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保育士だった私が、6人の園長先生から学んだこと。


なぜ、園長に?

公務員は転勤があるのです。
だから、私の保育園の移動と園長自身の転勤が重なって
今まで、合計6名の園長先生に出会ってきました。
その園長先生たち全員に、私はこんな質問をしてきました。

どうして、園長になろうと思ったのですか?」と。

もしかしたら、
私もいつか園長になるかもしれないと思い込んでいたから。
あと、素朴に疑問だったから。

1人目、ムカついたから

新人の時お世話になっていた園長先生です。
私の保育仕事を支えてくれて、憧れの先生です。
はっきりきっぱり意見を言われる方だけど、
みんなのことを思ってくれていて、優しさもある先生。
職員がミスをしても「おもしろーい!」って言って水に流します。

この先生の答えは、
「私が保育士で30代の時に、
その時の園長のやり方が気に入らなくて!
だから私が園長になってやったのよ!」と。
かなり強気発言でした。

それというのも、名古屋の歴史が関係するのですが、
当時は保育園の数が今よりもっと少なくて、
それでも女性の社会進出が増え始めて、
子どもは多く、先生は少ないという状態だったそうです。
園長自身が担任を持つのも当たり前。
なおかつ80人の子を1人で見るなんて当たり前。(恐ろしい…)
保育士は肩や腰がやられてしまい働けないという
事態にもなっていたそうです。
園長になりたい人も少なくて、
保育業務以外の男性職員が園長としてやってきても、
現場は全然まわらない。
そこで、保護者と組んでストライキを起こし、
市長が変わり、「ポストの数ほど保育所を!」
というスローガンを掲げて闘っていたようで。
園長職も現場を知っている女性から出そう!という流れもあったようです。
当時の私は、先輩たちからこんな話を聞かされていました。
なんか、時代が違う。。。
その中で、よりよい保育をするために立ち上がられたそうです。
だから、園長会とかでの発言力はすごかった人みたいです。
現場の熱量が半端ない。

2人目、書けない自分にショックをうけたから

園長になるには、試験があるそうです。
公務員なので、係長です。その上が課長職。
その試験内容は面接と小論文だそうです。

「1回目に試験を受けて、自分が今までやってきた保育の事を書けないって事に愕然としたの。だから、絶対書けるようになるってがんばったの」
2人目の先生の答えです。

この先生は、本が好きで努力家の園長先生です。
新米園長だったので、毎日降りかかるいろいろな出来事に
感情を振り回され苦労されていたようですが、頭の良いできる方。
(ちょっと事務所に入りにくい。)
保育には入らず、管理職としての立ち位置を貫いていました。
頑張り屋の先生は、自分の実力のなさが許せなくて上に上がった模様。
今では、もっと上にいらっしゃるのかも。

3人目、流されるように

実は、この時期に私が妊娠・出産していたので
正直深くお話したことがないのが3人目の先生です。
今までの先生とは違って柔らかい雰囲気だけど、考えが読めなかったです。
私の妊娠も喜んでくれたけど、管理職としてはちょっと嫌そうでした。
(他にも若い先生たちが妊娠希望を出していたのもあり、順番決めてって言われました。まぁ、マタハラと言えばそうだけど、管理する側も大変だし、女の職場だしなぁ。)

だから、聞くタイミングも悪かったのか、そこまで理由も強くなく
「その時の園長先生に、次試験を受けるのはあなたよって言われたから。」
みたいな理由だったと思います。
私の心はあまり動かなかったので、印象が……。

4人目、園長にはなりたくなかったのに!

笑顔が素敵でとってもいい人。
でも、開口一番
「園長にはなるつもりがなかったのに……。」

やる気がなーい!と思いきやそうではありません。
この先生、子どもたちが大好きで現場が大好きなのです。
でも、公務員なので転勤があります。
まれに保育園以外にも。
そう、役所の保育課。子どもはいません。
システムとしては重要なポジションですが、
児童相談所と絡んだり、全保育園の管理だったり、
研修のサポートだったり大変な業務がいろいろあって、
緊急対応や、残業だらけの部署です。
そこでご活躍された先生で、めっちゃ頑張っていたようです。
保育課の信頼もある方。
ただ、現場にもどるためには、園長になるしかなく、
仕方なく試験を受けたようです。

でも、この先生、真面目ですごくいい先生です。
具体的に指示するのが上手で、職員も一目置いていました。
こういう日々の細やかな伝達のやり方でわかりますよね。
実力って。

5人目、私も園長なんていやー!

