もうすぐ保育士になる人へ。保育記録が書けるようになるまでに大事なこと。
保育の現場は職人気質
子育てに正解がないように、保育も現場の感覚で動いています。
それもそのはず、同じクラス、同じ先生の組み合わせは
どこにもないから。
あるのは、ふわっとしていてよくつかめない保育指針のみ。
そして、そこにいるのはいつも変化まみれの子どもたち。
同じくらいの年齢で集まっていますが、
個人差が半端なく、家庭の複雑な事情を背負っていて、
なおかつ、理解力が未熟なためこっちが合わせるしかない。
そして、保護者はわが子中心にしか見ていません。
集団で見ているこちらの都合を本当に理解してくれるのは、
ひと握りのいい人たち。
だって、それぞれみんな必死に生きていますから。
そんなことは、当たり前の世界です。
それに文句を言っても始まりません。
だから、自分の保育レベルを上げていきます。
私の教育をしてくれたベテランの先生の書き物の教え方は
過去の記録を見せて、こんな感じで書いてねと言うだけでした。
これって、この例は別の子どもたちの事だし、
まるっきり同じじゃダメだし、
えっと、本質はどこにあるの???
と疑問が浮かびました。
それでもとにかくやるしかない。
現場は、まさに職人技の世界でした。
保育現場は書き物だらけ
子どもたちと遊んでいるだけでいいね、と言われたことがあります。
それは、本気で向き合ったことのない人のセリフです。
集団の子どもを見ていくのがどれだけ大変か。
感覚を研ぎ澄ませ、背中に目をつけるように
それでいて、柔らかい雰囲気で1日の空気を創り出す。
最低限、安全を守りつつ、楽しさをうむ。
こんな職人技をいつもやっています。
基本は、クラスの担任が子どもたちの保育をするので、
園長や保護者には何一つ様子が分かりません。
だから、保育内容の伝達手段が「書く」ことになります。
園長向けに保育記録。
自分用かつ園長向けに年間計画、月案、週案。
行事があれば、行事計画書。
会議の時に使う、保育反省記録。
保護者全体へのお知らせに毎日の記録。
毎月のクラスだより。
園だよりを担当する時もあり。
保護者個人に向けて、おたより帳。
研修に行ったら、研修報告書。
会議の議事録も担当で回ってきます。
子どもが怪我をしたら、その報告書。
電子機器を持ち出すのにも、承認の記録簿に記載。
とにかく、書くことのオンパレード。
手書きだったり、パソコンで作成だったり。
伝達手段として、今は動画や写真などの手段もありますが、
これは公的な書類としては認められません。
だから、保育記録として文字で
保育の証拠を残していくことは必要な技術。
これをするから、お仕事として成り立ちます。
ただね、新人保育士は書けないんですよね。
新人の頃の私は、提出期限を守れなかったこともありました。
というか、よくわからなかったのです。
これらの意味が。
私の頭にあるものを実行すればいいだけなのに、
なぜ、わざわざ書かなくてはいけないのか?と。
しかも、毎日の流れについていくのに必死すぎて
考えて書くと言うよりも、
ただ出来事を書き連ねる日記みたいになっていました。
本当の書き方が全然わかりませんでした。
この書けなかった、
というのに原因があったのが今ならわかります。
自分のノートに子どもの様子を書くことはしていましたが、
「あなたは、何を大切に保育をしているの?」と聞かれ
答えられない状態だったのです。
私自身に芯と言うか、保育の軸がなかったからです。
そりゃそうですよ。
子どもも産んでいない若い先生が1年目で、
この子たちをどう育てたいかなんて
わかんないよ!って思っていました。
今ふりかえると、
年間計画を立てる時に決めたじゃんって
ベテラン先生に突っ込まれそうですが、
その時は「わかりません…」と自信なく答えるしかなかったです。
そうなんです。1年目はわからないんです。
先輩はもう新人の頃の自分の気持ちを
忘れてしまったかもしれませんが、
学生からいきなり先生として現場にぶっこまれて
「質問してね」と優しく言われても、
何を質問していいのかわかりませんし、
現場が忙しすぎて、時差勤務ですれ違って
聞くことすらも難しい現状でした。
あの時は、0歳1歳児担当で、
いつ泣くか、怒るか、漏らすか、吐くか、落ちるかの
対応に迫られるかわからない子どもたちがいますから。
この子たちの安全を確保しながら、
質問をするって難しかったのです。
質問をするというのも、
自分の力量が問われますしね。
ただ、先輩たちも
1年目の私が何で悩んでいるかが
見えないからこそ、質問していってくれたのはわかります。
助けたいからと思ってくれていたことはわかります。
言ってほしいと。聞いてほしいと。
もがいて、もがいて。
毎日子どもたちと向き合って。
ずっとモヤモヤしたままの私でしたが、
ある時先輩から
「あなたは、自分の頭で考えられる子を育てたいんじゃないの?」
と言われてはっとしました。
そっか、それだ!と。
私の場合、保育士4年目で
ようやくそれが分かりました。
私の保育の軸が。
書けるようになった時は、保育もできるようになった時
保育現場は、いつも実践ありきです。
楽しく、充実した日々の中で
自分の至らなさや、
もっとこうしたかったという後悔や、
こうするとうまくいくという発見や、
防ぎきれない事故への反省や、
いろいろ出てきます。
その度に、自分と向き合います。
それを素直に書けるのは、
安心できる雰囲気の中だけで、
誰がその記録を見るかによっても
変わってきてしまうかもしれません。
それでも、
書き続けるしかありません。
自分の保育を磨くために。
私も、結婚して出産して
後輩が多くなってきました。
そんな時、悩んでいる後輩に
「こういうのって、難しいよね。
若いときってさ、頭でわかっていても
できない自分の方が悔しくてさ。
大切にしたいことなんて言われても
わかんないよね~。」
って正直に言ったら、
「そーなんですよ!何でわかるんですか!?」と
びっくりされたことがあります。
いや、わかるって。
みんなそういう道を通ってきてるんだよ。
あなただけじゃないから。
自分の保育を振り返り、
書いて、また保育して。
こんな繰り返しの中で、
私は成長してきました。
もし、
4月から保育士になるって決まっている人がいたら、
最初は書けなくても大丈夫。
いっぱいいっぱい悩むといいよ。
たくさんたくさんもがくといいよ。
でも、かわいい子どもたちがいるから大丈夫。
あなたなら、できる。
書けるって思った時は、
もう保育ができていて
新人から卒業している時だから。
がんばってください。
陰ながら、この記事が助けになることを祈って。