マザー・トシコ 世紀末育児伝説
「ビェェェ!」
また。300グラムの離乳食を平らげた娘の啼泣にトシコは肩を落とす。
「嘘でしょ? 増やしたのにまだ足りないの?」
「ウッ… ウャァー!」
「オムツ? …してないなぁ」
「ナァーッ!」
「はいはい! わーかったから! 強化バナナ食べる?」
「ん。ええよ、バナナで」
「…タカコ。いちいち泣かずに最初から言って。毎回毎回」
「生後11ヶ月やしぃ」
「めんどくさ…」
「ささ。たくさん食べんといかんち」
「デブるよ」
「はやく大きゅうなって… この世のツミビトを殺しまわるズラ!」
「殺すとか言わない。冗談でもだめ。あとその方言リミックスみたいなのやめて」
「もし殺したら?」
「え、真顔? 国営放送ではツミビト人にあらずとか言うけど… ママは許しません」
これはワンオペ育児で困憊した母親・トシコの妄想ではない。何某の転生物語でもない。
2年後に遂げる “園長先生/五式乙型 殺し” を端緒として多くの者を狩り散らしてゆく娘と、その母親の物語。
【続く】
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