5人目の方は、
「私も、園長になる気なんてなかったの。でも、最後だから数年だけ。」と。

またしても、園長イヤ発言か!と思いきや
4人目の先生と繋がりがあるようで、
それで思考が一緒なのかもしれません。
この先生は、もうすぐ定年で、
数年間だけと、周りに説得されてしぶしぶ受け入れたそうです。

この先生はとにかく穏便に!
口角をあげて笑顔で乗り切っていきましょうというタイプでした。
物腰は柔らかく、困った所には自分が動き、
でも、できれば面倒は起こさないで!という感じ。
人生、逃げ切り戦略ですね。
この気持ちもわからなくもない。

名古屋の保育の流れで、
最初の園長先生の時代はどんどん保育園を増やすぞという
意気込んで保育改革をしていた時代です。
でも、保育園の数が増えてきたけど、
今度は少子化です、という流れでは、
公立園を民営化して予算を削減しますという感じで
公立保育園は少なくなっていきます。
そして、多様化。
ついていく、やりこなすだけで精一杯。
増えた業務の分、人は増えているけど
本当にできる人が増えていない現状。
はたして、できる人って誰だろう?

6人目、それ、きいちゃうの?♪

この流れから意外にも、
新人のこの園長先生は自分で志願した模様です。
やる気満々で、私が保育園をよりよくしてみせる!って気合十分。
このタイプの先生は初めてでした。

6人目の先生の答えは、
「えっ、それ聞いちゃう?私はね、後輩たちを育てたかったの!」
と(保育伝承の意義とともに)嬉しそうに教えてくれました。

あっ、ずれちゃった。
私は、これまで保育の本とかビジネス本とかずっと読んできました。
そこで、人が育つために必要なのは、
その子自らの育つ力を信じて支える姿勢しかないと知りました。
保育現場でいうならば、
それぞれの子どもたちのペースを信じて見守って、
自分でやれることを任せる環境をいかに整えるか。
園長の立場なら、
それぞれの職員の能力を信じて任せること。
本当に育てたいと思うなら
自らもしくは見本となる先生をより褒めて、
他の職員に注目させていくこと。
でも、この先生の考え方は、自分が後輩を育てたい!でした。
これは、大変な予感しかありません。
(そっと、カーネギーの人を動かすを置きたいぐらいでした)
実際、できない職員を人前で叱るのはとってもお上手です。

でも、私自身も気をつけないとそうなりがちと反省しました。
親になった私もついつい自分が子どもを育てる!と意気込みがちで
それは、本当に我が子たちにとって良い事なのか疑問だからです。
子どもたちはきちんと育つから大丈夫!という自信を私がもって、
いくら忘れ物が多いからって、できないと決めつけない!こと。
もしそれで言っても改善しないなら、冷静な時にシステムで解決するよう心掛けよう。
(はぁ、今日も宿題がない!となぜが朝ギリギリに思い出し、口論の末、僕は悪くない!ちゃんと入れたはずだもん!と出て行く息子……なぜ今言うのだ?もっと時間はあったのに……まだまだ息子を信じ切れていないのか、システムエラーなのかこれから検証しよう)

+αの先生にもご挨拶

こうして、6人の園長先生の話を聞いて、
私は園長仕事(管理する立場)は、
わかるけど、向いていないと悟りました。
それより、
プレイヤーとして自由に子どもと一緒に
楽しいものを創り上げていくのが好きだと。
でも、あのまま現場に居続けても、
我が家を楽しいものに創り上げるための時間を割けないな~。
じゃあ、仕事は手放そう!と決意し、
そして、今にいたります。
人生の時間は有限です。

だから、すべての園長先生に感謝です。
気づきをくれてありがとうございました。
そういう価値観を見せてくれてありがとうと。
私にとって、憧れになったり、
反面教師になったりいろいろだったけど、
それが私の人生を彩るご縁でした。
17年間、充実していて楽しかったなぁ~☆

仕事を辞めてから1回保育園に遊びに行きました。
その時は、また知らない園長先生でした。
挨拶させて頂き、子どもたちと遊ぶ許可をもらいます。
この先生の評判はとてもいいようで、
職員も楽しく保育しているようです。
さすがにあの質問はしていませんが、
こうやって、
社会はまわっているんだなぁ~って思いました。
どういう価値観の人でも、
そのポジションにつく人が必要で、
それによって支えられている大勢の人がいるってことが。
大変なポジションを引き受けてくれてありがとうございます。

この記事が誰かの参考になるのかはわかりませんが、
私の気づきの記録として残しておきます。
読んで頂きありがとうございました。


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