障がいのある子と家族のための「サバイバルキャンプ・防災ワークショップ」に参加しました!
もしも災害が起きたら、障がいのある子どもとどう過ごす?
いつどこで起こるかわからない大災害。
たとえば首都直下型地震は、今後30年以内に70%の確率で起こると言われています。(2014年・地震調査委員会より)
備えが大事とわかっていても、本当にちゃんと準備ができているかと言われると、少し自信がない方も多いのではないでしょうか。
特に、障がいのあるお子さんや、医療的ケアが必要なお子さんの場合、
「電源を失ってしまったらどうなる?」
「いつもと違う環境は不安」
「一般の避難所で騒いでしまったら周り人に怒られてしまうかも…」
といったさまざまな心配も。
ここ数年、私たちの助成事業でも、
いわゆる災害弱者といわれる子どもたちへの「防災学習」の提案が増えています。
今回は、一般社団法人みらいTALKさんと浜松市の災害ボランティアさんとの共同運営で開催された「障がいのある子と家族のための サバイバルキャンプ & 防災ワークショップ」に参加してきました。
当日の流れや感想など、レポートしたいと思います。
リアルな避難所生活に近い、体育館内の訓練会場
会場は静岡県立浜松みをつくし特別支援学校の体育館。
大地震の発生から3日後という想定で、体育館を避難所と仮定しての一泊の訓練です。
特別な防災設備はなく、電気・ガス・飲料水も止まっているという想定。
持ち物は夕食や寝具、防寒具など、各家庭で必要だと思うものを自分たちで考えて用意します。
各家庭で必要だと思うものを自分たちで考えて用意します。
当日会場に入ると、テントを持ってきている方が多くいます。
実際の避難所では、テントが認められていないところもあるようです。
このようなパーテーションを用意した方も。
テントが持ち込めない場合、パーテーションなら大丈夫かもしれません。
設営の後は、東日本大震災で被災された方々の講演会などを中心とした、防災シンポジウムが開催されました。障害のあるお子さまといっしょに被災されたときの体験など、貴重なお話を伺いしました。(講演会のくわしい内容はこちら)
今回は看護師と医師の回診があったので 、参加者の方は安心してキャンプに臨めたようです。
また回診のときだけでなく、必要なときや困ったときには自分から声をかけ、支援をもとめることも訓練の目標の一つとなっていました。
避難所での「空き時間」や「夜」の過ごし方が難しい
設営タイムが終わり、次の訓練プログラムまでぽっかり空いた時間ができました。
体育館内では、ボールをもっているお子さんや、ずっと楽しそうに走り回っているお子さんの姿が。
実際の災害時は、危険で外に出ることができない状態もあるそうです。
長く感じる時間が流れ、日も暮れて夜になりました。
非常用電気のみが光る、静かな空間です。
そんな中、暗がりのせいか、いつもとちがう状況にパニックになるお子さんも。おうちの方をはじめ、まわりの方も様子を気にかけて声をかけるなど、助け合いが見られました。
座談会形式のワークショップで、防災の知恵を出し合う
各自用意してきた非常食で夕食をすませた後は、暗闇の中で座談会「どうする防災」が行われました。
災害時に必要な備えや心がけ、地域とのつながり、本日の感想などをたがいに話し合います。
「最初の3日が勝負。それ以降は、支援物資も届きはじめ、行政も動き始める。そこまでは自助でがんばるしかない。」
「薬など、必需品は分散させていろいろな所に置いておく」
例)車、家(台所、寝室)、リュック、保護者のキーケース、作業所、グループホーム
「できるだけ避難所には行きたくない。でも家が被災した場合には行くしかない。その場合は、前向きにがんばるしかない。」
「みんな自分のことに精一杯で怒っている人も多いが、助けてくれる人もいる。普段からつながりをもち、理解してもらっていると、助けてもらいやすい」
「人とつながることが得意ではない場合も、学校や放課後デイなどフォーマルなところと普段からつながっておくと、災害時に助かることがあるかもしれない。」
「普段から、ガソリンが半分になったら必ず満タンにしておく。」
