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言霊信仰にまともに配慮できない人々

安倍晋三総理大臣に対する批判と批判に対する批判と

 安倍晋三元総理大臣が銃撃されお亡くなりになりました。公職にある者、それも行政の長であるともいえる総理大臣に対する批判は自由になされなければなりませんが、その批判に対する批判もまた自由になされなければなりません。したがって、公職に対する批判であっても品性がなければ厳しい批判にさらされることとなります。
 私は、安倍晋三元総理大臣を批判する者にとっての安倍晋三像が非常に大きくなっているように感じていました。安倍晋三元総理大臣は小泉純一郎元総理大臣のように周りの声に耳を傾けずに進めるわけでもなく、実に日本的な調整型のリーダーであるにもかかわらず、安倍晋三元総理大臣が総理大臣を辞めれば政治が変わるかのように世論を誘導しようとするのは誤導以外の何物でもないと思います。
 安倍晋三元総理大臣に対する批判として最もデリケートなものは難病指定されている持病である潰瘍性大腸炎の病状などの健康問題でしょう。大前提として一国会議員とは比べ物にならないほど総理大臣や大臣の健康問題は政治に大きく影響を与えるものです。総理大臣や大臣が健康でなければ、国を大きく動かす政策判断を誤るかもしれませんから当然のことだと思います。しかし、それと同時に安倍晋三総理大臣と同様に潰瘍性大腸炎を持病として持つ者に対して配慮した批判がなされなければならないと思います。

言霊信仰に配慮しない批判の数々

 安倍晋三元総理大臣が銃撃されて死去したことで、以前の批判的な表現や発言がクローズアップされて批判の対象となった方々がいらっしゃいます。その一人がASIAN KAN-FU GENERATIONのボーカル・ギターの後藤正文さんです。

 日本では言葉に現実を変えてしまう力があると長年信じられています。例えば、会社の同僚に「あなたの乗る飛行機は墜落しますよ」と冗談で言って本当に飛行機が墜落してその同僚が亡くなってしまったとすれば、その者は葬式で「私が変なことを言ってしまったために申し訳ありません」と謝罪しなければならないでしょう。つまり、ある言葉を述べてそれが現実になった場合にその言葉と現実の出来事に因果関係があると考えるのが言霊信仰です。
 また、かつては雑誌「ラジオ番組表」の好きなDJランキングで高い順位を占めていたぜんじろうさんは、れいわ新選組の応援演説で「麻生、安倍、森の飛行機が墜落。助かったのは誰?日本国民」という「古典的な風刺ネタ」を披露して批判を受けました。

 日本に言霊信仰があることなんてラジオDJでもあった芸人であるぜんじろうさんや俳優であった山本太郎さんはご存じのはずで、表現をすることを仕事としていた彼らはそのようなものに配慮しながら仕事を続けてきたはずです。広くインターネットを用いて支持を広げるという選挙戦略をとってきたはずのれいわ新選組と山本太郎さんですが、参議院議員通常選挙で取り込むべきれいわ新選組の岩盤支持層以外の者がどう受け取るかということの想像力が皆無であったようです。

「アベシネ」路線に転じた反差別カウンターたちが完全に忘れていること

 平成25年1月31日に野間易通さんがレイシストをしばき隊募集広告をブログに掲載し、同年2月9日に行われた新社会運動主催の「不逞鮮人追放!韓流撲滅デモin新大久保」で華々しいデビューを飾ったレイシストをしばき隊及び反差別カウンターですが、彼らが批判するいわゆる「行動する保守」は、平成21年夏頃の動員力と比較すると桁違いに衰えていました。
 例えば、私が身近でデモを監視していた平成21年9月27日の在日特権を許さない市民の会主催の「外国人参政権反対!東京デモ」では、「排外主義反対」と記載されたプラカードを掲げて抗議の意思を示していた常野雄次郎さんに対し、主権回復を目指す会代表の西村修平さんの号令の下、一斉に常野雄次郎さんに有形力を行使していました。

 これほどの大きな勢力であったいわゆる「行動する保守」が衰えていった原因は、維新政党・新風副代表であった瀬戸弘幸さんが草の根市民クラブ側について東村山問題に首を突っ込み、主権回復を目指す会代表西村修平さん、日本を護る市民の会代表黒田大輔さん、政経調査会槇泰智さんらとともに数多くの民事訴訟の被告となり、その多くに敗訴し、それに加えて京都朝鮮学園による民事訴訟を抱えて自由にデモができなくなったということが原因であったわけですが、そのような衰えた「行動する保守」になした「死体蹴り」と評価されかねないカウンターがなぜ高く評価されたのかということを省みる必要があると思います。
 その理由は、当時の在日特権を許さない市民の会の活動方法にありました。平成25年当時、在日特権を許さない市民の会は、朝鮮人に対する殺害を呼びかけるデモを行っていました。

かいちょー「反原発がカウンターをすると言っている。新大久保と反原発は何の関係があるのか。反原発は20代の女の子:獅子座しぶちょーを集団で追いかけまわした。 朝鮮人をぶっ殺せというのは当たり前のことなんです。日本人がみんなでそう言ったら彼らは出て行ってくれるかも知れない」
かいちょー「民族派や右翼が私の真似をして朝鮮人を東京湾に叩き込めと言うようになった。私が朝鮮人を殺せと言ってどこでも言うようになった」
かいちょー「次に犯罪朝鮮人をぶっ殺せとやった。最初は『殺せ』はないだろうと言われたけど、今はどこでも言ってる。レベルアップしていく」

 レイシストをしばき隊をはじめとする反差別カウンターは、金、男女間のもめごと、方針の異なる仲間に対する誹謗中傷やリンチによって一気に化けの皮が剥がれたほど幼稚な組織が活動していたわけですが、そのような者を世間が評価するという「黄金の日々」があったわけです。そして、当時まともな論者として評価されていた松沢呉一さんや3羽の雀さんもまた取り込まれて稚拙そのものの擁護をしていたりしたわけです。でたらめそのものであった反差別カウンターが一時でも評価された理由について、私はカウンターの対象であった「行動する保守」が在日コリアンの殺害を主張するようなデモを行っていたからであると思います。言霊信仰の強い日本では、殺害を主張する言葉が現実となって在日コリアンの心身や財産などに被害をもたらすのではないかと考えるのが自然です。
 そして、言霊信仰によって評価された反差別カウンターが、そのことをまったく認識することなく、何年か後に「アベシネ」と主張する反政府デモを行うようになっていくのです。

「アベシネ」という主張に無理筋の擁護をする米山隆一衆議院議員

 「アベシネ」の言葉のとおりに、安倍晋三元総理大臣が銃撃されて死去したことにより、デモなどでそのような発言をした者が批判されることに対し、無理筋の擁護をしたのは米山隆一衆議院議員でした。

 日本では、言霊信仰から誰かの生死を絡めて主張することに不快感を持つ者が多く、更に結果としてその者が亡くなってしまったということで厳しい批判にさらされるという日本独自の宗教的な価値観に対し、なぜか英語を用いて擁護しようとする米山隆一衆議院議員は、政治家として最も必要な資質である有権者がどのように感じているかを察する能力に著しく欠けているとしか考えられません。しかも、米山隆一衆議院議員は、嫌でも人の生死に直面しなければならない医師でもあるわけです。米山隆一衆議院議員は、医師としてこれまで一体何を学んできたのでしょうか。長年政治を志して活動していながら公職に就いて政治をなすことができたのが未だ1年にも満たない原因はそのあたりにありそうです。