いいデザイナーの定義とは?|NTT Com KOEL Talk レポート#3
こんにちは、KOELの細谷です。本noteは前回に引き続き、2020年7月30日に開催されたイベント、「コロナの時代にデザインができること:NTT Com KOEL Talk #1」の様子を紹介するイベントレポートの第三弾です。
今回は経済メディアの編集長を務め、KESIKIでは企業のPURPOSEやナラティブ、コミュニティデザインなどを主導する九法 崇雄さんをモデレーターとして、視聴者の皆さんから寄せられた質問にKOELとKESIKIがディスカッションしたセッションの様子を紹介します。
いいデザイナーとは、汗だくの郵便配達員に氷水をあげられる人
九法さん:親方日の丸のイメージも強いNTTがデザインの取り入れ始めたのは非常に驚きですが、そもそもいいデザイナーとはどういう人だと思いますか?
デザイン思考がある意味ブーム化していて、いろんな組織がデザインの組織を作ったりしています。デザイナー戦国時代と言ってもいい状況で、たくさんのデザイナーと仕事している石川さんは「こいつデザイナーじゃねえな」って思うこともあるんじゃないですか?
石川さん:話しづらいな(笑)酒の席だったら話したいことたくさんあるよ(笑)
デザインの役割が広義に広がってきた中でも、ブレない大事な要素は二つあると思います。1つは相手への思いやりと想像力を持つこと。具体的に言うと、汗だくで来た郵便屋さんに水だけじゃなくて氷水をあげられること。これは僕が5歳くらいの時に本当にやったらしいんだけど、その時と今やっていることは一緒で、観察から共感と共鳴をするのが重要。
もう一つはどれくらいこだわれるかということ。日本人は完璧主義を持ちがちで、時には効率が悪いと言われるくらいのくらいクラフトマンシップが存在しているけど、これはデザイナーとしては大切なこと。ジョブズは日本的なビジネスの作り方をしていて、物とサービスにめちゃくちゃこだわっている。
今はデザインがカジュアルな道具化している。仕上げにこだわらず、フォントや色や表面のこだわりなく、なんとなくやってしまっている。本当は日本人が得意な領域のはず。形にしていくときに、本当にそのデザイナーしかできないことが「こだわり」としてできていること。それができるのがいいデザイナーだと思います。
九法さん:ご健在のデザイナーの中で石川さんが良いと思うデザイナーさんって誰が挙げられますか?
石川さん:何人もいるけど、インタビューさせてもらった深澤直人さんはいろんなものが見えている人で、デザインの匙加減を究極的に見ている。一瞬で見ただけで物の良し悪しがわかってしまう。そういう意味で素晴らしいデザイナーだと思います。
あとはデザイナーって枠じゃないかもしれないけど、佐藤雅彦さん。彼の作った「バザールでござーる」には佐藤さんにしか作れない気持ちよさがある。佐藤さんは映像にも音にもすべてにこだわって、総合的に体験を作っている。
九法さん:Twitterでも「デザイナーって職業として規定しなくても良い」ってコメントが寄せられています。
石川さん:僕も昔はシェフになりたいと思っていて、根底には相手を楽しませたいという思いがあった。そこが原点かも。共振と深堀り。これが大事だと思う。
ハッとするインサイトを見つけられたか?それをクリエイティブにどう込めたかが大切
九法さん:今まさにデザイナーを集めているKOELの方々にも聞いてみたいです。KOELはどういう基準でデザイナーを採用しているんですか?
福田さん:前提としてKOELで採用されるとNTT Comのインハウスデザイナーとして活躍することになります。大企業は既存事業をそれなりの規模で抱えていて、デザインの力でその価値を上げていくのもミッションになりえる。企業の戦略がある中で、ピュアなデザインを大事にしつつ、既存事業のDNAにリスペクトを持つのが大事。
VUCAのこの時代に、自ら事業を破壊することも踏まえて新しい事業をやるのはどこの会社もある意味当たり前になっている。そこにやりがいを感じてくれる人が欲しい。
金さん:石川さんが言っていた「思いやりや想像力」を企業に置き換えると「代弁者」になると思います。組織の中にいるとお客様や生活者の視点が抜けがちになるので、それを社内に伝えていくのがデザイナーの役割になる。本当の思いまで踏み込んで探って、伝えていくためには、汗だくの郵便配達員に氷水を出せるような、人のために本気になれる人が欲しい。
目の前の事業改善も大事だけど、その先にどういう世界を創りたいのかを語れるかを見ています。
九法さん:それを面接で見抜くのは難しいですよね。具体的にどんな質問をされるのですか?