など、参加者のみなさんから実践的な声がたくさん挙げられました。
静岡県の特別支援学校の先生方も参加されており、避難所の現状を聞くこともできました。
福祉避難所に指定されている学校には、電源が確保できるようにソーラーパネルがあるなど、医療的ケアが必要な方の命を守る工夫がされている所もあるそうです。
一方で校区が広いので、通学している子どもたちがその学校の体育館に避難して来られない場合も多いとのことでした。
ほかにも、民生委員の方、災害ボランティアの方などがそれぞれの立場で、ケアや配慮の必要な子どもたちが災害時に安心安全に過ごすためにできることを考え、発信していました。
暗がりにも徐々に慣れ、避難所での夜を過ごす
夜9時、消灯の時間です。
子どもたちは静かになりました。すでに暗さにもだいぶ慣れており、すぐに眠れたお子さんが多かったようです。
ふだんから睡眠のお薬を使っている方も多いようで、避難時の必需品の一つと言えそうです。
暗い体育館で、医療的ケアのための機械音や、痰を吸引する音、アラーム音などが不定期に聞こえていました。
当事者の方の中には、こうした機械音などを気にして一般の避難所には行きづらいという声もありました。
防災食での朝食と、訓練の振り返り
無事に朝を迎え、ラジオ体操でさわやかな1日のスタートです。
朝食は、ボランティアの方々がご準備くださったアルファ米・味噌汁などや、参加者で持ち寄った具材をいただきました。
朝食の後は「ふりかえりの会」。今回の訓練を通してわかったことを、発表し合います。
・ポータブルクーラーが役にたった(医療的ケア児のご家族)
・今回はスペースが確保されていたが、実際は、避難所にはスペースがなくて入れないだろうと感じた(医療的ケア児のご家族)
・非常灯などの光や天井が気になって眠れなかった。テントに天井があるタイプだと周りが気にならなくて落ち着いて眠れそう(発達障害のお子さんのご家族)
・元から偏食気味だが、ここに来るといつもと環境が違うので、いつもと同じものも食べなかった。頻繁にキャンプをすることで慣れるかもしれないと思った。(発達障害のお子さんのご家族)
・普段から防災食を食べておくことで慣らしておくとよい(発達障害のお子さんのご家族)
・家族の支援に必死で、自分は朝から何も食べていないことに気づかなかった。(医療的ケア児のご家族)
・やはり一般の避難所にいるのは難しいと思うので、基本は自宅避難にしたいが、自宅避難だと、支援物資がもらえないので普段からの備蓄が大事だと思った。(発達障害のお子さんのご家族)
・処方せんなどの情報を持っておくことも大事(発達障害のお子さんご家族)
・バッテリーは一晩で50%消費したので、充電について考えておく必要がある(医療的ケア児のご家族)
などなど、たくさんの気づきが共有されました。みなさんにとって実りある時間だったようです。また子どもたちにとっても、ふだんとは異なる災害時という状況を経験できた貴重な二日間になったようです。
最後に参加証をいただき、訓練は終了しました。
災害時のシミュレーションができる貴重な機会に
主催者代表の宮本医師は、浜松医療センターの小児科医。この活動を始めて11年目だそう。
東日本大震災の際に、障害のある方々が避難所にいることができなかったという話にショックを受け、ご自身でできることはないかと模索し、この活動を始められたそうです。
近くで参加できる防災キャンプなどの訓練がない場合は、たとえば
・家族でオートキャンプをしてみる
・後述の災害ストーリーを見て、準備物をそろえてみる
・一晩水と電気なしで過ごしてみる
といったことをしてみると、見えてくるものがたくさんありそうです。
今回の参加者の中には、「プチ防災キャンプを主催してみようと思う!」と力強くおっしゃっている方もいらっしゃいました。
災害を経験された方も「普段からの備えがほぼすべて」とおっしゃっていました。
できることから、少しでも備えていきたいですね。
今回参加させていただいたキャンプはこちらです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?