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公認会計士試験戦記【中編】

はじめに

 今回のnoteでは、私の公認会計士受験生時代を振り返りながら、合格するまでの道のりをお話しする中編として、公認会計士を目指してから二度目の短答式試験までのお話しができればと考えています。

 なお、前編をまだ読んでない方は先に前編から読んでいただくことをおすすめします。

 それでは早速いきましょう。

千里の道も一歩から。

公認会計士試験の勉強スタート

非常識合格法との出会い

 TACや大原の予備校代が高いと感じていたそんなある日、たまたま一冊の本と出会います。それは、公認会計士試験 非常識合格法 新試験対応 最新版という本です。この本は、クレアールという予備校の講師が公認会計士試験の攻略法を書いていて、その中で非常識合格法というアプローチを提唱している本です。
 当時この本を読んだ感想は、とても理にかなっていてこれなら私も合格できるかもしれないという感じでした。
 ただ、クレアールという予備校は聞いたことがなかったのでまずは調べてみようと思い、ネットなどでいろいろな情報を集めました。
 そして調べていくと、毎年一定数の合格者実績があるということが分かったとともに、学費が大手の半額以下の300,000円で済むということも判明し、即決でクレアールに入ることに決めました。

 クレアールに入学したのは2017年4月、大学3年生になるのと同じタイミングです。そのため大学の授業と予備校の講義との両立は結構大変だったのですが、通信講座を申し込んだので倍速講義などを利用しながら日々勉強に励みました。

 この頃から、周囲に公認会計士を目指していると話す機会が多々でてきます。ただ、思ったよりも否定的な意見をもらうことが多く悔しかったのを覚えています。確かに、これまで勉強をしてこなかったため、無理と思われても仕方ないとは思いましたが、それでも何かに挑戦することを否定されるというのは良い気持ちはしませんでした。

 そんな意見ももらいながらも、少しずつ前には進んでいて、早速クレアールでの講義も始まりました。
 クレアールはカリキュラムが特殊で、公認会計士講座でもまずは日商簿記検定1級の合格を目指します。そのため、2017年6月に開催される簿記1級の試験に向けてまずは勉強がスタートしました。
 もともと日商簿記1級の勉強はしていたのですが、せっかくだから一からやり直そうと思い、講義などもしっかりと受講しました。

 簿記1級の過去問や模試などを解きながらなかなかいいペースで勉強は進んでいたと思います。

 そして迎えた簿記1級の当日、問題は結構難しかったのですが、手応え的には合格ラインである70点±5点くらいかなという感じでした(±5点というのは、当時の1級では配点方法がどうなっているかわからなかったためです)。

 ちなみに日商簿記1級と同じ頃に、全経簿記上級の試験もありました。こちらもクレアールから受験するようにすすめられたため受験することにします。
 全経簿記上級は日商簿記1級よりは手応えを感じたため、受かったかもと思いました。

 このように簿記検定を続けて受験したのですが、これらが終わると同時に、公認会計士試験の短答科目である企業法と監査論がスタートします。
 クレアールでは日商簿記1級までで公認会計士試験の試験科目である財務会計論と管理会計論の計算はほとんどカバーしているという扱いのため、ここから先は公認会計士試験特有の論点だけを勉強していくというようなカリキュラムです。

 これまでずっと簿記の勉強だけしかしてこなかったので、企業法や監査論のような科目の勉強はとても新鮮だったのを覚えています。

 そんな形でようやく短答式試験の全ての科目の勉強がスタートしました。

簿記全敗,二度目の撤退

 そんなこんなで短答式試験の4科目の講義が始まり、本格的に公認会計士試験の勉強をスタートさせていました。
 なんとなく簿記に興味を持ちはじめてから、とうとう公認会計士の勉強を始めたということで、最初はモチベーションも高く、寝る間も惜しんで勉強するという本来受験生がやってはならない勉強法をしていました。当時はやる気がありもっと先へ進みたいという気持ちからハイペースになりすぎてたのかもしれません。

