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就活奮闘絵巻 feat.味噌汁

九州/四年制大学文系/実写・イベント志望

あなたは絵巻物をご存じだろうか? 鳥獣人物戯画、源氏物語絵巻、伴大納言絵詞、信貴山縁起……え? 後半はマイナー? まあまあそういわずに、機会があればぜひ一度見ていただきたい。

私は大学で絵巻物の持つ線描の美しさ、躍動感に惹かれて研究している。展覧会のための遠征もお手の物だ。ガクチカは何かと聞かれたら、自信をもって絵巻物研究と答えられる。とはいえ学問が就職先に直結することは少ないし、就活ではサークルやアルバイトの経験で己を武装する人が多いことも事実だろう。私もこの就活という大きな渦に飲まれ、次第に出版社で働くという夢はどこか遠いものになっていく気がした。

しかしあまりにも長く持ち続けたその夢は、心の奥底でずっと声を上げ続けていた。このままでいいのか、と。私は内定者エッセイに並ぶ「ありのままの自分で」という言葉を信じてみることにした。私は諦めが悪いのだ。

やっとの思いでたどり着いた面接では絵巻物研究の話から、思い出の書店の話、よく行くアニメイトの話、秘蔵のBLコレクションが家族にバレた話まで、怒涛の勢いで喋り尽くした。とくに研究についてはどの面接でも食い気味に質問されたので、こちらも前のめりになって熱弁した。専門的になりすぎては面接官にその魅力は伝わらない。漫画やアニメとの共通点も絡めつつ、学問的な楽しさをわかってもらえるよう話すことを心掛けた。

また、大一番の三次面接でカップ味噌汁を手に入室したのは後にも先にも私だけだろう。作文の内容に触れてほしくて持ち込んだのだが、面接官にはとんでもない飛び道具に見えたらしく、警戒されすぎて全然話を振ってもらえなかった。

4回にわたる面接を経て私は、気づけば自分という絵巻物を広げてその内をさらけ出していたのだった。絵も物語も、きっと傑作ではなかったけれど、そんな私を講談社は面白がってくれた。

願わくは、これを読んでいるあなたも、自分だけの物語を紡げますように。

三次面接を共にした、某コンビニで買ったカップ味噌汁。入室した瞬間、5人の面接官をカイジよろしくざわつかせた逸品。
すべての対面面接で着用した鳥獣人物戯画のTシャツで、「ギガッ」の擬音がポイント。コミカルさを中和しようとモードな感じに(?)コーディネートしたら、帰りの駅でバンドマンと間違われた。

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