見出し画像

魔法の言葉

関西/四年制大学文系/コミック志望

「俺の敵はだいたい俺です」

私を講談社に導いてくれた魔法の言葉だ。

講談社のES締め切り日。私は迷っていた。目の前にはまっさらなES。正直に言うと怖かった。数ヵ月前に講談社のワークショップに落ちた苦い記憶が思い出される。あの時みたいに、また落ちてしまったらどうしよう。その上、本選考にはいくつもの面接がある。その面接できっと落とされてしまうだろう。講談社の作品が大好きだからこそ、そこから自分が否定されてしまうかのような、あの感覚が死ぬほど怖かった。講談社に行けないことよりも、講談社に落ちることが怖かったのだ。

私はくよくよ悩みながら、「宇宙兄弟」に手を伸ばし読み始めた。なんとなくここに何か答えがある気がした。いつの間にかESのことなんか忘れて何冊も読んでしまっていた。そして例の魔法の言葉が目に留まった。

「俺の敵はだいたい俺です」

正に今の自分じゃないか。やりたいことにまっすぐ進めばいいだけなのに、なぜここで尻込みをしているんだろう。自分の夢を邪魔して、足を引っ張っているのは他の誰でもない「俺」自身だった。この言葉に目を覚まさせられた。気づけば、私はがむしゃらにESへ自分の思いを書き殴っていた。

面接でもありのままの思いをぶつけ続けた。物語から生きる力や知恵を貰ってきたこと。そうやって心を揺さぶられるたびに、自分も人の心を突き動かすような物語を届けたいと何度も思ったこと。誰かの背中を押せるような、そんな言葉を届けたいと思ったこと。面接官の方々は私のありのままの思いを真正面から受け止めてくれた。定型文的な質問はなく、常に自分の言葉で対話をすることを求められ、その言葉のやり取りがとてつもなく楽しかった。いつしか、落ちることが怖いという恐れは、どうしてもこの人達と働きたいという希望へと変わっていた。

私はこの人達が紡いできた言葉に背中を押してもらってこれを書いている。いつか私もそんな言葉を届けたい。そう強く思った。

最終面接の直前に購入したモーニング。いつもは漫画喫茶で読んでいたが、ゲン担ぎも兼ねて購入。面接前に読もうとしたが、緊張で話が頭に入ってこなかった。
夏の甲子園。晴れた日の美しさには息をのむこと間違いなし。面接でスコアラーのアルバイトについて根掘り葉掘り聞かれ、みんな野球が好きなんだなと安心。

この記事が参加している募集

就活体験記