 短答の勉強をスタートさせて2ヶ月弱が経った8月上旬ごろに6月に受けた日商簿記検定1級の結果が出ました。結果は不合格。正直今回は一回目だから仕方ないとは思いつつも結構落ち込みました。
 これまで結構な時間を簿記1級に使ってきたため、これぐらいやってもダメなのかというのが当時の感想でした。
 そして、短答式の勉強もスタートして2ヶ月ぐらい経つと各科目で応用的な内容にも触れていきます。そこでも、思うように実力の向上を実感できずにまたもや一時撤退という形で勉強から離れることになりました。

 撤退期間中はちょうど夏休みだったので、関西に旅行に行ったり、竹富島や西表島に遊びに行ったりしてこれまでの勉強のストレスを発散させるかのようにエンジョイしていました。
 正直、今思うとこのような体験は貴重な財産になっていてこれはこれで良かったと思っています。
 ただ、受験を一旦離れると戻るのは本当に辛く、戻ったときの「あのとき継続していれば」という気持ちはこの後合格するまで何度も思いました。

 このように受験勉強を一時撤退してから、夏休みは遊んでばかりだったのですが、9月ごろだったと思います。全経簿記上級の合格発表があり、ここでも不合格となりました。この不合格は勉強から離れていたということもあり、まあいいかという感じでそこまで関心はありませんでした。

二度目の復活

 全経簿記上級の不合格通知をもらって少したった頃、銀行のインターンシップに参加します。この段階で就職先などは全く考えていなかったのですが、大学で所属していたゼミの教授から、「うちのゼミから一人出さないといけないから行ってくれない?」と言われて行くことにしました。

 そのときは公認会計士試験の勉強を離れていたこともあったため、インターンシップで顔覚えてもらって何かあったとき就職できればラッキーぐらいな気持ちでインターンシップに望んでいました。
 インターンシップ先では、銀行の方と一緒に取引先に訪問してみたり、金庫の中に入れてもらったり、一億円の札束を見せてもらったりという経験をさせてもらいます。しかし、銀行員になりたいという強い意志は芽生えませんでした。
 ただ、銀行員の方が取引先と決算書を見ながらやりとりされているのをみて、こういう場面でも会計は役立つんだと思ったのは今でも覚えています。
 そのため、もし公認会計士試験を諦めたとしても会計だけはちゃんと勉強しておこうと考えました。

 そして無事インターンシップを終えた頃、今の彼女と出会い転機が訪れます。

 当時はお互い資格試験合格を目指していました。
 しかし、私は、公認会計士試験の勉強から離れている最中で、諦めるという選択肢もあるといった感じでした。
 ただ彼女には「公認会計士になる」などと言って少し見栄を張っているような状況だったのです。

 ところが、たとえ見栄を張って思ってもないようなことを言ったとしても、言ったことをやっていない自分にどうしても気持ち悪さが残り、また公認会計士試験の勉強を再開するという形になりました。そして見事に受験生として復活します。本格的に復活したのは2017年10月中頃だったと思います。

一回目の短答式試験

 10月に復活したのですが、もともとクレアールのカリキュラムが2017年12月の短答式試験合格を目指すコースでしたのでだいぶ遅れてしまいます。
 8月に勉強を離れてから10月に戻るまでの2ヶ月間のブランクがあるという状況でした。
 まずはじめに取り掛かったのは計算科目の思い出し作業からです。ひたすら問題集を解きまくるのですが、以前なら数分で終わっていた問題が、20分かかるというようなことがザラにありました。
 ただでさえ勉強でストレスがかかるのに解けないから余計にストレスがかかり、枕に向かって思いっきり叫んでストレス解消をしたりしていました。

 勉強を再開して一ヶ月経った頃の11月、日商簿記1級の試験がありました。こちらも前回合格できなかった人は受験するようにクレアールからすすめられたため受験することにします。
 ブランクがあったので6月の試験時よりも実力は落ちていると思っていて、期待は薄かったのですが、全く歯が立たないこともないだろうと考えていました。
 しかし、当日の問題は普通に難しく、試験後の手応えは「ちょっと厳しいだろうな」というような感じでした。

