする。


 今一度、この夜空に誓おう。

 遥か遠い場所にいるアニスに誓おう。

 時を越えて、こうして再びあなたに救われたこの命を、絶対に無駄にしない。

『あたしは、もう二度と歩みを止める事はない』

 ここで諦めて止まろうとしてしまった事を叱ってくれたのかな。

 おねえちゃんの嘘つきって。

 残っている力を振り絞って天へと手のひらを伸ばし、掴めないその星に向けて開いた指先をゆっくりと握り込み拳を作って残りの力で精一杯突き上げ続ける。

 その直後、意識は白とも黒とも形容できない世界へと消え、掲げていた腕はふっと力を無くして地に落ちていく。

 ドクン、ドクンとあたしの鼓動が身体の中に反響する音が聞こえる。

 トクン、トクン、トクン

 トクン、トクン、トクン

 混濁し、薄れゆく意識の中で誰かがあたしの身体を優しく抱きかかえてくれているような、そんな気がした。


つづく

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