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お喋り療法士

人生の意味の心理学【下】

 アドラー心理学の下巻であり、教育や愛、結婚を中心に書いてありました。特徴的だったのは、アドラーが実際に個人で面談して対話してきた経験をベースに描かれていた事です。また、若いうちに協力を学ぶことの重要性について再三訴えていました。そう言ったこともあり、症例は未成年から成人した男女共に様々な年齢層が出てきましたが、10代から20代が出てくることが多かったです。

協力はどこで学ぶ?

 先ほども言った通りアドラーは協力を学ぶことを重要視していました。それも若いうちに。若いうちに協力を学ぶ機関の代表格は学校ですよね。20代までの大半を学校で過ごすことが多いので、学校以外の協力を学べる場所というのはあまり浮かばないです。
 アドラーは教育の過程で、他者にあまり関心がなく、協力を学ばなかった子は後に犯罪者や自殺者になることが多いと言っていました。逆の言い方をすると、犯罪者は皆協力について学んでこなかったのだと。例えるなら地理を学んでいない人に地理のテストを課すのと同じだと。犯罪者になりうる気質を持った子ども、俗にいう犯罪者予備軍とでも言いましょうか、そういう状況の方々を指して言っていました。
 逆に人間の能力が発達するのは、仲間の人間や他者に関心を持つことだと書いていました。その証拠に読むことや書くこと、話すことなど人類が長い時間をかけて形にしてきたものは、全て他者との結びつきを前提としていると言っていました。ここに関してはその通りだと思いました。

他者との結びつき

 他者との結びつきによって成長した経験。皆さんはありますか。学校生活を除いた中でも多々あるかと思います。自分の場合は病院勤務時代が真っ先に浮かびました。言葉遣いはもちろん相手が何を求めているか。次どんな行動が予想されるか。自分の言葉掛けによって相手がどんな行動に出るか。脳卒中や認知症により暴言、暴力、セクハラ、リハビリ拒否など、対応が難しい方も多かったため接遇に関してはかなり配慮しなければなりませんでした。また、基本的に運動したくない人やリハビリに対して後ろ向きな人も、気持ちを上手いことのせて、リハビリをしてもらう必要もあり、そうした環境で理学療法士はかなりコミュニケーションや接遇に関して、自然と鍛えていかれると思います。
 自分は同行援護という、全盲の方や視覚の弱い方の移動を支援する仕事もしています。理学療法士はコミュ力は高いのか?その例として、最近初めて支援した利用者さんとウォーキングする中でこんなことを言われました。
(ここから対話形式が続きます。Aが私で、Bが利用者さんです。)

B:デイサービスに週2回いくのよね。
A:そうなんですね。そこに理学療法士とかいますよね?
B:いるいる!最初おしゃべりの人だと思ってたの!
A:お喋りの人?笑
B:あんまりずっと喋っているから、喋るだけで働いてないんじゃないかと思ってたの。
A:そうなんですね笑(目の見えない中、あんまり喋り声だけ聞こえてたらそう思うのも無理ないよな、、笑)
B:そのお喋りの人にリハビリしてもらううちに、手を動かしながら上手に会話をされていたことに気づいたの!それまでは口ばっかり動かして、ずっとサボっているのかと思ってたわ笑。理学療法士さんって話題を振るタイミングとか、こっちの意見に合わせた相槌が上手いよね!びっくりしたわ。


なんでお喋りさんなの?

 先ほどの方は理学療法士さんは本当に会話が上手な人ばっかりと言っており、会話をするのが仕事だと思っていたくらいだと言っていました。また、先ほどの例以外にも、理学療法士のコミュニケーションスキルを褒められた経験はあります。理由を考えると、個人的には理学療法士はコミュニケーションスキルを磨かざるを得ない環境や状況が多いからだと思います。
 理学療法士には心身の機能を回復させる、回復してもらうという目的があります。その際に信頼関係がないと本人からその日の体調や訴えなど治療に必要な情報が引き出せないので、必死に会話します。全く会話せずに1回目の治療を終える人はいないと思いますし、もしもほとんど会話せずに治療を終わる人がいれば、そこは治療が流れ作業になってる可能性があるため、あんまり通わない方がいいかもしれません笑。
 相手の体を良くしたい!訴えを解決したい!そういう気持ちが強ければ強いほど自然と質問したり、話題を振ったりしてその人の生活や、会話の中から問題解決のヒントを探ろうとしてます。整骨院や治療院に通われている方はそこを店舗選びの一つの基準にしてみてもいいですね。
 
理学療法士の利点

 ライフシフトという本で、これからAIに仕事を奪われていくため、より対人能力やコミュニケーションスキルが重要視される時代になると書いていました。そういう意味では理学療法士含めて、医療職は対人、コミュニケーションスキルは嫌でも身についていくといえるので、10年20年先も必要なスキルを伸ばしたいと言った目線で働くのはありかも知れません。

終わりに

 色々と話が脱線しましたが、本の内容は、教育課程では色んな人に会って沢山会話するのが成長につながるよといった内容でした。、、、いやいやそんな一言で片付くほど、内容の薄い本ではなかったです笑。アドラー心理学上下巻共に、有名な嫌われる勇気シリーズよりも、深くアドラーの経験に基づく考えを学べると思います(対話形式でなくなった分、難解な表現も多いですが、、、)。個人的にはアドラーが出会ってカウンセリングしてきた、自殺願望を持つ人や神経症者、うつ病の人の部分がアドラーの接し方や解釈が新鮮で面白かったです。機会があればぜひ読んでみてください。

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