 その日商簿記1級から一カ月ほど経った12月、今度はいよいよ公認会計士試験の短答式試験がありました。

 試験制度のことをご存知ない方のために、公認会計士試験の流れだけ簡単に説明します。
 公認会計士試験は、短答式試験と論文式試験があります。まず最初に全員が短答式試験を受験し、その後に短答合格者が論文式試験を受けるというような流れです。
 受験科目は、短答式試験が、財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目。論文式試験は短答式試験の科目に租税法と選択科目が追加され、計6科目です。
 ちなみに、選択科目は、経営学、経済学、統計学、民法の中から一つを選択します。
 そして、論文式試験まで合格してはじめて公認会計士試験合格という形になります。

 このように、公認会計士試験は試験科目も多く、割と難易度の高い試験なのですが、私の試験当日の状態は、予備校の模試も解いていない、過去問もちゃんと解いたことないというような状況で、いわゆる記念受験のような形でした。

 会場は明治大学で行われたのですが、人の数に圧倒されて、会場にいる人全員を「すごいなー」と感じていて、試験を受ける人達のことを他人事のようにみていました。

 当日の問題は、簡単なわけがなく、普通に完敗。ただ、このような形で挑んだ試験にもかかわらず収穫もありました。試験当日のスケジュール感、トイレやコンビニなどの混み具合など、次の試験に役立ちそうな情報を得ることができました。それと同時に、こんな私にも解ける問題がいくつかあり、これまでやってきたことは完全には間違ってなかったと感じることができました。
 さらに、会場に足を運んだことで、この人達と競争をしないといけないのかという気持ちにもなり、通信で勉強をしていた私にとってはとても刺激的な一日でした。

勉強法確立,充実した春休み

 短答式試験を受けてからは、次は絶対受かろうという気持ちになり、より一層勉強に励む日々が続きます。11月に受けた日商簿記1級の二回目の不合格通知ももらっていたのですがそんなものは気にしないぐらい勉強に励みました。

 そして、大学3年生から4年生に上がる春休みに自分なりの勉強方法が確立しました。それはアウトプット中心勉強法と、ストップウォッチを活用した勉強法です。
 これまでの私の勉強法は、テキストベースのインプット中心の勉強だったのですが、どうしても効率が悪いと考え、アウトプット中心に変えたところ成績が伸び始めました。
 次にストップウォッチ勉強法では、成績が伸び悩んでいる原因は、自分が勉強していると認識している時間と、実際に勉強している時間にギャップがあるのではないかと考え、実際に集中しているときだけストップウォッチで測って自分が集中している時間を見える化しようと試みました。実際に測ってみると、自分は6時間勉強したと思っていてもタイマーでは3時間となっていて、実際に机に座っている時間と勉強している時間に大きな差がありました。そのため、この差をいかに縮められるかを心掛け、Twitterを消したり、YouTubeを消したりと色々と試行錯誤を行いました。

 自分なりの勉強法を確立すると日々の勉強が楽しくなり、一日最低でも8時間、調子のいい時は12時間と一気に勉強量が増えます。
 勉強量が増えると成績も良くなり、そうすると次ももっといい成績を取ろうと勉強量が増えるといった形で、とても充実した日々を過ごすことができました。

 今でも、人生の中で一番充実していたときは、この大学3年から4年に上がる春休みの時期かもしれないと思うことがあります。そのくらい楽しく勉強ができていて今にも活きる本当に良い財産になったなと思います。