金さん:面接ではデザインリサーチでどんなインサイトを得たのかを聞いています。ハッとした新しい気付きをいかに見出せたのか。そしてそれをどうサービスに入れ込めたのかを聞いています。例えばKOELのロゴのスラッシュも40.89°で作られています。これは人がものを一番遠くまで投げられる角度になっていて、こういう思いを込めることで世界観が生まれる。だから面接でも作ったものに対して「なぜこれを作ったのか」を深堀ります。
石川さん:僕は仕事でずっと観察を続けていたから、本気で言っているのか表面的なのか、すぐわかります。リサーチャーに「インサイトは?」と聞いて、インサイトを見つけられていない人は長々と喋る。本当にハッとした気づきがあれば一言で言える。リサーチって誰も発見していないインサイトを見つけられたのかが大事で、その一点を発見してそこから何かを生み出せればいい。網羅性を持たせるために何十人にインタビューする必要はないんだけど、ここはまだ浸透していない。ニーズとペインはみんな知っている。けど、それよりもインサイトを深く探るのが大事。
デザイナーの成果をどう評価するのか
九法さん:では次に、デザイナーの成果をどう評価するのかについて伺っていきます。このイベントに先立って事前に参加者に質問を募ったところ、この質問が多かったです。
福田さん:デザインが刺激するエリアはエモーショナルで数値化できないところは多分にある。同時に、企業としてデザインにリソースを投下する上で、数字で把握するのは外してはいけない。定量と定性の両方で見るのは人への評価でも同じ。KOELではOKRも導入しているが、定性的な観点で言うと「どういう状態になったら成功と言えるのか?」を考えて意識合わせするのが大事。
金さん:一言で言うと、お金と影響力で評価します。人事評価でよく使われるのが業績と行動評価だけど、これもお金と影響力と同じことを言っています。NTT Comでも訂正と定量、結果とプロセスの軸で評価していて、正確に評価できるように360°評価や専門家評価も取り入れています。
石川さん:IDEOでも360°評価を導入していて、特にユニークなのは評価軸を自分で作成する点。自分が伸ばしたいスキルは何かなど、自分で評価軸を立てた上で一緒に仕事した人たちからフィードバックをもらう仕組みになっています。
もう一つの評価軸は、他者をどれだけ成功させられたかを見ています。誰かと比較してどうじゃなく、他者をどれだけ成功させているのか。自分がどれだけ成長できたのかの軸。他人と比較してではなく、自分と比べてどうか。人をどれだけ成功させられたのか。この二つを見て評価しています。
そして、バックグラウンドが違う人が集まるので、他者のことを知りたいミーハーさが、無形の価値として、採用にも関係するし、他者とのコラボレーションにも関係する。そのため、評価や成果にもつながってくる。
デザイナーの役割はどう変わる?
九法さん:コロナの影響で、我々の暮らしに本当に必要なことは何かを考えるようになりました。便利で効率的なものを追い求める時代は終わろうとしていて、ビジネスのやり方や働き方も変わっていく中で、デザイナーの役割はどう変わっていくのか。お話を聞かせてください。
石川さん:ビジネスを作っている人は全員デザイナーであって良いと思う。変化する世界では、気づいた違和感を逃さず、主観を通した問いを立てられるスキルが重要になります。「本当はこっちの方が自然なんじゃないか」といった、そもそものあり様を問うことこそ、デザイナーの大切な役割です。
福田さん:NTT Comとしては、コミュニケーションを社会基盤として支えてきた会社で、そのDNAに共感しつつ、新しい価値を生める人が欲しいと思っています。
金さん:コロナで世界構造が変わっていく中で、新しい世界観を作っていくことになる。その時に大事なのが、クイックに作っていく能力。スピードとクオリティを両立させるのがさらに重要になっていくと思います。
KOEL嵯峨田によるグラフィックレコーディング
終わりに
NTT Com KOEL taklイベントの様子を、3回に分けてお届けしました。明日の状況も見えない今だからこそ、社会におけるデザイナーの役割は重要になっていきます。
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