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「ぼくのお父さん」を超絶オススメしつつ、UberEats配達中にお父さんの背中を感じた、4度目の緊急事態宣言の夜。

カラテカの矢部太郎さんが、最近漫画家としてブレイクしているのを知っていますか?

率直に言います。
現在、ぼくが全宇宙にオススメしたいマンガ第1位です。

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いや、やっぱりウソです。

この自分の熱量が共感されないのが怖くて、あまりオススメできません。。
でも、共感できなくても共有したいのでオススメします。

実際めちゃくちゃ売れている本です。大絶賛されてます。この本が売れる世の中で良かったと思います。よく目にする感想は「ほっこりした〜」「可愛いー」「笑ったー」など。

ぼくは違うのです。号泣です。

もちろんほっこりで、可愛くて、笑えて最高なんです。

その上で、なぜかぼくは1ページめくるたびに涙で視界が見えなくなって、ティッシュを手探りするムーブをせざるを得なくなってしまうのです。

なんでこんなに?

ぼくも創作者の端くれなので、自分の感情が動いた時、なぜ動いたか?といつも自問しています。

なんでこんなに絵も文字も少なめの四コマ漫画に、涙腺をボッコボコに破壊されてしまうのか。分析してみました。

よくわかりませんでした。

でもたぶん、この絵柄の、この言葉たちのもつ、ぬくもりや、ゆっくりなスピード、余韻、余白。

そういう、一言で言えば「空気感」が、自分の琴線の全部の弦に触れてしまうんだと思います。

パッと見情報量(線の数や言葉数)の少ない、もはや文字すらない一コマに、すべてが含まれているような気がします。

それがもはや溢れ出て、包まれてしまうのかもしれません。

今日は、「僕のお父さん」という新刊を読んで、いやまさかこれも傑作なんてことは・・・と思ったら、もう開始数ページで嗚咽が出るほど泣いてしまってなんかもうダメでした。

雰囲気伝えるために、一枚だけ載せていいかしら・・・

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もうお読みの方は「え、そんなガンガン泣くマンガ!?」とお思いの方もいると思います。いや、実際そんなガンガン泣くマンガじゃないと思います。

だからぼくもよくわからないんですすみません。

でも、「おんなじだ!」という気持ちの人がもしいたら嬉しいし、感想語り合っちゃいたいし、そんな人と、遠目で会って照れ笑いしてそのまま別れたいです(どんな関係や)

実際「大家さんと僕」全2巻を読み終わったあと、「これはあの人もきっと好きだぞ」という人に住所聞いて「たぶん絶対好きだから!」と送りつけたりしてしまいました。

ペイをフォワードしたくなる、そんな魔力すら僕にはあった本でした。

矢部太郎さんに切り取られると、ただの日常が、こんな、こんなことになってしまうなんて。もう魔法としか言いようがない。


そんなわけで、眼がもう吸血鬼みたいな状態になったけど今日もUberEats配達。

最近毎日乗ってます。今日みたいな雨の日でも雨合羽着て走ってます。

小ぶり雨をナメて、出てから最悪のタイミングで豪雨になり、挙句道に迷ったりとか、もちろん失敗もありますが。
今日みたいな雨のなかガタガタの国道沿いなんか走ってると、ちゃんと歩道に寄れるだけ寄って走っていてもガチなスピードの車がスレスレで通り抜けていったりして、一回でも滑ったら死ぬなぁと考えながらペダルを漕ぎます。

突然、自分がこの世で一番孤独でずぶ濡れなんじゃないかという錯覚に陥るときがあります。

そんな時、同じく雨の下、道路工事をしている場所を通り抜けながら、ヘルメットのおじさんひとりひとりにペコペコ会釈をして通過します。

ペダルを漕ぐ力が、少し回復します。

配達員の仕事を通じて、いろんな感覚が戻ってきています。

社会に生きている感覚、
音楽を日常的に聴く感覚、
仕事に責任を持ち、人へ配慮する感覚、
社交的で、どこの誰に対してもこうべを垂らす感覚、
生きるエネルギーが湧く感覚。

たくさんのことに気付きます。

「自動車専用道路」と書かれた整備された道路がとてもありがたいこと、
いまやインフラとなった「配達する人たち」が雨中も毛細血管のように働いていることを、目で見て実感すること、
家にいるときと自転車にいるときで聴きたい音楽がちがうこと、
昼より夜の配達が好きだし、日照りより霧雨が気持ちいいし、小さめの駅の周辺の道が一番好きだということ、

配達員あるあるで、実店舗の名前とアプリ上でのお店の名前が全然違うこと。(わからない時があってちょっと困る)

同じ店で3つくらい違う名前でUberEatsに登録してたりして、店構え的に海鮮の居酒屋なのに、そこに「石焼ビビンバ専門店」と「からあげ専門店」がUberEats上で同居していて「専門ってなんだよ!」と心の中でツッコミを入れてしまう。

営業も終了した20時以降。
電源の落ちた自動ドア。その重ーい引き戸を開けると、薄暗く、お客のいない閑散とした店内。出前のために厨房に一人残って商品を作り終わっている店員さん。これもあるある。

その普段目にすることのない店内の空気のなかで、なんやかやと作業してる人、少し重たい表情でタバコを吸ってる人、

いろんな感情を、そういう店に入るごとにみた気がしました。

「僕とお父さん」の、お父さんの背中にちょっと似ている気がしました。

みんな、そうやってあの手この手、知恵を振り絞ってお店を頑張っていました。

4度目の緊急事態宣言で、この人たちもまた、さらにいろんな感情になるでしょう。SNSのタイムラインにはない、いいねのつかないたくさんの物語。

夜の配達は、あまりに毛細血管に触れすぎて、涙が出そうになります。

この配達の仕事をきっとずっとは続けられないけど、わたしも毛細血管の一部になれて嬉しいです。嬉しい。

みなさん、どんどん出前注文してくださいね。

それだけで力が出ますから!





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