 そして春休みが終わり、4年生に上がった2018年5月に二度目の短答式試験を受験しました。

 ちなみに公認会計士試験の短答式試験は、5月と12月の年二回あり、どちらかに受かれば8月の論文式試験に進めます。

 二度目の短答式試験のときは、答練で合格点を取ることも珍しくなかったため、いけるかもしれないと思っていました。

 そして当日、前回同様に明治大学で受験でした。前回は自宅から1時間半かけて試験会場に行ったのですが、今回は本気で取りに行った試験だったので近くのホテルに泊まってそこから試験会場へ向かいます。

 そんな試験では、終わった時の感覚が、今の自分の実力は出せたというような感じでした。
 それと同時に、自分が気づかない間に手応えを感じられるほどに実力がついていて達成感もありました。

大学在学中の合格絶望からの半独学

 二度目の短答式試験が終わってからは、8月の論文式試験に向けて論文式試験の勉強をスタートさせることにします。論文では新たに租税法と経営学の勉強が加わったのですが、これまで同じ科目を何度も回していたので久しぶりの新しい科目は新鮮でした。

 このときは、税務業務にも興味があり、公認会計士試験に合格した後は税理士としても活躍していきたいと考えていたため、特に租税法は力を入れて勉強しました。

 このような形で、論文の勉強も進めていたところ、待ちに待った短答の合否が発表されます。

 結果は、不合格。しかもこのときの合格ラインが正答率64%以上だったのですが、私は63%で、後1%というところで不合格になってしまいました。
 そして、今回不合格になったことで、大学現役中に公認会計士試験に合格することはできなくなったのでした。
 正直、相当悔しかったのですが、公認会計士試験で十分戦えていることは自信になりました。

 ただ、周りが就職を決めていく中、不合格となったことで私は卒業後の進路に迷うことになってしまいます。
 卒業後の進路の選択肢は二つあり、受験浪人をすることと、大学院に進学することで迷っていました。この時点で就職という選択肢はなく、自分の中では、公認会計士として働く未来しかありませんでした。

 しかし、短答式試験も受かっていなかった身分だったので、とりあえず悩んでも仕方ないから勉強するかと考え、またいつもの日常に戻ることにしました。

 そしてこの段階で、予備校の講義が全て修了します。私は一発合格コースを申し込んでいたのでもうクレアールにも所属していないことになり、半独学で次の短答式試験に挑むことになりました。
 もう一度予備校に入るということも検討しましたが、大学4年に上がるタイミングで試験に専念したいということでアルバイトを辞めていました。しかし、地方から出てきた私にとってはアルバイトを辞めると生活が成り立たなくなるため、両親にお願いして月40,000円の仕送りをもらっているという状況でした。このような状況だったのでこれ以上の負担はお願いできないと思い、予備校には入らない決断をしました。

 その上で、試験勉強に使う教材もアレンジを加えます。
 アウトプットに使う教材を過去問中心にシフト。さらに財務会計論、管理会計論、監査論の理論テキストを、クレアールのテキストから会計専門職大学院でも使われている市販のスタンダードテキストという基本書に切り替えました。企業法だけはスタンダードテキスト集がなかったので、リーガルクエスト会社法に切り替えました。 

 一般的にはこの選択はよくないことですし、今受験されている方には絶対におすすめしません。
 予備校にはちゃんと入って、予備校の教材を使って勉強するという王道の勉強法をおすすめします。
 でも私自身としては、様々な諸事情がある中でこの切り替えがなければ合格してなかったと思っていて、この選択は正解だったと思っています。

 しかも受験生時代に基本書を読み込んでいたこともあり、今現在、実務に出たときに専門書を読むことに対して何の苦痛も感じないといった形で思わぬ収穫もありました。

後編へ

 以上が予備校に入ってから二度目の短答試験を受けるまでのお話しでした。
 この時期は勉強の土台を作ることができて本当に貴重な期間でした。

 さて、様々な挫折を繰り返しながらも一歩一歩成長できた受験生期間ですが、次の後編がいよいよ最後になります。
 後編では公認会計士試験に合格するまでのお話しができればと思います。
 是非後編も読んでいただけると嬉しいです。

 中編を最後までお読みいただきありがとうございました。

【後編はこちら】

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