テロリストに花束を

桐島聡容疑者が死んだ。

ビル爆破に関わったらしいのだが、死んじゃったので
『どの程度、関わっったのか』は分からない。
ただ、半世紀近く逃げて、最後はこう言う形で死ぬのってのは

「テロリストとしての挟持を持ち続けた」

と言う気がする。

此れは彼がテロリストだから、とかアナーキストだとか、と言うより『男』として、やっぱり

『やり遂げる』

って言うのかな。

そう言う『意地』みたいなのモノを感じる。
『挟持』と言うか。

1974年とのか事件だから私は産まれてないどころか、両親はお互いと出会ってない。
だから、正直に言えばニュアンスは分からない。

オウム真理教か？って言うと、やっぱりアレはカルト宗教なので違うだろうしなぁ。

以前、●▲■とか山脈ズに関わっていた頃に、そこの渡辺悦子さんに

「東アジア反日武装戦線って知ってます？」

と軽く聞いたら

「・・・昔、家に来たことがあるわよ・・・。あの人達・・・」

と、何だか不穏なモノが来た、って言う感じである。

その不穏な悦子さんの表情は印象的だった。

オウム真理教ってテロ組織って感じだけども、思想的にはアナーキズムでも、何でもなくて、やっぱり胡散臭いカルト宗教であって、それは傍から見ると笑ってしまう。

やっぱり『東アジア反日武装戦線』って言うのは、違ったんだろうか。

1977年産まれの私には、そのニュアンスは難しい。

時々、思うのはマルクスの著書には『暴力革命』と言う単語は出ていないのだが、何故、『暴力革命』になったのか？
そして、全共闘にせよ、赤軍にせよ、革命後の社会のビジョンはあったのか？と言う気がする。
そもそも、革命の為の明確なビジョンがどの程度あったんだろうか。

まぁ、全共闘とか、そのデモとかは『あの時代の流行り』だったらしいから、皆がマルクスの著書を読んでいたワケではないみたいだし、「流行っているから行った」と言う人が大半だったらしいが。

ただ、大規模デモとか、警察官を焼き殺したり、とかと『ビル爆破』は違う。

それは当人達も知っているだろうし、日本の刑法では爆発物殺傷は可也、罪が思い。
無差別殺人になるからである。

それを全く理解せずに行った、とは考えにくいのだが。

晩年の桐島聡を知る仕事の同僚曰く

「音楽に合わせてギターを弾いていた（ギターが弾けたのか！）」
「ジェームス・ブラウンが好きだった」
「音楽ビデオを沢山持っていた」
「気さくで良い奴だった」
「大人しい人だった」

らしい。

同じ、『ジェームス・ブラウンのファン』としては何となく嬉しい気もする。

嘗て、オウム真理教事件華やかしり頃。

何かのエッセイで

「今の時代は『ピュア』とか『真面目』と言うモノを受け入れてくれる場所が皆無だ」

とあった。

多分、桐島聡にせよ、赤軍、連合赤軍の人達は真面目でピュアだったのだろう。

大体、地下出版と言ってもネットがない時代に『腹腹時計』とか、公安に簡単に見つかるモノを出版してみたりしているんだし。

「我々は『あしたのジョー』である！」

とか。

もう、中二病じゃん、って気がするけど、そう言う中学生的な真面目さやピュアさを・・・言ってしまえば既に70年代には赤軍や連合赤軍くらいしか受け入れてくれなかったのかも知れない。

桐島聡が関与した事件の数年後にはタモリが『ネクラ・ネアカ』を言い始めて流行語になる。

桐島聡みたいな・・・赤軍や連合赤軍に行ってしまう真面目でピュアな人達にとっては、非常に生きにくい時代が迫っていた・・・とも言える。

男性は幾つになっても中二病だ。
そしてロマンチストで、ナルシスト。
そして、男としての意地がある。
それが、どんな意地か分からないが、男が男でいる為には『意地』を張り、食わぬ武士でも高楊枝と言うか、意地を張らなきゃならない。

でも、そのままだと、やっぱり生きにくい。

だから、皆、誰しも何処かで『意地』とか『挟持』を捨ててい行く。

ヤクザ映画が未だに何処か輝くのは、男としての意地や挟持を維持していく姿に、嘗ての自分を見るのではないか。

何度も言うが、桐島聡が様々な事件に関与していた可能性はあるが、「どの程度、関わったのか」は全く分からないのである。

自供したのも数日だったし、時間も限られていたので、

「俺が『桐島聡』だ」

しか分からない、と言うか。

桐島聡が半世紀近く、しかも国内で逃亡生活を続けていたのは、公安にとっては苦渋の涙だだろう。

だが、己の
『意地』
や
『挟持』
を手放す事もなく、最後まで
『やりきった』
と言う姿に私はモラルや道徳、タブーを超えて感動せざるを得ない。

勿論、彼が行った事は犯罪である。
犯罪の可能性が高い。

だが、私の感情はそれを超えてしまう。

己の『挟持』『意地』を張り続ける。
同じ男性として、やはり「スゲぇな」と思ってしまう。