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上海アートシーン 2021年3月(1)

ドゥオルン美術館(多伦当代美术馆、Shanghai Duolun Museum of Modern Art)は毎回きちんと美術史的に重要な展覧会を開催していて目が離せません。いま開催されているのは中国現代芸術年鑑上海展。不勉強で知らなかったのですが、「中国現代芸術年鑑」が2005年から発行されているんですね。

今年この年鑑に収録された作家は107人ということで、一覧が掲示されていました。去年パラトリの美術展「そのうち届くラブレター」に参加してもらったリ・ビンユアンや、スタジオビジットしたリン・ク、他にも上海で見てきた作家たちの名前があって、私が触れてきたアートシーンとの確かな呼応を感じました。

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本はこんな感じ。主編は北京大学の朱青生教授。

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めくってみると、毎日の出来事が記載され、また重要な展覧会や作家についての記述があります。すごい記録です。なにか執念のようなものを感じます。

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中国では貴重なオルタナティブスペースについても記録しているとのこと。今回の展示では、去年M50から上海郊外に引っ越した要空間(Yell Space)について紹介するコーナーが設けられていました。大型美術館だけでは、大御所の紹介に終始してしまいます。だからオルタナティブスペースは本当に貴重。こういう地道な活動が、若い世代の作家、ひいては現代美術シーン全体にとってどんなに大切なことか。でも中国では続けていくことが難しいと聞いています。それを意識しての記録なのだなと思います。

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展示では、年鑑に収録された作家たちの紹介パネルとともに、9つの作品が展示されていました。

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Lu Lei  陆垒 "W&H Were Hit by Lightning"
WとHは王様と女王を意味する漢字の頭文字。雷に打たれた王と女王。そんな神話がありそう、物語を想像してしまいます。

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Ji Wenyu & Zhu Weibing 计文于&朱卫兵 "Rescue Station"
日用品に包帯が巻かれている。血を思わせる赤いシミが…。しかしこの赤いシミは赤い糸で刺繍したもの。古いものから新しいものが生まれる、痛みと命を表現しています。

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Yao Hai 姚海 "Open up wasteland"
ビデオ・インスタレーション。映像の中で作家とコラボレーターが、素材の性質を一つずつ確かめるように、折ったり、回したり、振ったりといった動作をする。

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この記録を頭から読んでみたい気持ちにかられるも、膨大な量、そしてフル中国語と、いまの私にはまったく歯が立たないだろうなぁとため息。でも重要なのは、この記録がこの世に存在するということ。どんなにアートシーンが世情に翻弄されようと、起こったことはこの記録に残り、いざとなればたどることができる。それ自体が現代美術の存在を保証し、私たちを安心させるのだな・・・と思います。

(タオバオで買えるようなので、近々一冊入手してみます!)

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